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1.金融商品取引法における金融商品取引業
金商法は、各種の業法を総括して整備された経緯から、従来の業法規制を引き継ぎ、一部改正したり、新たに規制を設けたりする形で規制が整理されています。
金商法では、「金融商品取引業」と「金融商品取引業者」について定義づけを行い、「この取引業にはこの取引業者でなければ行えない」という形で規定しています。
金融商品取引業として定義されているのは、以下のいずれかを業として行うことをいいます(金商法第2条8項)。
1 |
有価証券の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。以下同じ。)、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引(有価証券の売買にあっては、第十号に掲げるものを除く。)
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有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)又は代理(有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理にあつては、第十号に掲げるものを除く。)
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3 |
次に掲げる取引の委託の媒介、取次ぎ又は代理
(イ)取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引
(ロ)外国金融商品市場(取引所金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものをいう。以下同じ。)における有価証券の売買又は外国市場デリバティブ取引
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4 |
店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理(以下「店頭デリバティブ取引等」という。)
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5 |
有価証券等清算取次ぎ
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6 |
有価証券の引受け(有価証券の募集若しくは売出し又は私募もしくは特定投資家向け売付け勧誘等に際し、第六項各号に掲げるもののいずれかを行うことをいう。)
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7 |
有価証券(次に掲げるものに限る。)の募集又は私募
(イ)第一項第十号に規定する投資信託の受益証券のうち、投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する委託者指図型投資信託の受益権に係るもの
(ロ)第一項第十号に規定する外国投資信託の受益証券
(ハ)第一項第十六号に掲げる有価証券
(ニ)第一項第十七号に掲げる有価証券のうち、同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するもの
(ホ)(イ)もしくは(ロ)に掲げる有価証券に表示されるべき権利又は(ハ)もしくは(ニ)に掲げる有価証券のうち内閣府令で定めるものに表示されるべき権利であって、第二項の規定により有価証券とみなされるもの
(ヘ)第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
(ト)(イ)から(ヘ)までに掲げるもののほか、政令で定める有価証券
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8 |
有価証券の売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等
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9 |
有価証券の募集もしくは売出しの取扱い又は私募もしくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い
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有価証券の売買又はその媒介、取次ぎもしくは代理であって、電子情報処理組織を使用して、同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として次に掲げる売買価格の決定方法又はこれに類似する方法により行うもの(取り扱う有価証券の種類等に照らして取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場(第六十七条第二項に規定する店頭売買有価証券市場をいう。)以外において行うことが投資者保護のため適当でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)
(イ)競売買の方法(有価証券の売買高が政令で定める基準を超えない場合に限る。)
(ロ)金融商品取引所に上場されている有価証券について、当該金融商品取引所が開設する取引所金融商品市場における当該有価証券の売買価格を用いる方法
(ハ)第六十七条の十一第一項の規定により登録を受けた有価証券(以下「店頭売買有価証券」という。)について、当該登録を行う認可金融商品取引業協会が公表する当該有価証券の売買価格を用いる方法
(ニ)顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法
(ホ)(イ)から(ニ)までに掲げるもののほか、内閣府令で定める方法
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11 |
当事者の一方が相手方に対して次に掲げるものに関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約(以下「投資顧問契約」という。)を締結し、当該投資顧問契約に基づき、助言を行うこと。
(イ)有価証券の価値等(有価証券の価値、有価証券関連オプション(金融商品市場において金融商品市場を開設する者の定める基準及び方法に従い行う第二十八条第八項第三号ハに掲げる取引に係る権利、外国金融商品市場において行う取引であつて同号ハに掲げる取引と類似の取引に係る権利又は金融商品市場及び外国金融商品市場によらないで行う同項第四号ハもしくはニに掲げる取引に係る権利をいう。)の対価の額又は有価証券指標(有価証券の価格若しくは利率その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの又はこれらに基づいて算出した数値をいう。)の動向をいう。)
