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(平成23年5月16日現在)
3-12.レベル1のインプット
レベル1のインプットは、企業が測定日においてアクセスできる同一の資産又は負債に関する活発な市場において(調整されていない)公表価格です(IFRS13.76)。 活発な市場における公表価格は、公正価値の最も信頼できる証拠を提供し、一定の例外を除いて、入手可能な限り、調整せずに利用しなければなりません(IFRS13.77)。
レベル1のインプットは、多くの金融資産及び金融負債に関して入手可能であり、多数の活発な市場で交換されています。したがって、レベル1の重要点は、以下の点を決定することになります(IFRS13.78)。
- 資産又は負債の主要な市場、もしくは主要な市場が存在しない場合の資産又は負債の最も有利な市場はどれか。
- 企業が測定日に市場における価格で資産又は負債に関する取引を行うことができるかどうか。
なお、企業の商品保有量は、たとえ、市場の通常の日々の取引量が保有されている量を吸収するのに十分でない場合や、1つの取引においてポジションを売却するために注文を発注することが公表価格に影響を与える場合でも、それは公正価値に影響を与えません。企業が単独の資産又は負債のポジション(金融商品の保有しているのと同様、大量の同一の資産又は負債を構成するポジションを含む)を保有する場合で、また、資産又は負債が活発な市場で取引されている場合、資産又は負債の公正価値は、個々の資産又は負債に関する公表価格と企業が保有する量の積として、レベル1の中で測定されなければなりません。
<レベル1の調整の例外>
レベル1のインプットは、原則として調整しませんが、次の場合、例外的に調整が認められます(IFRS13.79)。ただし、これらの調整は結果として分類レベルを下げることがあります。
(i) 個々の資産又は負債に関する価格情報を得ることができない場合
企業が公正価値で測定される同様の(しかし同一ではない)資産又は負債(例えば負債証券)を大量に保有しており、活発な市場における公表価格は入手可能とはなるが、それぞれの資産又は負債に関し個別に容易にアクセスできない場合(つまり、大量の同様の資産又は負債が企業によって保有されており、測定日に個々の資産又は負債の価格情報を得ることが難しい場合である)。
このような場合、実務上の簡便法として、企業は、公表価格にだけ頼ることのない代替的プライシング手法を利用して、公正価値を測定します(例えば、マトリックス・プライシング)。しかし、代替的なプライシング手法の利用は、公正価値測定を公正価値ヒエラルキーの低いレベルに分類する結果となります。
(ii) 測定日における公表価格が公正価値を表していない場合
活発な市場における公表価格が、測定日における公正価値を表示していない場合。
例えば、重要なイベント(当事者間取引市場における取引、ブローカー市場における取引又は公表)が、市場終了後だが測定前に起こる場合があります。企業は、公正価値測定に影響を及ぼすこれらの事象を識別することに関する方針を確立し、整合的に適用しなければなりません。しかし、公表価格は、新しい情報に関して調整される場合、その調整は、公正価値ヒエラルキーのより低いレベルへ分類される公正価値測定の結果となります。
(iii) 負債又は企業自身の資本性金融商品で調整が必要な場合
活発な市場における資産として取引される同一の商品に関する公表価格を使用して、負債又は企業自身の資本性金融商品の公正価値を測定する場合で、その商品又は資産に固有の要因に関して調整されることが必要である場合。
資産の公表価格の調整がまったく要求されない場合、その結果は、公正価値ヒエラルキーのレベル1に分類される公正価値測定となります。しかし、資産の公表価格のどんな調整も、公正価値ヒエラルキーをより低いレベルへ分類された公正価値測定の結果を生じさせます。
3-13.レベル2のインプット
レベル2のインプットは、直接又は間接のどちらであるかを問わず、資産又は負債に関する観察可能であるレベル1に含まられる公表価格以外のインプットです(IFRS13.81)。資産又は負債が特定(契約上)の期間を有する場合、レベル2のインプットは、資産又は負債の実質的に全体の期間にわたり観察可能なものでなければなりません。レベル2のインプットは、次の事項を含みます(IFRS13.82)。
[レベル2のインプット]
- 活発な市場における類似の資産又は負債に関する公表価格。
- 活発ではない市場における同一の又は類似の資産又は負債に関する公表価格。
- 資産又は負債に関する観察可能な公表価格以外のインプットで、例えば、一般的に公表されている間隔で観察される金利及びイールド・カーブ 、インプライド・ボラティリティ、クレジット・スプレッド。
