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2011/12/05 年末商戦、デジタル一眼など品切れ拡大 タイ洪水で

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ボーナスの支給が始まり年末商戦が本格化するなか、家電販売に異変が起きている。タイの洪水の影響でデジタル一眼レフカメラやオーブンレンジなど幅広い分野で品切れが起き、十分な品揃えができない販売店が続出。量販店は代替品を確保するなどの対応を取り、メーカーシェアの市場シェアも変動し始めている。

デジタル一眼カメラでは11月下旬頃から、キヤノン製品の品薄感が強まった。半導体関連部品などのタイからの調達が滞ったため。売れ筋の「イオス60D」は12月初旬にヤマダ電機やヨドバシカメラなど都内の複数の店舗で品切れ。入荷は未定で「1か月以上待つ可能性が高い」とする店舗が多かった。

11月上旬ころから品不足が顕在化していたいソニーやニコンに加え、約3割のシェアを握るキヤノンも供給不足になり「(一眼カメラの)12月の販売額は例年の半分にいけばいい方」との声も出ている。

(日本経済新聞2011年12月5日 朝刊より)


 

デジタルカメラといえば、日本のお家芸のひとつとされる分野です。 

過去の日本経済新聞の記事(以下参照)によると、デジタルカメラの世界シェアは、1位キヤノン(20.9%)2位ソニー(18.7%)3位ニコン(14.0%)とのこと。上位3社だけでシェアが53.6%にも達しますね。

世界26品目シェア(2010年日本経済新聞記事)

 

今日は、そんなデジカメ市場について焦点を当ててみます。

 

デジタルカメラにも、「一眼レフカメラ」「ミラーレス一眼カメラ」(いわゆるコンパクト一眼レフ)、「コンパクトデジタルカメラ」があります。

「ミラーレス一眼カメラ」とは、従来の一眼レフカメラの光学式ファインダーの代わりに電子ビューファインダーや液晶ディスプレイを通じて像を確認する形式のレンズ交換式デジタルカメラのことです。従来の一眼レフカメラと比較して小さく軽量で女性を中心に人気が出ているようです。2008年9月にパナソニックが世界初のミラーレス一眼「LUMIX DMC-G1」を発表、10月31日から発売が開始され、大ヒットとなりました。その後、ソニー、オリンパス、ペンタックスなども参入し、ミラーレス一眼カメラ市場は急成長してきました。

 

一眼レフカメラとミラーレス一眼カメラの大きさ比較およびミラー構造とミラーレス構造との比較のイメージ図は以下のとおり(パナソニックHPより)

 

 

そんなデジタルカメラ市場ですが、一眼レフカメラに絶対的強みをもつキャノンとニコン、 コンパクトデジカメに強くミラーレス一眼カメラでシェア拡大を目指すソニーとパナソニック、コンパクトデジカメがメインである富士フィルムの5社を比較してみます。

 

キヤノン ニコン ソニー パナソニック 富士フィルム
直近売上高(百万円) 3,706,901 887,512  7,181,273  8,692,672 2,217,084
直近営業損益(百万円) 387,552 54,052 199,821 305,254 136,356
直近営業損益率(%) 10.45 6.09 2.78 3.51 6.15

デジカメ事業が属する

セグメント売上高(百万円)※

1,391,327 597,426 3,849,833 3,303,974 326,603

デジカメ事業が属する

セグメント営業損益(百万円)

238,065 52,331 10,817 114,956 △12,693

デジカメ事業が属する

セグメント営業損益率(%)

17.11 8.75 0.28 3.47 △3.88

直近財務情報

(当社財務DBより)

キヤノン.pdf ニコン.pdf ソニー.pdf パナソニック.pdf 富士フィルム.pdf

直近比較財務情報

(当社財務DBより)

上記5社比較.pdf
主なデジカメ機種

一眼レフ

コンパクト

一眼レフ

ミラーレス一眼

コンパクト

一眼レフ

ミラーレス一眼

コンパクト

ミラーレス一眼

コンパクト

コンパクト
主力ブランド

EOSシリーズ

IXYシリーズ

PowerShotシリーズ

Dシリーズ

Nikon 1

ニコンクールピクス

αシリーズ

NEXシリーズ

サイバーショット

ルミックスGシリーズ

ルミックスシリーズ

FINEPIX

 

※各社のセグメント名および当該セグメントの主要製品は下記ののとおり。

キャノン:コンシューマ事業(デジタル一眼レフカメラ、コンパクトデジタルカメラ、交換レンズ、デジタルビデオカメラ、インクジェット複合機、単機能インクジェットプリンター、イメージスキャナー、放送用テレビレンズ)