(ロ)金融商品の価値等(金融商品の価値、オプションの対価の額又は金融指標の動向をいう。以下同じ。)の分析に基づく投資判断(投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断をいう。以下同じ。)
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12 |
次に掲げる契約を締結し、当該契約に基づき、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、金銭その他の財産の運用(その指図を含む。以下同じ。)を行うこと。
(イ)投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十三項に規定する登録投資法人と締結する同法第百八十八条第一項第四号に規定する資産の運用に係る委託契約
(ロ)イに掲げるもののほか、当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のため投資を行うのに必要な権限を委任されることを内容とする契約(以下「投資一任契約」という。)
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投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介
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14 |
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、第一項第十号に掲げる有価証券に表示される権利その他の政令で定める権利を有する者から拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと(第十二号に掲げる行為に該当するものを除く。)。
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15 |
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うこと(第十二号及び前号に掲げる行為に該当するものを除く。)。
(イ)第一項第十四号に掲げる有価証券又は同項第十七号に掲げる有価証券(同項第十四号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)に表示される権利
(ロ)第二項第一号又は第二号に掲げる権利
(ハ)第二項第五号又は第六号に掲げる権利
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16 |
その行う第一号から第十号までに掲げる行為に関して、顧客から金銭又は第一項各号に掲げる証券若しくは証書の預託を受けること。
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17 |
社債、株式等の振替に関する法律第二条第一項に規定する社債等の振替を行うために口座の開設を受けて社債等の振替を行うこと。
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18 |
前各号に掲げる行為に類するものとして政令で定める行為
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ここで、「業」は営利性の要件は特に要求されておらず、「対公衆性」と「反復継続性」があれば「業として行う」ものと考えられます。なお、「対公衆性」と「反復継続性」は実際に行われている場合だけでなく、それが想定される場合も含まれると考えられます。
2.金融商品取引法における金融商品取引業者の種類
金商法では、金融商品取引業を行う者として、内閣総理大臣に登録を受けなければならないとしています(金商法29条)。しかし、上記の金融商品取引業のうち、投資者保護として規制すべきレベル感というものが異なり、すべての金融商品取引業に対して、同程度の規制を設ける必要性はないものと考えられます。
このため、金商法では、「第一種金融商品取引業」「第二種金融商品取引業」「投資助言・代理業」「投資運用業」の4つに分類し、それぞれの金融商品取引業につき規制に強弱をつけ、過度な規制にならないように配慮しています。
一般的なファンドとしては、第二種金融商品取引業もしくは投資運用業の登録が必要となるケースが多く、第一種金融商品取引業はいわゆる証券会社のようなものを想定しています。
それぞれの金融商品取引業は、以下のとおりです(金商法28条)。
第一種金融商品取引業(金商法28条1項) | |
1 | 有価証券(第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利を除く。)についての同条第八項第一号から第三号まで、第五号、第八号又は第九号に掲げる行為 |
2 | 第二条第八項第四号に掲げる行為又は店頭デリバティブ取引についての同項第五号に掲げる行為 |
3 | 次のイからハまでのいずれかに該当する行為
(イ)有価証券の元引受けであつて、損失の危険の管理の必要性の高いものとして政令で定めるもの
(ロ)有価証券の元引受けであつて、イに掲げるもの以外のもの
(ハ)第二条第八項第六号に掲げる行為であつて、有価証券の元引受け以外のもの
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4 | 第二条第八項第十号に掲げる行為 |
5 | 第二条第八項第十六号又は第十七号に掲げる行為 |
第二種金融商品取引業(金商法28条2項) | |
1 | 第二条第八項第七号に掲げる行為 |
2 | 第二条第二項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利についての同条第八項第一号から第三号まで、第五号、第八号又は第九号に掲げる行為 |
3 | 第二条第八項第一号から第三号まで又は第五号に掲げる行為(前項第一号若しくは第二号又は前号に掲げるものを除く。) |
4 | 第二条第八項第十八号に掲げる行為 |
投資助言・代理業(金商法28条3項) | |
1 | 第二条第八項第十一号に掲げる行為 |
2 | 第二条第八項第十三号に掲げる行為 |
投資運用業(金商法28条4項) | |
1 | 第二条第八項第十二号に掲げる行為 |
2 | 第二条第八項第十四号に掲げる行為 |
3 | 第二条第八項第十五号に掲げる行為 |