- 市場の裏付があるインプット(相関関係又はその他の手段により観察可能な市場データから主に導き出される、又は裏付けられるインプット(市場の裏付があるインプット))
また、レベル2のインプットへの調整は、資産又は負債に固有の要因により異なります。こうした要因は、次の事項があります。
[レベル2のインプットの調整]
- 資産の状況又は場所
- インプットが資産又は負債と比較可能な項目に関連する範囲(第39項で説明されている要因を含む。)
- インプットが観察可能である市場における活動の量と水準
なお、測定全体にとって重要性があるレベル2のインプットの調整で、当該調整において重要性のある観察不能なインプットを利用する場合、当該公正価値測定額は、公正価値ヒエラルキーのレベル3に分類されることになります(IFRS13.84)。
3-14.レベル2のインプットの例
IFRS第13号付録では、レベル2のインプットの例示を提供しています(IFRS13.B35)。
(i) LIBOR スワップ・レートを基にした固定受け・変動払いの金利スワップ
レベル2のインプットには、LIBORスワップ・レートがスワップの全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能である場合は、当該スワップ・レートが含まれます。
(ii) 外貨建イールド・カーブに基づく固定受け・変動払いの金利スワップ
レベル2のインプットには、実質的にスワップの全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能な外貨建イールド・カーブに基づくスワップ・レートが含まれます。このようなケースとしては、スワップ期間が10年であり、9年までは一般的に公表されている間隔で観察可能であるが、10年目のイールド・カーブの合理的な補外(extrapolation)が、スワップ全体の公正価値にとって重要とはならない場合などです。
(iii) 特定の銀行のプライム・レートに基づく固定受け・変動払いの金利スワップ
レベル2のインプットには、補外値が観察可能な市場データで裏付けられ、例えば、実質的にスワップの全期間にわたり観察可能な金利との相関関係(correlation)によって裏付けられる場合、補外を通じて算出される銀行のプライム・レートが含まれます。
(iv) 3年物の上場株式オプション
レベル2 のインプットには、次のどちらの状況も存在する場合、3年目の補外を通じて算出される株式に関するインプライド・ボラティリティを含みます。
- 1年物株式オプション及び2年物株式オプションの価格が観察可能であり、かつ、
- 3年物オプションの補外によるインプライド・ボラティリティが、実質的にオプションの全期間にわたり観察可能な市場データによって裏付けられる場合
この場合、当該インプライド・ボラティリティは、1年物及び2年物のインプライド・ボラティリティとの相関関係が成り立っていることを前提に、1年物及び2年物の株式オプションのインプライド・ボラティリティからの補外によって算出され、比較可能な企業の株式の3年物オプションのインプライド・ボラティリティによって裏付けられます。
(v) ライセンス契約
レベル2 のインプットには、被取得企業(ライセンス契約の当事者)が直近に非関連当事者と最近交渉を行っていた、企業結合で取得されたライセンス契約に関して、契約の開始時に非関連当事者との契約におけるロイヤルティ料率が含まれます。
(vi) 小売店における完成品の棚卸資産
レベル2のインプットには、企業結合で取得される完成品の棚卸資産に関して、公正価値測定が、必要な販売努力を行うであろう他の小売業者に当該棚卸資産を販売する取引で受け取るであろう価格を反映するように、棚卸資産項目の状態や場所及び比較可能な(類似の)棚卸資産項目における差異に関して調整した、小売市場における顧客への価格、又は卸売市場における小売業者への卸売価格のいずれかが含まれます。概念上、小売価格に(下方の)調整を行おうと、卸売価格に(上方の)調整を行おうと、公正価値測定は、同じです。一般的に、最も少ない主観的な調整額を求める価格が、公正価値測定に用いられなければなりません。
(vii) 所有・使用している建物
レベル2 のインプットには、例えば、同様の所在地の比較可能な(類似の)建物が関係する観察された取引における価格から算出される倍数など、観察可能な市場データから算出される建物1平米当たりの価格(評価倍数)が含まれます。
(viii) キャッシュを生み出す単位
レベル2 のインプットには、例えば、営業、市場、金融又は非金融的要素を考慮に入れた、比較可能な(類似の)事業が関係する観察された取引における価格から算出される倍率など、観察可能な市場データから算出される評価倍率(例えば、利益又は収益の倍率、もしくは同様の業績測定値)があります。
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