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今日の日経1面に、KDDIがスマートフォン通信料について、固定回線とセットで最大3割下げるニュースが掲載されていたので、その話題から。
<2012年1月16日 日経朝刊1面 記事の要約>
・KDDI(au)は、3月から自社の光回線や提携するCATV会社の契約者を対象に、スマートフォンの通信料を最大3割下げる料金を導入。下げ幅が最大の場合、データ通信料は月4千円を下回り業界最安となる。
・KDDIのスマホ向けデータ通信料(定額)は月5460円(米グーグルの基本ソフト搭載端末の場合)。iPhoneを含め月々のデータ通信料は最安で4千円弱となる。ソフトバンクモバイルのアイフォーン向けデータ通信料は月4410円。
・対象契約者は、光回線サービス、出資先のJCOMなど販促で提携するCATV43社を合わせ、KDDIの携帯契約者の3割にあたる約1千万件。
・携帯と固定の一体的な新料金でスマホだけでなくCATVなどの契約増につなげて顧客を囲い込み、収益拡大につなげる。
<記事はここまで>
◆固定・携帯電話の通信キャリア各社の状況
競争が激化する携帯電話業界ですが、携帯電話だけでなく、固定電話を含めた通信キャリア各社のステータスを比較する以下のとおり。
<固定・携帯電話の通信キャリアのステータス>
NTT | NTTドコモ | ソフトバンク | KDDI | |
証券番号 | 9432 | 9437 | 9984 | 9433 |
会計基準 | SEC | SEC | 日本基準 | 日本基準 |
直近売上高(百万円) | 10,305,003 | 4,224,273 | 3,004,640 | 2,489,403 |
直近営業利益(百万円) | 1,214,909 | 844,729 | 629,163 | 471,911 |
直近売上高営業利益率(%) | 11.79 | 20.00 | 20.94 | 18.96 |
個別財務情報 | ||||
4社比較 | ||||
固定電話事業(IP電話を含む。) |
NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ |
なし |
ソフトバンクテレコム(旧日本テレコム) |
KDDI |
携帯電話事業 |
なし |
docomo |
ソフトバンクモバイル |
KDDI(au) |
備 考 |
旧電電公社。固定通信のトップ。光回線では独占。他社はNTTの光回線設備を賃貸している。 「フレッツ光」などがある。 DSLでも東と西を合わせると30%超のシェアを誇る。 |
NTTグループの携帯事業会社。携帯契約シェアトップ。 |
「Yahoo!BB」サービスでDSL回線(ADSL)サービスを提供。ADSL契約数はシェアトップ。固定電話では「おとくライン」でIP電話サービスを提供。 携帯事業は06年に英ボーダフォンを買収し参入。PHSを手掛けるウィルコムの会社更生法のスポンサーとなとり子会社化。 |
DDI(旧第二電電)、KDDI(旧国際電話)、日本移動通信(IDO)の合併により誕生。 固定電話では「メタルプラス」など。 |
固定・携帯電話の通信キャリアとしては、ほぼ上記の4社の寡占状態です。
ブロードバンドとしては、ADSLを代表する「DSL回線」と「光ファイバー」の2つであり、ADSLは「Yahoo!BB」を展開するソフトバンクが首位、2位にNTTグループがつけます。
ところで、「ADSL」とは、「Asymmetric Digital Subscriber Line」の略で、回線の上りと下りの速度を非対称性にして、結果として総合的な通信速度を早めようとする技術です。
一般家庭では、Webにアクセスする等の利用が一般的なので、圧倒的に下り(ダウンリンク)のデータ量の方が大量なので、上りよりも下りに多くの割当てを行うことで、結果として通信速度が速まると考えられるものです。
一方、光ファイバーでは、NTTグループが独走で8割に迫る勢いで、KDDIは1割にもシェアがありません。
光ファイバー関連については、総務省を中心とした国家的なブロードバンド論争もあり、簡単に議論できるものではありません。
結果として、NTTへの接続料が大幅に引き下げられ、各社のブロードバンド事業は好転するものと考えられています。
光ファイバーは、ソフトバンクは自社展開を断念、KDDIは自前設備の調達を目指しており、東電のTEPCOひかりの買収やCATV系の買収に力を入れてきました(後述)。現在は、「auひかり」で展開してますね。
上記以外に通信キャリアとしては、例えば、「ポケットwi-fi」を主力としてイー・アクセス(イー・モバイルを合併)やCATV系のジュピター・テレコム(JCOM)があります。
◆KDDIのJCOM株出資の話題
JCOMは、KDDIの出資が2010年に話題となってました。
住友商事とLiberty Globalとの合弁会社がJCOM株の約60%を保有し、CATVビジネスの創出時代から住友商事が多額の投資をしていました。
