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2011/12/01 東芝、半導体3工場閉鎖 単機能製品を生産集約

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今日は、日経朝刊1面に東芝の半導体3工場の閉鎖についての記事が掲載されていたので、半導体業界についての話題です。

 

<2011年12月1日 日経朝刊1面>


 東芝は30日、トランジスタやダイオードなど単機能半導体を製造する北九州工場(北九州市)など3工場を2012年9月末までに閉鎖すると発表した。円高の定着や世界景気の減速で主な用途であるデジタル民生機器向けの需要が急減。事業採算が悪化しているとして国内拠点6カ所を3カ所に集約し、携帯電話のデータ記憶などに使うNAND型フラッシュメモリーなど中核事業に経営資源を集中する。

 北九州工場のほか、子会社の浜岡東芝エレクトロニクス(静岡県御前崎市)、東芝コンポーネンツ(千葉県茂原市)を閉鎖する。閉鎖する3拠点の従業員1200人は東芝グループ内で異動させる。


<ここまで>

 

◆半導体市場におけるファライト・ファブレス化の概要

現在我々が利用する電気製品のほとんどに使われていると言っても過言ではないぐらいに、製品部材のメインである半導体。

ただ、一言で「半導体製品」といっても、マイコンからフラッシュメモリ、RAMと様々なものがあり、それぞれの半導体によって半導体メーカーは激しい競争を繰り広げています。

 半導体メーカーは、数千億円レベルの設備投資が必要になる一方、デジタル製品などの需要に大きく影響を受けて業績変動が激しく、非常に難しい経営管理が求められるビジネスと言えます。

 

こうした中で、業界全体として自前で工場を持たない「ファブレス(fabless)化」もしくは自社生産もするが一部をアウトソースする「ファブライト(fablight)化」がすすんでいます。

一方で、外部生産を受託する側を「ファウンドリ(foundry)」と言いますが、人件費をはじめ様々な低コストを実現するアジア系企業が強く、特に台湾勢が圧倒的な地位を持っています。ファウンドリの最大手は、台湾のTSMCで、日本のルネサスエレクトロニクスやインテルなど世界の半導体メーカーの受託生産を行っています。

 

■TSMC(Tiwan Semiconductor Manufacturing Company)のホームページと直近の20-F

【ホームページ】http://www.tsmc.com/english/default.htm

【20-F】http://www.tsmc.com/download/ir/secFillings/20F-2010.pdf

 

半導体市場では、ますますファブライト化・ファブレス化がすすむと考えられ、半導体メーカーは、設計・開発に集中していくことになるかと考えられます。

日本はどちらかといえばIDM(Integrated Device Manufacturer、すなわち設計から生産までの垂直統合型)の志向が強かった感もあり、その間にも、台湾ファウンドリが急成長し、日本は半導体市場の主流から孤立した経緯があります。

ただ、近年では、高額の投資負担に耐えられず、ルネサスの「ファブネットワーク構想」や東芝のロジックLSIのサムスン電子委託、富士通のファブライト化推進戦略など、ファブライト化はすすんでいくことは明白だと思われます。

 

 

◆日本の半導体メーカーの概要

半導体メーカーは、MPUのインテルをはじめ、サムスン電子、テキサスインスツルメンツなどの大手があり、スマホをはじめとする携帯電話用の半導体では圧倒的な強さを持つファブレス企業のクアルコム(米)などもあって、世界的競争が激化している状況です。

ここでは、日本の半導体メーカーに絞って、それぞれの製造分野等について整理すると以下のとおりです。

会社名 東芝

ルネサス

エレクトロニクス

エルピーダメモリ ソニー 富士通
証券番号 6502 6723 6665 6758 6702
売上 1,347,708 1,137,898 514,316 358,396 630,600
営業利益

