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(平成23年5月16日現在)
3-3.非金融資産の評価に関する前提事項
非金融資産の公正価値を測定する場合、市場参加者が最有効使用によって資産を使用するか(by using)又は最有効使用で当該資産を利用するであろう他の市場参加者に売却するか(by selling)のどちらかにより、経済的便益を生み出す市場参加者の能力を考慮します(IFRS13.27)。FASBのFAS157では、「使用による(in-use)」「交換による(in-exchange)」をいう表現をしており、これと同義だと考えられます。
最有効使用は、企業が異なる使用を意図しているとしても、市場参加者の観点から判断されます。ただし、市場又は他の要因によって市場参加者による異なる使用が資産の価値を最大化することを示唆していなければ、非金融資産に対する企業の現在の使用方法が最有効使用であると推定されます(IFRS13.29)。このため、企業が、競争上の理由等により、取得した非金融資産を積極的に使用しない場合であっても、市場参加者による最有効使用を仮定して非金融資産の公正価値を測定する必要があります(IFRS13.30)。
(A) 最有効使用の基本的な考慮事項
非金融資産の最有効使用とは、次のとおり、物理的に可能で(physically possible)、法的に許容され(legally permissible)、財政的に実行可能(financially feasible)となる資産の使用を考慮して決定します(IFRS13.28)。
[最有効使用の考慮事項]
- 物理的に可能である使用は、市場参加者が当該資産の価格を決定する際に考慮するであろう資産の物理的特徴を考慮する(例:不動産の所在地又は規模)。
- 法的に許容される使用は、市場参加者が当該資産の価格を決定する際に考慮するであろう資産の使用に関する法的制限を考慮する(例:不動産に適用される区画制限)。
- 財政的に実行可能である使用は、物理的に可能で、法的に許容される資産の使用により、市場参加者がそうした使用に用いられる資産に対する投資に対して要求するであろう投資リターンを生み出すために適切な利益又はキャッシュ・フロー(資産をそうした使用に転換するコストを考慮に入れる)が生じるかどうかを考慮する。
(B) 他の資産等と合わせて使用されることで最有効使用となる場合(使用価値)
非金融資産が、グループとして他の資産(つまり、使用のために導入又は設置)又は他の資産及び負債(例えば、事業)と合わせて使用されることを通じて、最有効使用となる場合があります(IFRS13.31(a))。この場合、次のことを前提にして評価を行います。
[他の資産等と合わせて使用する場合の評価前提]
- 市場参加者が、当該非金融資産と合わせて使用される他の資産等を入手することが可能であること。
- 資産及び補足的資産に関連する負債は、運転資本として調達した負債を含む。しかし、資産グループ内にある資産以外を調達するために利用された負債は含まない。
- 非金融資産の最有効使用の前提は、当該資産が利用される資産グループ又は資産及び負債グループのすべての(最有効使用が関連している)資産に関して、首尾一貫している。
なお、以下のような場合には、評価前提に影響がでます(IFRS13.B3)。
(i) 他の資産等と合わせて使用する場合でも単独利用でも公正価値が一致する場合
評価対象の資産が継続事業の場合、資産が単独で使用されようと、又は他の資産又は他の資産及び負債と合わせて使用されようとも、資産の公正価値が同じになることがあります。継続事業において資産をグループとして使用することにより、市場参加者が入手できるシナジー効果が生まれるからです。
(ii) 単独利用の資産の評価に対する調整を通じて測定額に織り込まれる場合
基本的に単独使用される資産の価値に対する調整を通じて公正価値測定に織り込まれることがあります。例えば、資産が機械であり、その公正価値測定額が、(使用のために導入又は設置されていない)類似の機械の観察された価格を用いて、(使用のために導入又は設置されている)当該機械の現在の状況や場所を反映するように輸送コストや設置コストについて調整した上で、算定されている場合です。
(iii) 市場参加者の前提を通じて織り込まれる場合
資産の公正価値を測定するために利用される市場参加者の仮定を通して公正価値測定に織り込まれることがあります。例えば、資産が固有の仕掛中の棚卸資産であり、市場参加者が当該棚卸資産を完成品に加工する場合、当該棚卸資産の公正価値は、市場参加者が当該棚卸資産を完成品に加工するために必要な特殊機械を取得している、又は取得するであろうことを仮定しています。
(iv) 評価技法に織り込まれる場合
資産の公正価値を測定する際に用いられる評価技法に織り込まれる場合があります。例えば、無形資産の公正価値を測定するために多期間超過収益法を用いる場合、無形資産が使用されるグループの補完的な資産の寄与度を考慮するからです。
(v) 資産グループの中の資産を使用するといったより限定的な状況
より限定的な状況において、企業は、資産グループの公正価値をグループの個別資産に配分するにあたり、その公正価値に近似する金額で当該資産を測定するかもしれない。評価に実際の不動産が関係しており、改良された(資産グループである)不動産の公正価値が、(土地や改良点など)その構成資産に配分されている場合などがこれに該当する。
(C) 非金融資産を単独で利用する場合(売却価値)
非金融資産の最有効使用が、基本的に単独で、市場参加者に最大限の価値を提供する場合、当該資産の公正価値は、単独で当該資産を使用する市場参加者に当該資産を売却する現在の取引において受取る価格となります(IFRS13.31(b))。
(D) その他の基準で定義されている会計単位との整合性
非金融資産の公正価値測定は、他の基準で定義されている会計単位と整合的に資産が売却されることを仮定しています(個々の資産も含む)。公正価値測定は、市場参加者がすでに補完的資産及び関連する負債を保有していることを仮定しているので、公正価値測定が、当該資産の最有効使用が他の資産又は他の資産及び負債と合わせて使用することであることを仮定としている場合であっても該当します(IFRS13.32)。
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