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今日は、日経朝刊1面のシャープのEMS世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)と資本業務提携の記事からです。
【記事要約】
・シャープのEMS世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)と資本業務提携を発表。
・鴻海(ホンハイ)グループがシャープ株の約10%を取得し、事実上の筆頭株主となる。シャープが実施する第三者割当増資を鴻海(ホンハイ)グループ企業4社が引き受ける。
・また、液晶パネルを製造する主力拠点の堺工場を運営するシャープの子会社、シャープディスプレイプロダクト㈱には鴻海(ホンハイ)の創業者である"郭台銘”董事長が約46%を出資する。同工場へのシャープの出資比率は約93%(約7%はソニー)から約46%に低下。同工場の生産量の半数を引き取る。09年10月に稼働した同工場は世界最大のガラス基板を使い、60型以上の超大型液晶パネルを効率よく生産できるのが強み。同工場は昨年末まで80%~90%の稼働率を維持できたが、世界的なテレビ販売の不振と価格下落で足元の稼働率は50%に下落。減損処理を迫られる恐れがあった。
・シャープは増資と子会社株式の売却により約1,300億円を調達、資金を液晶などの新たな技術開発に充てる。
・シャープは今期、主力の液晶事業の不振などで過去最大となる2900億円の最終赤字に転落する見通し。シャープは液晶パネルから薄型テレビまで一貫生産する事業モデルを転換。鴻海(ホンハイ)との国際分業でコスト競争力を強化し、、経営再建を急ぐ。
・一方、鴻海(ホンハイ)グループは中国の巨大工場を生かした低コストを生かした低コストを武器に成長してきたが、人件費上昇を背景に利益率が低下。シャープの技術力を取り込み製品の付加価値を取り込む。
・NECが中国レノボグループとパソコン事業を統合したほか、パナソニックは中国海爾(ハイアール)に傘下の三洋電機の白物家電事業を売却、今後も成長を続けるアジア企業との連携で生き残りを図る流れが加速しそうだ。
(2012年3月28日朝刊 日本経済新聞より)
テレビ事業の不振は、パナソニックやソニーの記事でも扱いましたが、今回は液晶のパイオニア的存在のシャープが不振の液晶事業の再建のための新たな意思決定を行ったという記事でした。
提携内容はシャープのプレスリリースも参考にしてください。
■ 業務提携に伴う第三者割当による新株式の発行及び子会社株式の一部譲渡に関するお知らせ.pdf
また、テレビ事業を扱った過去のビズブロは下記を参照してください。
ちなみに、EMSとは、エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス(電子機器の受託製造サービス)の略で、最終製品を販売する複数の企業から電子機器の設計生産を請け負いするサービスをいいます。
以前紹介した、製造業における”スマイル・カーブ図”(電子産業などの収益構造を表す言葉の1つで,製品の企画開発から製品組み立て・製造、販売、アフターサービスまでの付加価値すなわち利益率の大小を表した図)が物語っているように、利益率が低く多額の設備投資が必要な組立て・製造はEMS企業に委託するのが、世界のエレクトロニクス産業の主流となっています。ファブレス経営、ファブライト経営といわれたりもします。
<スマイル・カーブ図>
(出所:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060315/114915/ )
一方、 日本の電子産業は、IDM(Integrated Device Manufacturer、すなわち設計から生産までの垂直統合型)の志向が強く、世界のエレクトロニクス産業で主流になっている自前で工場を持たない「ファブレス化」もしくは自社生産もするが一部をアウトソースする「ファブライト化」へのシフトが遅れ、価格競争への遅れや企画開発力の低下を招いたと指摘されています。
また、業務提携の相手の鴻海(ホンハイ)は、台湾の企業で2011年12月期の売上高は約9兆7000億円とEMS世界最大手です。モトローラやノキアの携帯電話製造受託で急成長。最近は、米アップルの「iPhone」や「iPad」の受託製造で有名です。
EMS世界最大手の鴻海(ホンハイ)グループがシャープの筆頭株主になるという驚きのニュースでした。
しかも、 堺工場を運営するシャープの子会社、シャープディスプレイプロダクト㈱には鴻海(ホンハイ)の創業者である"郭台銘”董事長が個人として約46%直接出資(660億円)するというスケールの大きさです。
最後にシャープの最近の業績を簡単に見てみます。
<当社財務データベース>
■ シャープ_過去4期分年度財務情報.pdf(当社財務データベースより)
■ シャープ_四半期財務情報(2011年3月期~2012年3月期).pdf(当社財務データベースより)
<5年間及び当期予想売上高・損益推移>
リーマンショック前までは業績も安定に推移していましたが、リーマンショックを機に大幅に悪化。その後は、世界経済の減速および液晶パネルや太陽電池をはじめとする商品およびデバイス価格下落や急激な円高の影響もあり業績は回復していません。
特に今期は、大型液晶操業損失や事業構造改革費用、収益悪化による繰延税金資産の取崩しにより大幅な最終赤字が見込まれています。
さらに、細かく見るため部門別の業績を見てみます。
<5年間及び直近四半期部門別売上高・営業損益推移>
売上高こそ大きく減少はしてませんが、リーマンショック後は、08年3月期までの稼ぎ頭の液晶事業の営業損益は大幅に悪化。2010年3月期、2011年3月期に少し持ち直したものの、今期の液晶事業は直近四半期で営業損失に転落しています。液晶事業は上記グラフの紫部分です。
やはり、世界的な液晶パネルの競争激化による価格下落の影響は凄まじいものを感じます。
特にシャープの場合、もう一つの主力事業、成長分野と位置付ける太陽電池事業でもサムスン電子の台頭などにより業績が悪化しているようです。
新たな事業モデルの構築が急がれます。
日経で指摘しているとおり、世界のエレクトロニクス市場では地殻変動が起きているようです。
今期大幅な赤字を見込む、シャープ、パナソニック、ソニー、NEC。新たなビジネスモデルを構築し、今後再び世界市場を席巻できるのか注目です。
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