86,841

14,524

35,788 不明 20,976
財務情報 東芝財務情報 ルネサス財務情報 エルピーダ財務情報 ソニー財務情報 富士通財務情報
強み NAND型フラッシュメモリ 自動車マイコン世界シェアトップ 国内唯一のDRAM 携帯電話等のイメージセンサ技術 通信系半導体設計に定評
主な事業 NAND型フラッシュメモリ、ディスクリート関連(パワー半導体・小信号デバイス)、ロジックLSI事業、アナログ・イメージングIC事業 マイコン事業、アナログ・パワー半導体事業、SoC事業(民生機器用半導体) RAM型メモリ(DRAMやSDRAM等) イメージセンサ、ディスプレイデバイス LSI、電子部品(半導体パッケージ、SAWデバイス等)
資本関係 東芝の電子デバイス部門 日立製作所(30.6%)、三菱電機(25.0%)、NEC(18.7%)。旧ルネサステクノロジと旧NECエレクトロニクスの統合により平成22年4月に誕生。 日立製作所、三菱電機、NECのDRAM事業を分離統合。現在はNECが3.5%保有する。 ソニーの半導体事業 富士通の半導体事業
関連ファウンドリ ロジックLSIはソニー合弁を解消し、サムスン電子(韓)に外部委託。ディスクリート関連では後工程で一部外部委託。 TSMC(台)、グローバルファウンドリーズ(米)を含めた「ファブネットワーク構想」 子会社Rexchip(台)が前工程。Powerchip(台)もファウンダリ。前工程のテスト委託先として持分法のテラプローブ社を利用。 ファウンドリの情報は特になし。 2009年よりTSMC(台)を利用。ファブライト化の事業モデルを採用鮮明。

※東芝は、2011年3月期有価証券報告書のセグメント情報「電子デバイス」部門の数字。ルネサスエレクトロニクス、エルビータメモリは半導体事業単一のため連結損益計算書の数字。ソニーは2011年有価証券報告書48ページの「製品部門別の外部顧客向け売上高」の数字。富士通は、2011年3月期有価証券報告書のセグメント情報「デバイスソリューション」の数字。

※売上高と営業利益の単位は百万円。

 

東芝はNANDA型フラッシュメモリを開発した会社で、世界でも高いシェアを持ちます。

フラッシュメモリは、ROMと呼ばれるメモリの一種で、低コスト製造が可能で、大容量化にも優れています。RAMと異なり、ROMは電源を切ってもデータが消えない不揮発性のもので、SDカードやUSBメモリ等の製品として使われています。

 

ルネサスはマイコン(マイクロコンピュータ)の製造が得意で、自動車用マイコンのシェアは世界トップです。マイコンは中央処理装置(CPU)の機能を1つの半導体チップに集積したものです。8ビット、16ビット、32ビットのマイコン製造をしています。

 

エルピーダは、日本で唯一のDRAMメーカーです。RAMは上記で説明したとおり、ROMと異なり電源を切ったらデータが消えてしまう揮発性のメモリです。ただ、ROMと違い、データの書き込み、読み出し動作が高速なので、データ処理の領域で利用されるメモリです。なお、エルピーダは、シンクロナスDRAM(SDRAM)という従来のDRAMよりも高速なデータ転送ができるメモリを開発しており、サーバやPCなどに使われています。

 

 

 

◆東芝の半導体事業における構造改革

こうした状況の中で、東芝はディスクリート事業を6か所から3か所へ集約すると発表しています。ディスクリート事業は、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ等の単機能半導体(ディスクリート)を製造している事業です。

 

東芝はディスクリート事業について、IDMを基本としつつも後工程のファブライト化は進めており、今回の構造改革でもパワー半導体の後工程を担当していた東芝コンポーネンツ株式会社の茂原工場は閉鎖することになりました。

一方、前工程を行っていた北九州工場と浜岡東芝エレクトロニクス株式会社の御前崎工場の2か所は光半導体の前工程を製造していた工場ですが、この廃止はファブライト化ではなく、コスト削減のための生産拠点の集約と考えられそうです。これは石川県能美市の加賀東芝工場に集約されることになります。

 

半導体事業は価格競争が厳しく、東芝にとっても余裕のある事業領域ではありません。

総合電機の中で、日立、三菱電機、NECはDRAM製造等の半導体事業から撤退しています。日立などはどちらかというと半導体を製造する装置を製造する事業を展開しています。

東芝もウェスチングハウス(米)の買収をはじめ、原子力事業・インフラ事業などの重電側にシフトしつつあります。まだまだ。パソコンや葉度ディスク装置などのデジタルプロダクツ事業も2兆円規模の売上を維持しているため、「総合電機会社」の看板を掲げていますが、今後も半導体事業領域をどうするのか注視していきたいところです。

 

<東芝のセグメント状況>

以上

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