株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

2012/08/16 スマホ苦戦組、大型リストラ ノキア、巻き返しは不透明

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、本日の日経朝刊7面のスマートフォンの記事からです。

 

【記事要約】


フィンランドのノキアなどスマートフォンの販売で苦戦する世界の通信機器大手が大規模な人員削減などリストラ策を相次いで打ち出している。経営の効率化と新製品投入で巻き返したい考え。

・ただ、韓国のサムスン電子と米アップルの「2強」が改装を続ける一方、中国勢も台頭の兆しをみせており先行きは不透明だ。

・4月~6月期のスマホの世界販売台数は前年同期比43%増の1億5,368万台になった。従来型の携帯電話は減少基調が続き、携帯全体に占めるスマホの割合は前年同期の25%から37%に上昇した。

・スマホ普及の追い風を十分に受けているのはサムスンとアップルの2強。

・一方、従来型携帯で長年世界1位だったノキアなど3位以下のメーカーは軒並み苦戦している。各社は立て直しに向けて大規模な人員削減など事業見直しに動いている。

・ノキアは6月、2013年末までに全社員の約1割に当たる1万人程度を削減する方針。米グーグル傘下の米モトローラ・モビリティーも社員の約2割に当たる4000人の削減や、拠点の統廃合、製品拠点の削減などを進める。

・リストラと並行し、ノキアは米マイクロソフトのOSを搭載したスマホの販売を増やして経営を立て直す方針


 

ここ数年で、モバイル端末市場において、従来型携帯電話からスマートフォンへシフトするという地殻変動の起きています。

世界の携帯電話シェアで長年ナンバー1を維持してきたノキアですら、この地殻変動への対応が少し遅れただけで、転落へと引きずり込まれようとしていますね。エレクトロニクス産業のスピードは目を見張るものがあります。

 

そんなノキアですが、2011年2月に、Microsoftとの戦略的提携を発表し、スマートフォンの領域では、Windows Phoneの開発に注力し、巻き返しをはかろうとしています。

従来型携帯の王者ノキアと、スマートフォンの2強であるアップルとサムスン電子を比較してみます。

 

ノキア(フィンランド)

アップル(米)

サムスン電子(韓)

直近期(通期) 2011.12 2011.9 2011.12
適用会計基準 IFRS SEC K-IFRS

Revenue/売上高

38,659 million €

3,749,923 百万円

108,249 million $

8,551,671 百万円

165,001,771 million Won

11,550,123 百万円

Operating income/営業利益

△1,073 million €

104,081 百万円

33,790 million $

2,669,410 百万円

16,249,717 million Won

1,137,480 百万円

売上高営業利益率

31.21%

9.84%

Net income/当期利益 ※

△1,164 million €

△112,908 百万円

25,922 million $

2,047,838 百万円

13,359,192 million Won

935,143 百万円

Comprehensive income/包括利益 ※

△1,083 million €

(△105,051 百万円

26,411 million $

(2,086,469 百万円

12,801,542 million Won

896,107 百万円

Total assets/資産総額

36,205 million €

(3,511,885 百万円)

116,371 million $

(9,193,309 百万円)

155,631,254 million Won

(10,894,187 百万円)

Stockholders' equity/株主資本 ※

11,873 million €

( 1,151,681 百万円)

76,615 million $

( 6,052,585 百万円)

97,599,765 million Won

( 6,831,983 百万円)

Equity Ratio/自己資本比率 ※

38.43%

65.83%

65.44%

ROE/株主資本利益率 ※

33.83%

13.68%

Cash flows from operating activities

/営業活動によるキャッシュフロー

1,137 million €

(110,289 百万円)

37,529 million $

(2,964,791 百万円)

22,917,901 million Won

(1,604,253 百万円)

Cash flows from investing activities

/投資活動によるキャッシュフロー

1,499 million €

145,403 百万円

△40,419 million $

△3,193,101 百万円

△21,112,564 million Won

△1,477,879 百万円

Cash flows from financing activities

/財務活動によるキャッシュフロー

△1,099 million €

(△106,603 百万円)

