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(平成23年5月16日現在)
10-1.利息、配当、損失及び利得の取扱い
金融負債である金融商品又はその構成要素に関連した利息(interest)、配当(divident)、損失及び利得(losses and gains)は、 純損益に収益又は費用として認識し、資本性金融商品の保有者に対する分配は、関連する税効果(tax effects)を控除後に資本に直接借方計上しなければなりません。資本取引の費用は、関連する税効果を控除後に、資本からの控除として会計処理します(IAS32.35)。
[資本性金融商品と金融負債の分類による処理]
- 金融負債に関連した利息、配当、損益及び利得 ⇒ 純損益
- 資本性金融商品の保有者に対する分配 ⇒ (税効果を控除後)資本に直接計上
- 資本取引費用 ⇒ 資本から控除
金融商品を金融負債に分類するか資本性金融商品に分類するかにより、その金融商品に関連した利息、配当、 損失及び利得が、純損益に収益又は費用として認識されるかどうかが決まります。したがって、全体が負債として分類された株式に対する配当は、社債に係る利息と同様に費用として認識されます。同様に、金融負債の償還又は再調達に関連した利得又は損失は純損益に認識される一方、資本性金融商品の償還又は再調達は、資本の変動として認識されることになります。資本性金融商品の公正価値の変動は、財務諸表には認識されません(IAS32.36)。
10-2.資本取引(複合金融商品の場合を含む。)
企業は通常、自らの資本性金融商品を発行又は取得する際に種々の費用が発生します(いわゆる、増資などの際の費用)。それらの費用には、登録その他の法的手続の手数料、法律、会計その他の専門的アドバイザーに対する支払額、印刷費及び印紙税などが含まれることがあります。
資本取引(equity transaction)の取引費用は、その資本取引がなければ避けられたであろう資本性金融商品に直接起因する増分費用の範囲で、資本からの控除(関連する税務上の利得を控除後)として会計処理されます。放棄された資本取引の費用は、費用として認識されます(IAS32.37)。
[資本取引の費用か否かのポイント]
- その資本取引がなければ避けられたであろう資本性金融商品に直接起因する増分費用。
なお、複合金融商品の発行に関連する取引費用は、負債部分と資本部分とに入金額の配分に比例して配分されます。複数の取引に合同で関連する取引費用(例えば、一部の株式の公募と他の株式の上場とを同時に行う際の費用)は、合理的で同様の取引と首尾一貫した配分基準により、それらの取引に配分されます(IAS32.38)。
IFRSでは、複合金融商品に関する例示が提供されています(IAS32.AG37)。
【優先株式の具体例】
非累積型(non-cumulative)の優先株式が5年以内に現金で強制的に償還されるが、償還日前の配当の支払は企業の自由裁量によるものと仮定する。このような金融商品は複合金融商品であり、負債部分は償還金額の現在価値である。この構成部分の割引の戻しは、純損益に認識され、支払利息に分類される。支払われた配当は、資本部分に関連しており、したがって、損益の分配として認識される。
同様の取扱いは、償還が強制でなく保有者が選択できる場合、又は固定金額もしくは基礎変数(例えば、コモディティ)の変動に基づく金額と等しくなるように計算された可変数の普通株式に当該株式が強制的に転換される場合に適用されます。しかし、未払配当が償還金額に加算される場合には、当該金融商品の全体が負債となりますので、配当はすべて支払利息として会計処理されます。
なお、当期に資本からの控除として会計処理された取引費用の金額は、IAS第1号に基づいて区分して開示されます。資本に直接認識された関連する法人税額は、IAS第12号「法人所得税」に基づいて開示される、資本の貸方又は借方に計上される当期税金及び繰延税金の総額に含められます(IAS32.39)。
10-3.利息、配当などの開示
費用として分類された配当は、 包括利益計算書又は分離損益計算書において、他の負債に係る利息とともに表示しても、独立項目として表示してもよいこととされています。本基準の定めに加えて、利息及び配当の開示は、 IAS第1号及びIFRS第7号の定めに従います。場合によっては、例えば、税務上の損金算入に関して利息と配当との間に差異があるといった理由から、包括利益計算書又は(作成している場合には)分離した損益計算書において、それらを区分して開示することが望ましいと考えられます。なお、税効果の開示は、IAS第12号に従って行われます(IAS32.40)。
金融負債の帳簿価額の変動に関連する利得及び損失は、現金又は他の金融資産と交換に企業の資産に対する残余持分に対する権利を含んだ金融商品に関連している場合であっても、純損益に収益又は費用として認識されます。IAS第1号によれば、企業は、このような金融商品の再測定により生じる利得又は損失が、企業の業績を説明する際に関連性がある場合には、包括利益計算書に区分して表示します(IAS32.41)。
[開示のまとめ]
- 費用として分類された配当 ⇒ 包括利益計算書で他の利息に含めても独立表示でもよい
- IAS第1号ないしIFRS第7号の開示規定に従う。
- 税効果はIAS第12号の規定に従う。
- 金融商品の再測定により生じる利得又は損失 ⇒ IAS第1号に従い、包括利益計算書に区分表示
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