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今日は、本日の日経朝刊11面の特集記事「企業戦略突破口を探る」からです。
【記事要約】
・4月に介護報酬が実質減額となった介護業界。高齢化で市場は拡大するが、国の判断によって売上高や利益率が左右される「制度変更リスク」がつきまとう。
・最大手のニチイ学館は家事代行などの介護保険外サービスや語学教育事業に活路を見出し、成長と経営安定の両立を狙う。
・ニチイは介護保険外の「家事代行サービス」に赴くケースを増やしている。普段から家を訪れるなじみの職員なら安心、利用者やその家族に共通するのはこうした思いだ。介護事業者は3年に1度の報酬改定に振り回される。4月の介護報酬改定は1.2%の増額だったが、介護職員の処遇改善交付金が打ち切られたため、実質は0.8%の減額。
・制度変更リスクをいかに緩和するかが介護各社共通の課題とされるなか、ニチイの出した解は、価格を自ら決められる介護保険外サービスの充実と強化だった。
・こうしたサービスは主力の介護報酬を使ったサービスと人材やインフラを共有できるのが強み。本業の介護保険事業を充実させながら、その周辺サービスのニーズを取り込んでいく。
・13年3月期の介護保険外サービスの売上高見通しは125億円。まだ介護保険外サービスの介護事業の1割にも満たないが将来は25%に引き上げる。中小規模の介護事業者は本業で手いっぱいが現状、厚みのある介護人材や拠点、顧客という最大手の経営資産を有効活用し、業界での首位固めを急ぐ。
・家事代行の強化とともに重点を置くのが教育事業。昨年、英会話教室のGABAを約100億円で買収したのに続き、今年4月から自社ブランドの英会話教室「COCO」も始めた。COCO塾では看護師など医療従事者向けの英会話講座も開設。
・同社は保育事業運営も手掛けており、語学教育も含めて、人の一生の中で必要なサービスを提供する企業への変貌を目指す。
介護ビジネスで最大手のニチイ学館ですが、介護で培ったノウハウをもとに、周辺ビジネスの展開へも力を入れているようです。
ちなみにワタミの介護事業のの直近24年3月期の売上高が284億円のところ、ニチイ学館の介護事業(ヘルスケア事業)の売上高は1,384億円ですので業界内ではダントツな首位を走ります。
今日は、ニチイ学館の業績を簡単に見てみます。
当社財務DBと業績推移をグラフ化すると以下のとおりです。
■ ニチイ学館_通期.pdf (当社財務データベースより)
2010年3月期は、オームヘルパー講座や医療事務講座などの教育事業の受講生数の増加や、ヘルスケア事業で在宅系・居住系介護サービスともに利用者が堅調に推移し、今まで築き上げた拠点数の稼働率が上昇、大幅に収益が拡大しました。
その後も高齢者人口増加を背景に順調に業績は推移しています。
さらに、収益源泉をみるために、セグメント別情報を見てみます。
<セグメント内容>
医療関連事業…主として医療機関・調剤薬局における医事業務の受託、医療用器材の販売・消毒・滅菌業務、医事コンサルティング等
ヘルスケア事業…介護保険制度下での在宅系介護サービス(居宅介護支援サービス・訪問介護サービス・訪問入浴サービス・通所介護サービス)、居住系介護サービス(特定施設入居生活介護サービス、認知症対応型生活介護サービス、高齢者専用賃貸住宅の運営)、福祉用具の販売・レンタル及び配食サービス等を提供
教育事業… 医療事務技能者ならびにホームヘルパーの教養を中心とした講座や英会話学校
医療事務受託を中心とする医療関連事業は派手さはありませんが安定して推移しています。一方、介護ビジネスであるヘルスケア事業は、2009年3月期にはセグメント赤字でしたが、その後一気に成長を遂げ、直近期平成23年3月期にさらに成長、平成24年3月期も維持できる見込みです。
教育事業は、医療事務やホームヘルパー資格などが中心でしたが、23年9月のマンツーマン英会話の展開するGABAを買収、教育事業の多角化も目指しています。
ちなみに、今回の記事で取り上げられていた介護保険外サービスですが、ヘルスケア事業の内訳を見てみると
■ 介護保険内サービス
売上高 24年3月期(実績):127,340百万円(92%) ⇒ 25年3月期(予想):130,700百万円
営業利益 24年3月期(実績):8,591百万円(85%) ⇒ 25年3月期(予想):8,600百万円
■ 介護保険外サービス
売上高 24年3月期(実績):11,153百万円(8%) ⇒ 25年3月期(予想):12,500百万円
営業利益 24年3月期(実績):1,550百万円(15%) ⇒ 25年3月期(予想):1,400百万円
※()はヘルスケア事業全体に占める割合
まだまだヘルスケア事業の1割程度であるということがわかります。今後はこの水準を25%まで目指すとのことです。
ニチイのIR情報を見ると今後は下記事業の拡大を目指していくようです。
・障がい福祉サービスや家事代行サービス等の介護保険制度外サービスの拡充
・中国におけるサービス展開
・長期的な受講ニーズが見込まれる語学事業の拡大
・高齢社会の本格化に合わせた高齢者向け講座の拡充
・保育所など保育事業
既存の業績が好調のなかで、次なる成長戦略へシフトするニチイ学館は実に頼もしいですね。
特に本日の日経夕刊でも取り上げられていましたが、1979年からの一人っ子政策などにより急激に高齢化が進むことが予測される中国へのサービス展開は、注目したいところです。
経済成長を果たし富裕層が1億人以上ともいわれる中国で、高齢者サービスの先進国である日本企業がどれだけ展開できるのか、、、介護ビジネスがグローバルビジネスになる時代も近いかもしれせん。
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