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日本経済新聞2012年1月7日(朝刊)の特集記事の”会社研究”で三菱商事が取り上げられていたので、今日は総合商社について見てみます。
記事の要点は以下の通りです。
・三菱商事が資源分野へのシフトを一段と加速。2011年は暦年で最大規模の1兆円を資源分野だけで投資。これまでの商社の資源開発では出資は少額出資にとどめ、もっぱら配当収入を稼ぐのが主流。しかし、このような従来の姿勢を転換し、初の開発主体となった案件に動き出す。
・2012年3月期は、資源分野だけで3300億円(会社予想)、連結純利益は4500億円(会社予想)と国内事業会社ではNTTグループに次ぐ3位。
・最大の収益源は豪州・原料炭事業への純利益依存度は今期で約4割と高く、既存事業に依存しない盤石な基盤を作るため積極投資を続ける
・ただし、株式市場の評価は低い。11年1月6日時点でPBR0.8倍台とリーマンショック後の最低水準。投資家は、資源株として魅力的なかどうかでみるが、資源メジャーとの差はまだ大きいと指摘。リスクを限定するため少額出資にとどめてきた結果、重要な経営判断を主体的にできないことも要因。三菱商事が資源の開発主体に挑戦するのも、株式市場の低評価を覆す狙いがある。
・三菱商事は、総合商社バージョン3を目指す。貿易仲介で稼ぐ80年代までが第1期、90年代から幅広い事業投資で稼ぐ投資会社に転換した第2期、資源権益の過半数を握り自ら事業の運営主体に進出するのが第3期(バージョン3)。
まずは、国内の総合商社5社のステータスを見てみます。
三菱商事 | 三井物産 | 丸紅 | 伊藤忠商事 | 住友商事 | |
証券コード | 8058 | 8031 | 8002 | 8001 | 8053 |
会計基準 | SEC | SEC | SEC | SEC | IFRS |
直近収益(百万円) | 5,206,873 | 4,679,443 | 3,683,849 | 3,649,671 | 3,100,185 |
直近売上総利益(百万円) | 1,149,902 | 859,223 | 522,152 | 1,041,291 | 863,994 |
直近営業損益(百万円)※1 | 316,141 | 317,003 | 145,774 | 256,082 | 183,485 |
直近当期純利益(百万円)※2 | 463,188 | 306,659 | 136,541 | 160,975 | 200,222 |
個社財務情報(当社財務DB) | 三菱商事.pdf | 三井物産.pdf | 丸紅.pdf | 住友商事.pdf | |
比較財務情報(当社財務DB) | 総合商社 財務情報比較.pdf | ||||
直近セグメント情報 | 下記参照 | 下記参照 | 下記参照 | 下記参照 | 下記参照 |
備考 | 原料炭に強い。 | 鉄鉱石、原油の権益量は国内首位。 | 食料、電力、パルプなどに強み | アパレル、食品等に強み | 資源、メディア関連に強み |
※1:三菱商事、三井物産、丸紅、伊藤忠商事の「営業利益」は、連結損益計算書で表示される売上総利益、販管費及び貸倒引当金繰入額の合計として算定
※2:非支配持分控除後利益
<三菱商事>
新産業金融事業:アセットマネジメントや企業へのバイアウト投資、リース、不動産(開発・金融)、物流、保険などの分野における、商社型産業金融ビジネス
エネルギー事業:石油・ガスの探鉱・開発・生産事業や、LNG 液化プロジェクトへの投資、原油・石油製品・炭素製品・LNG・LPG などの販売取引
金属:薄板、厚板などの鉄鋼製品、石炭、鉄鉱石などの鉄鋼原料、銅、アルミなどの非鉄金属原料・製品の分野における、販売取引、事業開発、投資など
機械:電力・ガス・石油・化学・製鉄などの主要産業素材に係る大型プラントから、船舶・鉄道・自動車などの物流・輸送機器、宇宙・防衛産業向け機器、建設機械・工作機械・農業機械などの一般産業用機器まで、幅広い分野の機械における販売取引、事業開発、投資など
