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2012/05/28 ルネサスエレクトロニクス、再建の行方は?

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、先週末から報道されているルネサスエレクトロニクスの話題からです。

ヤフーニュースのトップにも掲載されていました、ロイターの記事の要約から見てみましょう。

 

<2012年5月28日 ロイター 配信記事要約>


・赤字体質からの脱却を目指す半導体大手ルネサスエレクトロニクスが全従業員の約3割に相当する1万2000人以上を削減する方針を固めた。不採算の工場売却や拠点の統廃合も検討し、リストラ費用を捻出するため1000億円超の資本増強を計画する。だが、主要取引銀行に提示したこの再建案が計画通りに実現するかは不透明だ。
・まず増資引き受けを要請する日立製作所、三菱電機、NECの主要株主3社の足並みが揃っていない。
・そもそもNEC自身に余裕がない。携帯電話端末事業の不振などで12年3月期は1102億円の最終赤字に陥り、1万人削減など構造改革の真っ只中。主取引銀行の三井住友銀行からは「人を助ける前に自分の出血をどうにかしろと言われそうだ」(同NEC幹部)。
・日立も追加出資には慎重だ。米ゼネラル・エレクトリックや独シーメンスと世界で互角に戦えるよう収益改善に取り組み中。これまで事業の集中と選択を図り、半導体など市況変動の激しい事業から撤退し、社会インフラ事業への強化を進めている。今さらルネサスに追加出資したら、株主に説明がつかない。
・鶴岡工場の売却交渉の行方も安心できない。売却先候補として半導体受託生産(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の名前が浮上しているが、TSMC関係者は26日、ロイターの取材に対して「購入する計画はない」と答えた。

・鶴岡工場は薄型テレビやデジタルカメラ、ゲーム機向けのシステムLSIを手がけている。製品や顧客ごとに仕様が異なり、各社の要望に応えて作るカスタム製品が主流で、多品種少量のため生産効率が悪い。

・リストラ対象となっている携帯電話用半導体子会社ルネサスモバイルも前途多難が予想される。産業革新機構が仕掛け役となって交渉を進めている富士通、パナソニックとのシステムLSI事業の統合でつくる新会社にルネサスモバイルの社員を一部移管する案も検討されているが、富士通、パナソニック、ルネサス3社連合の話が思うように進んでおらず、新会社が生まれるのかどうか不透明だ。
・大規模なリストラを断行し、自動車などを制御する世界首位の半導体マイコンに経営資源を集中することで再建を図りたいルネサス。マイコンは全売上高の約4割を占め、営業利益率でも10%以上を維持。特に自動車向けは約4割のシェアを握る。だが、そのマイコンでも陰りが出始めており、シェアを少しずつ失っていく可能性がある。
・昨年は東日本大震災で被災した主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)が生産停止に追い込まれ、自動車産業のサプライチェーン(部品供給網)寸断を招き、ルネサスが自動車産業の要であることを浮き彫りにした。


<記事要約はここまで>

 

先週末から報道で急浮上してきたルネサスエレクトロニクスの再編計画。

ルネサスは、26日と28日に以下のように公表しています。

 

2012年5月26日公表『当社に関する一部報道について』

2012年5月28日公表『ルネサス エレクトロニクスとTSMCがマイコンのエコシステムの構築を共同で推進』

【リソース】ルネサスのホームページより

 

報道されているような抜本的な報道について、ルネサスから正当な公表はされていません(執筆時点)。

今日は、ルネサスの最近の業績について振り返って確認してみようと思います。

◆ルネサスの沿革

報道されているように、ルネサスの母体はNECのDRAM事業を除く半導体事業を分社化したNECエレクトロニクスと、日立製作所・三菱電機の同事業の分社化されていたルネサステクノロジが平成22年4月が合併して作られた半導体事業です。

 

<ルネサスエレクトロニクスの沿革>

年 月 事     項
平成14年11月 日本電気㈱の汎用DRAMを除く半導体事業を会社分割により分社化し、日本電気㈱の100%子会社として神奈川県川崎市にNECエレクトロニクス㈱を設立。
平成15年7月 東京証券取引所市場第一部に株式を上場。
平成22年4月 ㈱ルネサステクノロジと合併し、ルネサスエレクトロニクス㈱に商号変更。
平成22年11月 ノキア・コーポレーションよりワイヤレスモデム事業を譲受。
平成22年12月 モバイルマルチメディア事業(ノキア・コーポレーションから譲り受けたワイヤレスモデム事業を含む。)を吸収分割によりルネサスモバイル㈱に承継。