1,444 million $

(114,076 百万円)

3,109,729 million Won

(217,681 百万円)

Cash and cash equivalents

/現金・現金同等物

9,236 million €

(895,892 百万円)

9,815 million $

(775,385 百万円)

14,691,761 million Won

(1,028,423 百万円)

※ 日本円ベースは97円/ユーロ、79円/ドル、0.07円/ウォンで簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。

※ 当期利益、包括利益、株主資本は支配株主帰属分

※ 自己資本比率、株主資本利益率は期末残高ベースで簡便的に算出している。

 

ノキアは、とうとう2011年12月期には営業赤字に転落しています。

投資キャッシュフローもプラスに転換しており、リストラによる立て直しを優先としていることがわかります。

 

サムスン電子は、モバイル端末以外の事業の規模が大きいため、モバイル端末事業の業績についても見たい方はは過去のブログを参考にしてください。

 

2012/07/31 サムスン電子、日本のHEMS市場参入 スマホで家電 遠隔操作

この数年でノキアの業績がどれだか悪化したのかみるため、各種業績推移をグラフ化してみます。

 

<ノキア 売上高・営業損益推移>

 

2007年までは、営業利益率も15%台を確保しており、業績は好調でした。

しかし、2008年頃から業績は悪化しています。この時期は、リーマンショックなど金融危機から端を発した世界同時不況の時期のため、その影響もあるかと思いますが、iPhoneの存在感が増していった時期です。

(iPhoneの販売数の推移はWikipediaを参考にしてください。http://ja.wikipedia.org/wiki/IPhone#.E8.B2.A9.E5.A3.B2.E5.8F.B0.E6.95.B0

 

<iPhoneシリーズが発売された時期>

■ 初代iPhone…2007年6月

■ iPhone 3G…2008年6月 

■ iPhone 3GS…2009年6月 

■ iPhone 4…2010年6月 

■ iPhone 4S…2011年10月

 

iPhoneの販売台数の増加にともない、業績は悪化しており、とうとう2011年12月期には営業赤字に転落しました。

 

以下、セグメント別業績推移とモバイル端末事業であるデバイス事業の業績推移を参考までに載せておきます。

 

セグメントの分類方法が、変更されているため、セグメント情報は過去3期分を、また、デバイス事業は2009年より種類別(携帯かスマートフォンか)情報が開示されているので、2009年より種類別内訳も表示しています。

 

出遅れたスマートフォン市場で巻き返しへ注力するもなかなか成長確保は難しいようです。とくに最近は、勝ち組と負け組の差がより明確になっており、 スマートフォン事業は悪化の一途をたどっています。

 

<ノキア セグメント別業績推移> 

 

<ノキア デバイス事業業績推移> 

 (注)2009年以降はデバイスの種類別情報が取得できるため、内訳も表示している

 

 

最後に、直近業績である2012年12月期の第2Q(累積)のデバイス事業の業績を前年同期比と比較してみます。

 

巻き返しどころか、営業赤字は拡大していますね。特にスマートフォンが不調で、デバイス事業の足かせとなっています。 

Windows Phone次第のところもありますが、2012年12月期は業績赤字が拡大する可能性がありますね。

 

 

従来型携帯電話の時代は、ノキアは使いやすさ、シンプルさを武器に世界を席巻しました。

 

対照的に、カメラ機能、おサイフ機能、デコメ・音楽など多機能化に走った日本の携帯市場は、ガラパゴス化と揶揄されていました。

 

しかし、今のアップルのiPhoneの成功をみると、日本の携帯電話市場の向かっていた方向は間違っていなかったことになります。さらにいうと当時の日本における携帯電話は、世界最先端の独自技術を多く採用し、その性能や機能は世界最高水準であったことは間違いなく、日本の携帯メーカーが、携帯電話のスマート化に一番近かったといえます。足りなかったのは世界への売り込み力や企画力だったのでしょうか。。。

 

最近のノキアやモトローラ―など従来型携帯電話メーカーの大手が苦戦しているニュースをみるとそんなことを思う筆者です。

前へ  次へ

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

お問い合わせ

PAGETOP