化学品:原油、天然ガス、鉱物、植物、海洋資源などより生産されるエチレン、メタノール、塩といった工業製品用の原料から、プラスチック、電子材料、食品素材、肥料や医農薬などの製品まで、幅広い化学品の分野における販売取引、事業開発、投資など
生活産業:食料、衣料、紙・包装材、セメント・建材、医療・介護など、人々の生活に身近な分野で、原料・素材の調達から、消費市場に至るまでの幅広い領域における商品・サービスの提供、事業開発、投資など
<三井物産>
鉄鋼製品:日本及び海外諸地域おける鉄鋼製品の製造・販売及び売買
金属資源:海外諸地域において鉄鋼及び非鉄金属の原料資源開発を行うと共に、日本及び海外諸地域において原料・製品の製造・販売及び売買を行う
機械・プロジェクト:日本及び海外諸地域における機械・設備の製造・販売及び売買、リース、ファイナンス、更にはプラント・インフラなどのプロジェクトの推進
化学品:日本及び海外諸地域における化学品の製造・販売及び売買
エネルギー:海外諸地域においてエネルギー関連の資源開発を行うと共に、日本及び海外諸地域において石油・ガス及び関連製品の製造・販売及び売買を行う
食料・リテール:日本及び海外諸地域における食料の製造、販売及び売買、大規模小売業者に対するサポートサービス
コンシューマーサービス・情報産業:日本及び海外諸地域における繊維、消費者向けIT製品などの製造、販売及び売買、メディア・インフォメーションなどの消費者関連事業、アウトソーシング、不動産などの事業
物流・金融市場:日本及び海外諸地域における物流ロジスティクス・サービス、保険事業及び金融関連事業
「米州」、「欧州・中東・アフリカ」、「アジア・大洋州」:それぞれの地域に所在する現地法人及び支店を中心に、各種商品を売買し、それら取引に関連した事業活動を行う
<丸紅>
食料:国内及び海外おける、飼料穀物、大豆、小麦、砂糖、加工食品・飲料及びその原料、業務用食材、農水畜産物等、食に係る商品の製造事業や売買
ライフスタイル:国内及び海外において、衣料・フットウェア・生活用品・スポーツ用品・フィットネス機器・タイヤ等、消費者のライフスタイルに係る商品を幅広く取り扱い、商品の企画・製造・輸入・卸売販売からブランド展開・コンサルティング・事業投資まで様々な事業を展開し、多様なサービスを提供
紙パルプ:国内及び海外において、製紙原料、洋紙、板紙等の製造・販売、植林事業への参画及び住宅資材の販売を行う
化学品:国内及び海外において、石油化学品等の川上から電子材料・農薬等の川下に至るまで多種多様の製品を取り扱う。中国に加え中東・東南アジア、南米、インドを重要地域として位置付け、事業投資とトレードの両面でバランスの良いビジネス展開を図る。
エネルギー : 国内及び海外において、石油・ガス等多岐にわたるエネルギー関連の商材について、資源開発を中心とした川上からガソリンスタンドに至る川下まであらゆる段階で事業参画する
金属 : 国内及び海外において、非鉄軽金属の製造・加工・販売及び鉄鋼、非鉄軽金属の原料資源の売買、並びに鋼板、鋼管、特殊鋼等の鉄鋼製品全般の生産・加工・販売事業を行う。また、鉄鋼、非鉄軽金属の原料資源の海外における開発事業を行う。
輸送機 : 国内及び海外において、航空機、防衛関連機器、自動車、建設機械、農業機械等の輸送関連機械の輸出入・卸売・小売等のトレードを中心に、投融資・販売金融・リース事業、海外事業支援等の幅広い機能を提供。また、各種貨物船、タンカーの取引、運航事業等を行う。
電力・インフラ :国内及び海外において、各種電力・インフラ事業、特に発電事業(造水・コジェネ・風力含む)及び上下水道事業の開発・投資・運営に加え、発電・送変電設備及び上下水道関連の機器納入並びに工事請負、その他新エネルギー関連分野の投融資を行う
プラント・産業機械:国内及び海外において、石油・ガス・化学・環境・製鉄・セメント・紙パルプ等のプラント、鉄道・空港等の交通インフラ、繊維機械・新エネルギー設備・自動車生産設備等の産業機械の各分野において、関連機器の納入・工事請負並びに事業案件の開発・運営を行う。また、クリーン開発メカニズム(CDM)等の環境プロジェクトにも取り組む。
開発建設:分譲マンション「グランスイート」シリーズの開発を主力とする国内住宅事業に加え、海外における住宅・オフィスビル等の不動産開発事業、REIT・ファンド向け収益型不動産の仲介・開発事業等、不動産に関する事業を幅広く展開
