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2012/04/02 東芝・日立・ソニー統合会社 液晶、製品別に最適生産

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、日曜日の日経朝刊に掲載されていたジャパンディスプレイの記事から。

 

<2012年3月30日 日経朝刊の要約>


・東芝・日立製作所・ソニーの3社と官民ファンドの産業革新機構が共同出資する中小小型液晶パネルの新会社、ジャパンディスプレイが2日、発足する。

・3社は液晶事業統合で同意した昨秋から、生産ラインや間接部門を中心に合計で約1200人を削減した。6400人体制でスタート。

・主要製品別に3社の既存ラインを使い分けるなど生産効率を高める。携帯電話、カーナビ、デジタルカメラなど、パネル解像度や仕様に応じて3社のラインを使いわけ。

・営業、設計・開発機能は本社に集約。

・2015年度に売上高7500億円を目指す。

・ディスプレイリサーチによれば、3社合わせた中小型液晶パネルの生産シェアは21%強で首位。世界2位はシャープ。米アップル向けのパネルを大量受注し、収益基盤を強化している。

・新会社発足で競争がお一段と厳しくなりそうだ。


<記事の要約はここまで>

 

シャープが鴻海(ホンハイ)から出資を受けるニュースは、先週のビズブログでも取り上げましたね。。

 

2012/03/28 シャープ EMS世界最大手 鴻海(ホンハイ)と資本業務提携

 

昨秋、東芝・日立・ソニーの3社のディスプレイ事業が統合された新会社が新年度から発足することになりました。

 

今日は、少し視点を変えて、最近よく耳にする「産業革新機構」について少し深堀りし、そのあと新会社ジャパンディスプレイについて簡単に内容を確認していきたいと思います。

◆産業革新機構の概要

産業革新機構は、「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(いわゆる、産活法)に基づいて、平成21年7月に設立された官民一体のファンドです。

政府が1,020億円、民間19社・個人2人から約100億の出資を受けて設立されました。

 

<スキーム図>

【リソース】産業革新機構HPより

 

上記のとおり、政府出資があるだけでなく、政府保証枠が1兆8000億円あり、これによってファイナンスをしやすいスキームとなっています。

 

◆産業革新機構の出資会社

出資企業は、以下の19社で、各5億円の出資(ただし、日本政策投資銀行のみ10億円)となっています。

  • 旭化成株式会社
  • 大阪瓦斯株式会社
  • シャープ株式会社
  • 株式会社商工組合中央金庫
  • 住友化学株式会社
  • 住友商事株式会社
  • 住友電気工業株式会社
  • 武田薬品工業株式会社
  • 東京電力株式会社
  • 株式会社東芝
  • 日揮株式会社
  • 株式会社日本政策投資銀行
  • パナソニック株式会社
  • 東日本旅客鉄道株式会社
  • 株式会社日立製作所
  • 株式会社みずほコーポレート銀行
  • 株式会社三菱東京UFJ銀行
  • GEジャパン株式会社
  • JX日鉱日石エネルギー株式会社

株主でないと産業革新機構を利用できないという制限は特にありません。

 

◆産業革新機構の投資スタイル

産業革新機構の投資スタイルは、『「事業計画の実現可能性」と「投資収益性」を客観的に判断すると同時に、「社会に与えるインパクト:投資インパクト」の有無や強弱を判断軸に置いて』いるようです。

ここでいう「投資インパクト」は総論・各論でホームページでは展開されていますが、総論を示すと次のとおりのようです。

 

<投資インパクト(総論)>

【リソース】産業革新機構HPより

 

◆産業革新機構の投資案件一覧

産業革新機構の投資案件をみると、ナカナカ面白そうな事業に投資していることがわかります。

 

■産業革新機構の投資案件一覧 http://www.incj.co.jp/investment/deal_list.html

 

最近の電子出版会社への出資案件もいれると22件・3850億円ほどの投資をしています。

ちなみに、つい先週に行われた最新の投資案件である電子出版の企画会社は、日本の現状の電子書籍が流通の3%程度でしかないのを打開するために、新会社では、書籍や出版物の電子化、電子化したデータの保存、電子書店・電子取次に対する配信、プロモーション(書誌情報の作成・配信等)、収益分配等の管理まで、およそ電子出版に必要な機能・サービスを「パブリッジ」として包括的に提供することを予定しているようです。

個人的にはナカナカ面白そうな投資案件だなと思いました。

◆株式会社ジャパンディスプレイの概要

さて、新会社ジャパンディスプレイは、産業革新機構70%、ソニー・東芝・日立がそれぞれ10%ずつ出資する、中小型ディスプレイの製造を行う会社です。

具体的には、ソニー、東芝、日立のディスプレイ事業子会社のソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの子会社株式を新会社へ譲渡し、産業革新機構が2000億円を投じて、3社統合の新会社を運営することになります。

 

中小型ディスプレイ事業は、スマートフォン及びタブレットを中心とする、高精細・高付加価値製品の需要急騰により今後急成長が見込まれています。

一方で、韓国勢を含む世界競争は激化しており、製造業は大規模な再編を余儀なくされています。

ソニーはテレビ部門等で巨額の赤字を出しており、再編はまったなしです。

中小型ディスプレイではなく液晶パネルですが、ソニーはサムスン電子との合弁を解消し、合弁会社S-LCDはサムスンの100%子会社となっています。

 

2011年12月26日 ソニー、サムスン電子、液晶パネル事業について新たな提携関係へ

【リソース】ソニーHPより

 

日立・東芝は、インフラ系事業へのシフトを鮮明にしており、ディスプレイ事業についても売却による選択と集中を目的としています。

 

 

新会社の戦略としては、3社の世界最高水準の技術力と合わせて既存キャパシティの有効活用による収益性の向上を図るものと考えられます。

日経の記事にもあったように、各社のディスプレイ事業を統合することで、既存の製造ラインを有効活用することができ、多品種少量生産ではなく、工場ごとの製造ラインの組み替えにより効率性を高めることができると考えているようです。

 

3社統合がうまくいくかどうかはやってみないとわかりませんが、ディスプレイ事業も基本的には日本の既存工場を利用する方法で行われます。

当然、政府ファンドであることから雇用維持や産業政策に重きが置かれるわけなので、人件費・エネルギー関連費をはじめ構造的に高コストな日本での製造・販売体制でどこまで世界的に勝負できるのかがカギとなってくるでしょう。

くしくも、日立・三菱電機・NECのDRAM事業を分離したエルピーダは会社更生法適用となってしまいました。

 

シャープに出資したホンハイも元気ですし、もちろん、韓国勢も勢いがあります。

 

半導体も含めて、今後の電機会社の改革に注視していきたいですね。

以  上

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