現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。
今日は、日経朝刊11面の国内旅客機「MRJ」の記事からです。
【記事要約】
・三菱重工業の子会社の三菱航空機は座席数が100席弱の小型旅客機「MRJ」の開発人員を中途採用なで30人~40人増やす。現在、MRJの開発に当たるのは約700人であるが、開発を加速させるため。
・2014年春を予定していた1号機の納入を1年強先の先延ばしして15年夏に延期に変更。このため初飛行を13年秋、初納入を15年夏の予定。部品点検の一部に規定違反が見つかり、確認作業や製造工程の見直しが必要となったため。
・さらに最大受注先の米国では近く整備・補修拠点を開く。
・MRJはすでに米国で100機、日本で25機、香港で5機受注している。MRJのような座席数が100席未満の小型機は今後20年で5000機以上の需要があるとみられ、世界の航空機メーカーが注目する市場。MRJは低燃費で品質が高いことを強みにしたい考え。
・中国やロシアなど海外勢が新規参入するなか、これ以上の遅れは受注への打撃が大きいとみて、早期に量産できる体制をつくる。
(2012年5月25日の日本経済新聞朝刊より)
三菱重工といえば、先日BizBlogでも取り上げたH2Aロケットが見事打ち上げに成功しましたね。
■ 2012/05/17 H2A 海外衛星初搭載 宇宙ビジネスの勝算は
■ H2Aロケット21号機の打ち上げ特設サイト( http://h2a.mhi.co.jp/f21/index.html )
ブログでもロケット市場の価格競争が激化している点に言及しましたが、H2Aロケットのコスト削減の方策の1つとして、今回のMRJとの部品の共通化も検討しているようです。
ちなみに「MRJ」は、Mitsubishi Regional Jetの略で、座席数が100席弱の国内産の小型ジェット機です。
そもそも国産の旅客機がなぜここまで注目されるというと、「航空機は部品や素材や強度や品質水準が高く、国産化すれば自動車の制御装置や医療分野の素材技術などを底上げできる(日経より)」からのようです。
( MRJのHPより http://www.mrj-japan.com/j/index.html )
また、小型旅客機の市場はどうかというと
三菱航空機のHPによると、航空旅客は今後20年間で現在の約3倍になると予測、さらにMRJが参入する70〜90席クラスリージョナルジェット機の市場については、今後20年間に全世界で5,000機以上の新規需要が見込まれている注目市場です。
今後、現在運航されている50席機の多くが座席当りコスト低減のために大型化すると共に、燃料価格の高騰と運賃低下によって現在大手エアラインが運航している低需要路線が子会社等に移管されることにより、100席超機の一部が小型化することが要因となっています。
本日の日経記事によると、小型機市場は4月末時点の納入機数ベースで、ボンバルディア(カナダ)の「CRJ」が66%、エンブラエル(ブラジル)の「Eジェット」が34%とシェアを分けています。これに、日本の他、ロシア、中国が新規参入する構図です。
MRJの競争源泉である燃費性能の高さをいかに保てるかが今後の展開のポイントになってくるように思います。
( MRJのHPより http://www.mrj-japan.com/j/index.html )
最後にH2Aロケットの記事でも見ましたが、もう一度三菱重工業のセグメントの利益状況の推移を見てみます。
H2AロケットやMRJなど今後の展開が楽しみな三菱重工業の航空・宇宙事業ですが、損益状況はというと赤字状態です。
ただし、「2012年事業計画」で下記のとおり、今後MRJなどを将来の基幹事業として確立したい考えです。
(三菱重工業IR情報の「2012事業計画」より抜粋)
そもそもMRJは三菱重工業が経済産業省の支援を得て、2003年に開発に着手したのが今のMRJですから、国を挙げての注目プロジェクトです。
日本の技術の集大成ともいえる国産ロケット「H2A」、国産旅客機「MRJ」。今後世界に通用するのかどうか、その行く末に注目していきたいと思います。
【関連記事】
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。