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(平成23年5月16日現在)
1.当初認識
企業は、金融商品の契約条項の当事者になった場合に、かつ、その場合にのみ、金融資産及び金融負債を財政状態計算書に認識しなければなりません(当初認識:initial recognition)。また、企業は、金融資産及び金融負債を最初に認識する際にIFRS第9号に定める分類及び測定方法にしたがって会計処理しなければなりません(IFRS9.3.1.1)(分類及び測定方法については後述)。
債権や有価証券といったものだけでなく、デリバティブによる契約上の権利及び義務のすべてについても、財政状態計算書にそれぞれ資産及び負債として認識します。ただし、金融資産の認識の中止の要件を満たさない場合のその原因となったデリバティブ(買戻オプションなど)については、デリバティブとして認識しません(認識の中止の要件を満たさない場合、継続的関与が認められる場合の会計処理については後述)。
[当初認識]
- 金融商品の契約条項の当事者になった場合(、かつその場合にのみ)、金融資産と金融負債を認識。
- IFRS第9号の分類及び測定基準に従って会計処理。
- デリバティブもすべて認識(金融資産の認識の中止の要件を満たさない原因となったものを除く)
当初認識の適用例として、IFRS第9号で紹介されています(IFRS9.B3.1.1)。
(i) 契約上の無条件の法的権利ないし法的義務を有したとき
無条件の債権及び債務は、企業が契約の当事者になり、その結果、現金を受け取る法的権利又は現金を支払う法的義務を有した時に、資産又は負債として認識されます。
(ii) 発注時点で認識しないこと
財貨又はサービスを売買する確定約定の結果として取得すべき資産又は負うべき負債は少なくとも当事者の一方がその契約による履行を行うまで、一般的に認識されません。例えば確定注文を受けた企業は、一般に契約時には資産を認識せず(発注した企業も負債を認識せず)、注文された財貨又はサービスが出荷、引渡し又は提供されるまで認識を延期します。ただし、非金融商品項目の売買契約が金融商品会計基準の適用範囲に含まれる場合には、その正味の公正価値が契約日に資産又は負債として認識されます(下記(c)参照)。さらに、これまで未認識だった確定約定が公正価値ヘッジのヘッジ対象に指定された場合には、ヘッジされたリスクに起因するヘッジ開始後の正味の公正価値の変動は、資産又は負債とした認識されます。
(iii) 先渡契約の契約日に認識(デリバティブなので)
本基準の範囲に含まれる先渡契約は、決済が行われた日ではなく、契約日に資産又は負債として認識されます。企業が先渡契約の当事者となる時点では、その権利と義務の公正価値が等しく、先渡契約の正味公正価値がゼロであることが多いです。権利と義務の正味の公正価値がゼロでない場合には、その契約は資産又は負債として認識されます。
(iv) オプションは契約日に認識(デリバティブなので)
本基準の範囲に含まれるオプション契約は、買手又は売手が契約の当事者となった時に、資産又は負債として認識されます。
(v) 計画されているだけでは認識しない
計画されている将来の取引は、たとえどれだけ可能性が高くても、企業が契約の当事者になっていないので、資産及び負債ではありません。
2.通常の方法による売買とは
通常の方法による売買(regular way purchase or sale)とは、関係する市場における規則又は慣行により一般に定められている期間内での資産の引渡しを要求する契約による、金融資産の購入又は売却をいいます(IFRS9.Appendix A)。契約の価値の変動について純額決済を強制又は許容する契約は、通常の方法による契約ではありません。このような契約は、先渡契約と考えられるので、取引日から決済日までの期間においてはデリバティブとして会計処理されます(IFRS9.B3.1.4)。
金融資産の通常の方法による売買は、適宜、取引日(約定日)会計又は決済日(受渡日)会計により、認識及び認識の中止を行います(IFRS9.3.1.2)。
企業は、IFRS基準に従って同じ方法で分類されている金融資産のすべての購入及び売却について、同じ方法を適用しなければなりません。つまり、償却原価で測定するものとして分類された金融資産を取引日会計で処理するとした場合には、償却原価で測定するものとして分類された金融資産のすべてが取引日会計で処理することになります。なお、”強制的に”純損益を通じて公正価値で測定される資産と純損益を通じて公正価値を測定するものとして指定された資産とは別の分類です。また、その他の包括利益を通じて認識する公正価値で測定する資本性金融商品に対する投資も、独立の分類を構成します(IFRS9.B3.1.3)(金融資産の分類の種類については、後述)。
[通常の方法による売買]
- 契約の価値の変動について純額決済を強制又は許容する契約は、先渡契約。
- 取引日会計と決済日会計のどちらかを適用
- 金融資産の分類ごとに取引日会計もしくは決済日会計を適用する(個々の金融商品ごとには適用しない)
取引日会計と決済日会計とは以下のとおりです。
(A) 取引日会計(IFRS9.B3.1.5) trade date accouting
取引日(trade date)とは、企業が資産を購入又は売却することで確約した日のことです。取引日会計とは(a)受け取るべき資産とそれに対する支払うべき負債の認識を取引日に行うこと、及び(b)売却する資産の認識中止、処分による利得又は損失の認識及び買手に対する債権の認識を取引日に行うことをいいます。一般に、資産及び対応する負債に係る利息は、所有権移転する決済日までは発生しません。
(B) 決済日会計(IFRS9.B3.1.6) settlement date accouting
決済日(settlement date)とは、資産が企業に引き渡される日又は企業が資産を引き渡す日のことです。決済日会計とは(a)資産を企業が受け取った日に認識すること及び(b)資産の認識の中止及び処分による利得又は損失の認識を企業が引渡した日に行うことをいいます。決済日会計が適用される場合には、企業は、取引日から決済日までの期間における受け取るべき資産の公正価値の変動を、取得した資産の会計処理と同じ方法で会計処理します。すなわち、価値の変動は償却原価で測定する資産については認識されず、公正価値で測定する資産については公正価値で測定し、純損益もしくはその他の包括利益を認識することになります。
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