住友商事としてはメディアインフラ事業の肝入り事業だったのは間違いありません。
そうした中で、JCOMがやっと利益が出てきたところで、KDDIがLibertyからLiberty保有分のJCOM株を取得し、30%超の筆頭株主となり、関連会社化すると発表しました。KDDIはジャパンケーブルネットというJCOMに次ぐ日本で第2位のCATV会社を買収し連結子会社にしていたので、そことのシナジーも含めてJCOM資本参加を決定したものと考えられますし、CATV形態でのブロードバンド網の構築も視野に入っていたものと考えられます。
それが2010年1月のことです。
■2010年1月25日KDDI公表「株式会社ジュピターテレコムへの資本参加について」
【リソース】KDDIホームページ
これに反発したのが住友商事で、翌月にはTOBを実施することを公表。
■「住友商事株式会社による株式会社ジュピターテレコム株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
【リソース】住友商事ホームページ
このTOBは成功し出資比率は40%超となり、筆頭株主に返り咲きました。
最終的には、JCOM、住友商事、KDDIで業務提携の覚書を作って決着となってます。
■2010年6月10日「アライアンスの検討に関する覚書締結について」
【リソース】KDDIホームページ
なお、このKDDIのJCOM株取得は、「金融商品取引法の公開買付(TOB)規制をかいくぐるようなスキームなんじゃないか」というのでも話題になってましたが、それはまたの機会に解説するとして、今日は割愛します。
JCOMの財務状況は以下のとおりです。
◆その他の通信キャリアー イー・アクセス
イー・アクセスは、先に挙げた、イー・モバイルのwifi事業が中核事業ですが、その他にもADSL事業を展開していたアッカ・ネットワークスを2009年にTOBにより吸収し、また、光ファイバー関連事業としてはUCOMに出資しています。
ADSL回線業者としては約20%強のシェアを保有しています。
イー・アクセス自体はソフトバンクと異なりプロバイダ事業は行っていません(ソフトバンクはYahoo!BBでADSL回線事業とプロバイダ事業をセットで展開)。
なお、UCOMはUSEN系の光ファイバー関連事業として事業を展開していましたが、USENはユニゾン・キャピタルに株式を売却し完全に撤退しています。主要株主には、ユニゾンの他、GEのPEファンドであるGEAM、イーアクセス、SONY系のソネット、フォーバルがいます。
スマホやiPadといったタブレット、ニンテンドーDSに代表する無線LANゲーム機の普及に伴い、wi-fiルータを提供するイー・アクセスなどには追い風となると考えられます。
【リソース】IKP財務データベース
また、イー・アクセスとは直接的には関係ないとは思いますが、今話題になっているのが「データオフロード」です。
スマホの急増に伴い3G回線がパンクするというもので、これを回避するためにもwi-fiポイントを増やし、3G回線からブロードバンド回線へとデータを流そうと各通信キャリアは考えているようです。
◆Wi-MAXやLTEについて
筆者もあまり詳しくはないのですが、一時期注目された「Wi-MAX」(今でも注目されてる?)について。
Wi-MAXは、高速ワイヤレスインターネットの愛称で、WiMAXエリアであれば、どこでも接続することができます。
Wi-MAXは光ファイバーやADSLの設置が難しい地域に無線の高速ブロードバンド通信網を提供しようという発想で考えられたものです。
日本でWi-MAXを展開するUQコミュニケーションズは、KDDIが32%を保有するKDDIの関連会社です。
インテルも世界的に力をいれていて、このUQコミュニケーションズの株主として参加しています。
一方で、同じような話ですが、最近話題になっているのが「LTE」というもの。「Long Term Evolution」の略だそうです。
こちらも筆者としてはほとんど知見がありませんが、LTEは3Gの延長として規格化されたもので、NTTドコモではLTE-Advanced技術を使った「Xi(クロッシー)」をすでに発売しています。こちらは有名ですね。
【リソース】NTTドコモHPより
3Gの延長で規格されているため、携帯通信キャリアとしては馴染みやすく、世界中の携帯通信キャリアが将来的な導入を表明しているようです。
ちなみに、次世代の4Gは、WiMAX2とLTE-Advancedからなるようです。
スマホだけでなく、スマートテレビも登場し、ますますインターネットを通じた通信技術、通信サービスが普及していくことが予想されます。
通信インフラは今まで以上に私たち消費者に重要な位置づけとなってきました。
先日のニュースでも日本の通信料金の高額さが指摘されていました。
今日はあまり財務的な分析は行いませんでしたが、今後も通信キャリアの経営戦略を注目していきたいですね。
以上
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