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丸紅と三菱地所、三井不動産レジデンシャルの3社は共同で、中国上海市近郊でマンション開発に乗り出すそうです(2011年12月6日日本経済新聞朝刊)。記事の要点は以下のとおり。
・約430億円を投じ、20棟からなる約1700戸のマンションを2013年春から販売
・中国の不動産販売は、政府が2戸目の購入を制限する「限購令」を実施するなど政府の規制を受け減少傾向にあるが、都市部への人口流入は続いており増える中間所得層向けに底堅い実需が見込めると判断、主に大手企業に勤めるサラリーマン家庭を見込む
・丸紅と三井不動産レジデンシャルがそれぞれ36.84%、三菱地所が26.32%出資し、好世投資(香港)を設立して事業を行う
・1戸当たりの平均価格は2,000万円前後の見込み
・施行管理などで日本式の手法を盛り込み高い安全性や快適性を訴える
同記事によると、少子高齢化などで3社が主力とする日本の不動産市場の伸びが期待できないことも、中国市場を強化する理由の一つとのこと。
今日は、不動産業界、とりわけ分譲マンション業界に焦点を当ててみます。
大手不動産会社のステータスおよび各社のマンション事業の業績を整理すると以下のとおり。
<不動産大手5社のステータス>
三井不動産 | 三菱地所 | 住友不動産 | 東急不動産 | 野村不動産HD | |
直近売上高(百万円) | 1,405,269 | 988,447 | 744,756 | 571,443 | 480,983 |
直近営業利益(百万円) | 120,092 | 158,258 | 138,462 | 62,502 | 42,083 |
直近営業利益率(%) | 8.55 | 16.01 | 18.59 | 10.94 | 8.75 |
直近総資産(百万円) | 3,780,699 | 4,245,209 | 3,234,202 | 1,161,419 | 1,474,331 |
直近負債比率(%) | 262.70 | 222.82 | 493.07 | 384.27 | 312.56 |
直近賃貸等不動産の含み益(百万円) | 840,771 | 1,939,365 | 545,807 | 47,872 | 36,941 |
セグメント情報 | 下記参照 | 下記参照 | 下記参照 | 下記参照 | 下記参照 |
海外売上高比率 | 10%未満 | 10%未満 | 10%未満 | 10%未満 | 10%未満 |
個社財務情報(当社DB) | 三井不動産.pdf | 三菱地所.pdf | 住友不動産.pdf | 東急不動産.pdf | 野村不動産HD.pdf |
比較財務情報(当社DB) | 不動産大手5社比較.pdf | ||||
マンション販売事業の属するセグメント名 |
分譲セグメント |
住宅事業セグメント |
不動産販売セグメント |
分譲セグメント |
住宅事業セグメント |
マンション販売事業の属する直近セグメント売上高(百万円) |
405,242 |
336,595 |
239,709 |
142,650 |
286,135 |
マンション販売事業の属する直近セグメント営業損益(百万円) | 16,193 | 11,783 | 33,418 | △1,619 | 15,803 |
マンション販売事業の属する直近セグメント営業損益率(%) | 4.00 | 3.50 | 13.94 | △1.13 | 5.52 |
分譲マンションブランド | パークコート、パークシティ、パークタワー、パークホームズ、 パークマンション 、パークリュクス |
ザ・パークハウス (藤和不動産統合後のブランド) |
ガーデンヒルズ、グランドヒルズ、シティタワー、シティテラス、シティハウス、パークスクエア | クオリア、シーサイドコート、ブランズ、プレステージ | PROUD |
(データは有価証券報告書、各社HP等より)
<セグメント情報>
金額は、すべて百万円単位、「調整額」は、セグメント間取引消去・全社費用を示しています。
■ 三井不動産 | ||
「賃貸事業」…オフィスビルや商業施設等の賃貸 「分譲事業」…個人顧客向けのマンション・戸建住宅の分譲および投資家向けの賃貸住宅・オフィスビル等の分譲 「マネジメント事業」…プロパティマネジメントや仲介・アセットマネジメント等のノンアセットビジネス 「三井ホーム」…新築事業、リフォーム・リニューアル事業等 「その他」…施設営業事業、商品販売事業等 セグメントの変更あり。上記は変更後の直近の分類である。
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■ 三菱地所 | ||
「ビル事業」…オフィスビル・商業施設等の開発・賃貸・管理運営、駐車場事業、地域冷暖房事業 「住宅事業」…マンション・戸建住宅等の建設・販売・賃貸・管理、ニュータウンの開発、余暇施設の運営、不動産販売代理 「資産開発事業」…収益用不動産の開発、資産運用 「海外事業」…海外における不動産開発・賃貸・管理運営・不動産投資マネジメント 「設計監理事業」…建築及び土木工事の設計監理、建築工事・内装工事等の請負 「注文住宅事業」…注文住宅の請負 「ホテル事業」…ホテル施設の運営 「不動産サービス事業」…不動産販売代理・仲介・管理・賃貸・不動産関係総合コンサルティング