金融・物流・情報:国内及び海外において、金融分野ではファンドの運営、リース事業、金融商品のトレーディング等を展開し、物流分野ではフォワーディング事業及び物流コンサルティング事業等を行い、保険分野では保険仲介業等に取り組む。情報産業分野ではデータ通信ネットワーク事業、システムソリューション事業、モバイル端末販売事業、RFID事業、BPO事業の他、通信・放送・情報システムの輸出・三国間取引等、幅広い分野に取り組む。
海外支店・現地法人:米州、欧州、アジアをはじめ世界各地に所在しており、各種商品の売買及びそれらに係る事業活動を行う
<伊藤忠商事>
繊維:繊維原料、糸、織物から衣料品、服飾雑貨に至るまで、生活消費関連分野のすべてにおいてグローバルに事業展開を行う。また、ブランドビジネスの海外展開や先端技術の開発、リーテイル分野でのテレビ通販やネット販売等の販路展開にも取組む。
機械:自動車、船舶、建設機械等の単体機械、プラント、橋梁、鉄道等のインフラ関連のプロジェクト及び関連するサービスの取扱と事業を推進。また、水・環境機器等の取引に加えて、再生可能・代替エネルギー関連装置等のビジネスにも取組み、環境に配慮した事業を展開。
情報通信・航空電子:IT系システム・プロバイダ事業、インターネット・サービス事業、ベンチャー企業への投資活動、携帯電話販売・コンテンツ配信事業、映像配信・放送関連事業等サービス事業、産業機械・環境機器・電子機器関連取引、並びに航空機及び関連機材取引等を展開。
金属・エネルギー:金属鉱産資源開発事業、鉄鋼製品加工事業、温室効果ガス排出権取引を含む環境ビジネス、鉄鉱石、石炭、その他製鉄・製鋼原料、非鉄・軽金属、鉄鋼製品の国内・貿易取引及びエネルギー資源開発事業、原油、石油製品、ガス、原子力関連の国内・貿易取引を行う。
生活資材・化学品:木材、パルプ、紙、ゴム、タイヤ、セメント、セラミックス等の各種消費物資や基礎化学品、精密化学品、合成樹脂、無機化学品の取扱と事業を推進
食料:原料からリーテイルまでの食料全般にわたる事業領域において、国内外で効率的な商品の生産・流通・販売を推進
金融・不動産・ 保険・物流:金融商品の組成・販売、保険代理店業・ブローカー業、再保険事業及び保険コンサルティングサービスを行う。また、3PL事業、倉庫業、トラック輸送業、国際複合一貫輸送事業、建設・不動産関連開発・運営事業等を展開。
<住友商事>
金属:国内外の鉄鋼・非鉄金属製品などのトレード及び加工、製造などに関連する投資を行う
輸送機・建機:船舶、航空機、鉄道交通システム、自動車、建設機械及び関連機器・部品の国内・海外取引を行う
インフラ:発電・通信・上下水道などの大規模なインフラビジネスなどに参画。海外でのインフラプロジェクトの建設や、投資・ファイナンス及び国内向けの製造設備やシステムの供給・発電事業なども行う。通信、風力発電などの再生可能エネルギー関連分野でのトレードや事業投資にも取り組む。
メディア・ライフスタイル:CATV事業、番組制作・配信事業、映画事業、並びにITソリューションサービス事業、携帯電話及びネット関連事業などに取り組む。更に、スーパーマーケット、ドラッグストア、各種通販事業、ファッションブランドなどのリテイル事業へも取り組み、各事業のバリューアップとシナジー拡大を進める。
資源・化学品:石炭、鉄鉱石、マンガン、ウラン、非鉄金属、貴金属、原油、天然ガス、液化天然ガス(LNG)などの鉱物・エネルギー資源の開発とトレードを行う。また、石油製品、液化石油ガス(LPG)、二次電池材料、炭素関連素材・製品、合成樹脂、有機・無機化学品、シリコンウェハー、LED素子、医薬、農薬・家庭用防疫薬、ペットケア関連商品などのトレード及びこれらの事業投資を含む関連ビジネスを行う。更に、アジアを中心としたEMS(Electronics Manufacturing Services)事業を展開。
生活産業・建設不動産:食糧・食品、肥料、セメント、木材、建材、紙パルプ、古紙、タイヤなどのトレード、マーケティング、製造・販売、加工及び流通を行う。また、ビル、商業施設、住宅など様々な不動産事業も展開。