上記の取引業は、「登録」であり、「認可」ではありません。このため、いわゆる「登録拒否事由」に該当しなければ、行政は登録を拒否することができず、取引業として登録することになります。このため、金商法では登録拒否事由について詳細に規定されています。なお、PTS(私設取引システム)などを行うとする金融商品取引業については、認可制が採用されています(金商法30条1項)。
3.金融商品取引法における販売・取得勧誘等
ファンドに関連する業規制として、具体的に考慮すべき事項は、資金調達をする際の「販売・取得勧誘」と資金調達した後の「運用・助言」になります。
従前の証券取引法では、資金調達の際の規制として、「有価証券の売買」をはじめ「有価証券の売出し」「有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い」などといったものを証券業として分類し、業規制の対象としていました。今般の金商法では、これらの証券業に分類されていたものに加えて、発行者自らが行う取得勧誘行為である「自己募集・自己私募」についても金融商品取引業と規定し(金商法2条8項7号)、自己募集・私募を行う場合には、第二種金融商品取引業の登録が必要となります(金商法28条2項1号)。
ただし、すべての有価証券に関する自己募集・私募に対して登録が必要となると過度な規制になると考えられるため、以下の有価証券についての自己募集・私募について該当するものとしています(金商法2条8項7号)。
1 |
第一項第十号に規定する投資信託の受益証券のうち、投資信託及び投資法人に関する法律第二条第一項に規定する委託者指図型投資信託の受益権に係るもの
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2 |
第一項第十号に規定する外国投資信託の受益証券
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3 |
第一項第十六号に掲げる有価証券
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4 |
第一項第十七号に掲げる有価証券のうち、同項第十六号に掲げる有価証券の性質を有するもの
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5 |
1もしくは2に掲げる有価証券に表示されるべき権利又は3もしくは4に掲げる有価証券のうち内閣府令で定めるものに表示されるべき権利であつて、第二項の規定により有価証券とみなされるもの
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6 |
第二項の規定により有価証券とみなされる同項第五号又は第六号に掲げる権利
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7 |
①から⑥までに掲げるもののほか、政令で定める有価証券
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上記のとおり、6において集団投資スキーム持分が該当することになります。なお、信託受益権については、自己募集・私募の規制に含まれていません。このため、2項有価証券の信託型でファンド設計した場合には、第二種金融商品取引業の登録は必要ありません。
4.金融商品取引法における投資運用業
金融商品取引業として、「投資運用業」に該当する場合には、投資運用業の登録が必要となります。投資運用業は、「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて、有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として」金銭その他の財産の運用を行うことです。
ここで、「投資判断」とは、投資対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格ならびに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期のついての判断をいいます(金融商品取引法2条8項11号ロ)。
また、投資の対象は、有価証券およびデリバティブに限定されるため、商品や不動産といった資産への投資を行う場合には、投資運用業には該当しません(ただし、不動産特定共同事業法や商品ファンド法などの規制があります)。なお、不動産を信託受益権化したものについては、有価証券に該当することから、このような有価証券への投資を行う場合には投資運用業に該当します。
さて、ファンドのスキームを考える場合、特に論点となるのが「自己運用」に該当するケースです。自己運用とは、「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて、主として、有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、次に掲げる権利その他政令で定める権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の、運用を行うこと(第十二号及び前号に掲げる行為に該当するものを除く)」と定めています。
「主として」の割合ですが、「基本的に運用財産の50%超を意味する」とされています。また、「次に掲げる権利その他政令で定める権利」とは資金の拠出方法が受益証券発行信託の受益証券、信託の受益権、集団投資スキーム持分のみに限定していることを意味しています。このため、例えば、会社を設立して資本金として資本を調達した会社がその資金を元手に有価証券投資をしたとしても、自己運用に該当することはなく、投資運用業の登録は必要ありません。
なお、「自己運用」は他の投資運用業に該当しない場合である必要があります。スキームの内容によっては「投資一任契約に関する投資運用業」に該当する可能性があります(金融商品取引法2条8項12号ロ)。投資一任契約は、当事者の一方が、相手方から、金融商品の価値等野分析に基づく投資判断の全部又は一部を一任されるとともに、当該投資判断に基づき当該相手方のための投資を行うのに必要な権限を委任されている契約のことで、この投資一任契約による投資運用業が行われている場合には、自己運用には該当しないことなります。自己運用と投資一任契約の大きな違いは、後述する「適格機関投資家等特例業務」を適用することができるか否かです。自己運用の場合には、この特例業務を適用することができ、場合によっては投資運用業の登録は必要なく届出のみで足りることになります。このため、実務的に自己運用か否かは非常に重要な論点となります。
なお、投資運用業に該当する場合であっても、特に投資家保護の必要性がないこと等から、例外的に登録不要とされるケースがあります。例外規定として、①運用権限の全部委託、②二層構造ファンド(不動産、競馬、商品)、③外国集団投資スキームがあります。
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。