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■ 住友不動産 | ||
「不動産賃貸」…オフィスビル、マンション等の賃貸・管理 「不動産販売」…マンション、販売用ビル、戸建住宅および宅地の分譲 「完成工事」…戸建住宅、マンションおよびオフィスビル等の建築・改修工事請負 「不動産流通」…不動産売買の仲介および販売代理受託 「その他」…フィットネスクラブ事業、飲食事業、ファイナンス事業などで構成 なお、特定目的会社等を利用した不動産事業に係る事業収益および分配金は、当該特定目的会社等の保有する物件の性格ならびに保有目的から、不動産賃貸セグメントまたは不動産販売セグメントの営業収益に含めている。
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■ 東急不動産 | ||
「分譲」…戸建住宅・中高層住宅・別荘・ビルの販売等 「請負工事」…戸建住宅の建設請負、戸建住宅及び中高層住宅のリフォーム等 「小売」…住生活と手作りに関する素材及び製品等の販売 「賃貸」…オフィスビル・アパート・ショッピングセンター・ホテルなどの賃貸等 「管理受託」…ビル・マンション等の総合管理等 「運営」…ゴルフ場、会員制リゾートホテル、スキー場、フィットネスクラブ、シニア住宅の運営並びに開発等 「仲介」…住宅等の販売代理及び仲介業務 セグメントの変更あり。上記は変更後の直近の分類である。
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■ 野村不動産ホールディングス | ||
「住宅事業」…マンション・戸建住宅・宅地等の分譲、マンションの総合管理等 「ビル事業」…オフィスビル等の賃貸・総合管理、地域熱供給事業等 「資産運用開発事業」…収益不動産の開発及び販売、不動産ファンド等の運営及び同ファンドへの投資等 「仲介・販売受託事業」…不動産の仲介・コンサルティング、マンション・戸建住宅等の販売代理等 |
各社の特徴は指摘すると以下のとおりでしょうか。
・三井不動産
個人向けのマンションや戸建住宅の分譲に強い。ららぽーとなどの商業施設も運営。
報告セグメントの分類方法は各社異なるため一概には言えませんが、オフィスビル・商業施設などの「賃貸事業」の営業利益率が20%と他の財閥系不動産会社と比較すると劣っているように思えます(三菱地所の「ビル事業」:31%、住友不動産の「不動産賃貸事業」:30%)。
現在、三井不動産のおひざ元である日本橋の大規模再開発が行われていますが、「賃貸事業」の利益率の改善につながるか注目です。プロジェクトの参考URLもご覧下さい。
http://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2010/0622/index.html
・三菱地所
丸の内、大手町のオフィス事業に圧倒的な強さをもつ。特に「ビル事業」の利益率も高い。賃貸等不動産の含み益も2兆円近くあり財務基盤も強い。旧藤和不動産(現在の三菱レジデンス)を中心とする「住宅事業」の低利益率が課題(住宅事業については、2009年に三菱地所の100%子会社となった藤和不動産が、2011年に三菱地所および三菱地所リアルエステートサービスの住宅分譲事業を承継し、社名を三菱地所レジデンスに変更している)。
・住友不動産
規模こそ三井不動産、三菱地所には及ばないが、「不動産賃貸事業」、「不動産販売事業」ともに営業利益率が高く(賃貸事業:30%、販売事業:14%)安定。「不動産販売事業」も増収で好調。
・東急不動産
「賃貸事業」は好調だか、「分譲事業」は直近2期連続赤字と課題。
・野村不動産HD
分譲用高級住宅マンションなどの住宅事業に強み。直近「住宅事業」「ビル事業」共に増収増益を確保し好調。
さて、上海での三井不動産と三菱地所のマンション開発のニュース。
過去3期をセグメント情報みてみると三井不動産や三菱地所、東急不動産の分譲マンションなどの住宅販売事業は、売上高こそ好調のものの損益状況悪化しているようです。
さらに少子高齢化や企業の海外進出による国内空洞化が見込まれることを鑑みると、国内不動産市場(特に住宅市場)は今後じり貧になっていくは容易に想像できます。そうした状況の中、大手5社ともに海外売上高比率は10%未満と国内不動産市場への依存度が高い状態です。
「日本の統計2011」(以下URL参照)に基づき平成23年の年齢別人口をシミュレーションしてみると以下のとおりとなります。
(平成21年の国勢調査に基づく人口のため、2年分単純スライドするなど筆者が加工して作成)
http://www.stat.go.jp/data/nihon/index.htm
近年のマンション購入意欲の旺盛な団塊ジュニア(30代後半)の年齢当たりの人口がおよそ200万人弱のところ、20歳未満の年齢当たりの人口は100万人強と半分近くまで減少していますね。
10年後20年後は少子化による住宅余りが起きる可能性が予想できます。
内需産業といわれる不動産業界。
以上の状況を鑑みると今後は不動産会社にも海外進出が求めれることが予想されますね。国内不動会社の海外でのマンション開発のニュースが珍しくない時代がくるかもしれません。
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。