ニコン:

ソニー:コンスーマープロダクツ&サービス(液晶テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゲーム、パーソナルコンピューター等)

パナソニック:デジタルAVCネットワーク(映像・音響機器)

富士フィルム:イメージングソリューション(一般消費者向けカラーフィルム、デジタルカメラ、フォトフィニッシング機器、写真プリント用カラーペーパー、薬品等)

 

 

デジタルカメラだけのセグメント情報はないため、デジタルカメラメーカー同士で比較は難しいですが、一眼レフカメラに強いキャノン、ニコンのデジカメ事業の属するセグメントの営業利益率は高いですね。

また、中間所得層が拡大傾向にある中国や東南アジアで一眼レフの売れ行きが好調のようで、利益率の高い一眼レフカメラの販売量増加により両社ともデジタルカメラの属するセグメント業績は好調のようです。

 

ミラーレス一眼カメラに力を入れているソニーやパナソニックは、他のテレビなどのデジタル機器も同一セグメントなので、一概には言えませんが、パナソニックのアニュアルレポートを読むと、新興国市場などで販売台数を伸ばすものの、競合他社によるミラーレス一眼カメラ分野の参入の影響を受け価格下落等競争が激化しているようです。当初はパナソニック1社だけでしたが、その後ソニー、オリンパス、ペンタックスが参入するとともに、今年9月にはニコンが参入しています。

 

コンパクトデジカメがメインである、富士フィルムはセグメント営業赤字状態ですね。新興国を中心にデジタルカメラの販売台数が世界最高を記録したようですが、コンパクトデジカメは、価格競争が激しい分野と言われています。カメラ性能においてもスマートフォンなどの他の端末との差も縮んでおり、今後も競争が厳しい分野でしょう。

 

以上をまとめるとデジカメ市場の動向は以下の感じでしょうか。

 

■ 一眼レフカメラ

利益率が高い。新興国での販売も拡大。今後、ミラーレス一眼カメラが一眼レフカメラ市場に、どの程度食い込むのか注目

 

■ ミラーレス一眼カメラ

パナソニックの開拓により市場急成長。ただし競合他社の参入により価格下落傾向。 今後マーケットがどのくらいまで拡大するか注目。

一眼レフカメラ市場で世界シェアの9割をもつといわれるキヤノンとニコンの2者のうち、ニコンは、2011年9月に「Nikon 1」で同市場参入済み。今後、デジタルカメラトップの同市場未参入キヤノンがどう動くか注目

 

■ コンパクトデジタルカメラ

価格下落が激しい。スマートフォンなどのカメラ性能も上昇しており、他の媒体との差が縮む。今後も競争が激しい分野

 

実際、「カメラ映像機器工業会」の統計情報をもとに、日本企業の国内海外向けの出荷金額(海外での生産を含む)を集計し市場の動向をみてみます。

 

コンパクトデジタルカメラなどの「レンズ一体型」と「一眼レフ型」のデジタルカメラの出荷状況を2005年と2010年で比較してみると下記のとおり。

 

<日本企業の国内海外向けの出荷金額(海外での生産を含む)の2005年と2010年の比較> 

一眼レフカメラの成長率が大きいですね。5年前と比較し特にアジアの成長が著しいようです。

一眼レフカメラに強いキヤノンやニコンの好業績は、特にアジアにおいて利益率が高い一眼レフ市場が急成長したことが要因だったことがわかりますね。

 

さらに、出荷対象地域の割合を2005年と2010年で比較してみます。

やはり世界的に見てもアジア市場の成長が著しいですね。 アジア全体の所得水準が世界的に上昇し購買層が増えたのでしょう。

 

デジタルカメラ市場では、サムソン電子が世界シェアで4位と徐々に市場シェアを拡大しています。とくにミラーレス一眼を独自開発するなど、今後の新規・成長分野であるミラーレス一眼カメラの分野に力を入れ、日本企業の牙城に挑戦していくとのことです。

 

日本の高度精度技術力の高さの象徴の一つであるデジタルカメラ。

 

海外旅行に行くと外国人が首から下げているカメラのほとんどがキヤノンやニコンなどの日本メーカーです。改めて日本製品が世界で愛されていること実感します。筆者もキヤノンの一眼レフカメラのファンの一人です。

 

タイの洪水により生産が低迷した機会に、テレビ・自動車のように牙城を崩されることがないよう願う筆者です。

 

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