【リソース】平成23年3月期有価証券報告書より。

 

平成23年3月期の有価証券報告書によれば、大株主の状況において、日立製作所30.62%、三菱電機25.05%、NEC35.46%(退職給付口を含む)となっています。

沿革や株主保有比率をみるとNECが中核株主であることがわかりますね。

記事にもあるように、日立などがNECがどうでるか”様子見”になるのはこういうところですね。

 

◆ルネサスの業績推移

さて、ルネサスのここ最近の業績推移は以下のとおりです。

 

 

 

 

売上高は、平成23年3月期第1Qで、NECエレクとルネサステクノロジーとの合併により大幅に増加しているものの、徐々に売上規模が下がってきているのがわかります。

利益ベースでは、最近では営業利益ベースで赤字が続いており、最終利益ではほとんどの期で赤字計上を続けています。

 

CFでみると、営業活動CFが弱く、十分な投資CFを稼げていないのがわかります。

平成23年3月期に合併を機に行われた増資1300億円で現金残高は一時高まりましたが、今期第1Qに1000億円の社債で大幅に減少し、ジリジリと現金が減ってきています。

自己資本比率は、26%程度と自己資本が弱く、デットでの資金調達はナカナカ厳しい状況であることがわかります。

◆ルネサスを取り巻く環境

ルネサスを支援する側のNEC、日立、三菱電機はそれほど余裕があるとは言えません。

特にNECは、NEC自体が多額の赤字決算となり、事業構造改革を急ぐ必要があります。

 

2012年4月27日 日本電気公表『2011年度(12年3月期)決算概要』

【リソース】NECホームページより

 

一方、日立・三菱電機は、NECのような業績悪化の状況にはないものの、選択と集中によりインフラ系事業への移行を鮮明にしており、当該事業への投資を集中させています。

ロイターの記事にもあったように、日立や三菱電機がここで支援を行うことは自社株主への説明が難しいと言えるでしょう。

こうした中で、十分なリストラ資金を調達できないと銀行や債券市場からの十分な事業資金を引っ張ってくることは難しくなると考えられます。

 

こうした中で、ある種抜本的な解決方法として、以前から交渉が続いている、富士通・パナソニックのシステムLSI事業との事業統合です。

産業革新機構が旗振り役と言われているようですが、富士通・パナソニックのシステムLSI事業と統合すれば、大手電機会社のシステムLSI事業がすべて1つに統合されたことになりますね。

パナソニックも過去最大と赤字決算を迎えたばかりで、白物家電の世界販売強化を中心とした再生計画を練っており、競争の厳し半導体事業を分離させることはあり得る可能性があるといえます。

富士通は、日本でもいち早くファブレス・ファブライトを推進しており、ルネサスの生産委託先であるTSMCにもすでに生産委託をしています。

 

ただ単純に合体して大きくなればいいというわけではありませんが、日本の工場生産を維持、すなわち雇用維持を考える政策的な意図が強まるのであれば、事業規模の拡大を第一義的に考えられたLSI事業の統一はあり得るかと思います。

 

なお、産業革新機構については、以前のBiBlogで解説していますので、こちらをご覧ください。

 

2012/04/02 東芝・日立・ソニー統合会社 液晶、製品別に最適生産

 

 

日立製作所、NEC、三菱電機のDRAM事業が統一されてできた日本唯一のDRAM生産会社・エルピーダメモリは会社更生法が適用されることになりました。

ルネサスは、自動車等のマイコン事業では世界シェア4割を占める企業です。

トヨタ、ホンダ、日産をはじめとする世界の大手自動会社を顧客として多く抱えることができるルネサスは、マイコン事業では相当の世界的優位性を持っていると言えます。

しかし、東日本大震災でサプライチェーンに大きな問題点を顕在化させてしまった今では、自動車各社もルネサス以外のチャネルを持ち出しており、絶対的優位性が揺らぎ始めています。

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