新産業・機能推進:太陽光発電事業、環境リサイクル事業、低炭素化・排出権関連事業、電気自動車用電池関連事業などの新たな産業分野における関連ビジネス、太陽電池・リチウム電池関連の材料・資機材などのトレード、並びにベンチャー投資などを行う。また、リース事業、商品先物取引、デリバティブ取引、プライベート・エクイティ投資などの金融関連ビジネス、更には、輸送、通関、配送などの物流サービスから、各種保険手配、海外工業団地の開発運営なども展開。
国内ブロック・支社:関西、中部、九州・沖縄の3つのブロック、及び2つの支社を拠点として国内のビジネスを行う。すべての商品及びサービスに係る営業活動を行う。一部のプロジェクトでは、各地域拠点と事業部門とが共同で、各地域に適した商品及びサービスの開発に取り組む。
海外現地法人・海外支店:米州、欧州、中国、アジアをはじめ、世界中の現地法人・支店から構成。すべての商品及びサービスに係る営業活動を行う。一部のプロジェクトでは、各地域拠点と事業部門とが共同で、各地域に適した商品及びサービスの開発に取り組む。
さすが「ラーメンから航空機まで」といわれる日本の総合商社。セグメント内容が大量ですね。。。。
ただし、各社得意分野はありますが、セグメント毎の利益割を見てみると資源で稼ぐという利益構造は、どの商社の共通のようです。
特に資源権益を大量に有する、三菱商事や三井物産の利益水準は断トツですね。
さて、本日の記事に戻ります。
モノの輸出入などを仲介するビジネスモデルから、資源やインフラ、その他幅広い分野での事業投資で稼ぐビジネスモデルへ変貌を遂げてきた日本の総合商社。次は、資源メジャー化への向かっていくのかという実に興味深い記事でした。
資源メジャーとは、「鉱業において多種類の鉱物資源を扱い、大きな事業規模を誇る企業や、産業に重要な特定の資源生産において他企業の追従を許さない生産・埋蔵量を持って資源を寡占化し、需要側の企業に対して価格交渉や供給調整の権力を有する企業のこと」をいいます。(http://resource.ashigaru.jp/glossary_3_si_major.html より)
5大メジャーといわれる、
「BHP Billiton(豪)」、「Rio Tinto(豪・英)」、「Anglo American(英)」、「Vale(ブラジル)」、「Xstrata(スイス)」
が有名ですね。
近年の総合商社の資源ビジネスは、このような資源メジャー(もしくは石油メジャー)などによる資源開発案件に出資参画し、配当利益や持分法利益により資源高の恩恵も受けながら利益を上げてきました。
しかし、少額出資、すなわちマイノリティ投資では、限界があります。そこで、今後は、少数出資にとどまらず、過半超を出資し自ら開発主体となり、世界の資源メジャーレベルに挑むというわけです。
実際、資源権益投資に関連する利益が含まれる受取配当金および持分法投資損益と当期純利益を比較し、その貢献度を確認してみます。
三菱商事 | 三井物産 | 丸紅 | 伊藤忠商事 | 住友商事 | |
直近当期純利益(百万円)※2 | 463,188 | 306,659 | 136,541 | 160,975 | 200,222 |
(うち受取配当金(百万円))※3 | (124,793) | (51,000) | (19,200) | (23,502) | (10,011) |
(うち持分法投資損益(百万円)) | (161,455) | (242,144) | (71,452) | (60,617) | (95,580) |
※2:非支配持分控除後利益
※3:ただし税引前の金額
利益水準で断トツの三菱商事、三井物産は、受取配当金および持分法投資損益による利益押上げ効果がかなり大きいことがわかります。
時代に合わせて、ビジネスモデルの変貌を続けてきた総合商社。しかし、原料や素材などのような商業の川上に位置することにより、川下に流れる付加価値を取り込み稼ぐことが商社伝統的な商法だとすると、最終的には最上流である資源の開発主体になるのも自然な流れなのかもしれません。
新興国の資源消費量増大によりますます進化する総合商社に今年は注目していきたいと思います。
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