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IFRS金融商品会計基準における認識及び認識の中止(総論)

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(平成23年5月16日現在)

はじめに― IFRS金融商品会計基準の「認識」の総論

 会計について考える際に、事象の発生⇒認識⇒測定⇒開示(報告)という流れで会計理論を考えることは重要です。金融商品会計基準だけでなく、すべての会計基準についても言えることです。

 金融商品における「認識」という論点は、「法的所有権」と「経済的価値の所有者(損益の帰属者)」という2つの立場が乖離する可能性が多く発生します。現代の会計理論は、所有権の有無だけで認識を行うほど単純な会計原理を採用していません。「法的所有者⇒財政状態計算書への計上」、「法的所有者でない⇒財政状態計算書へ計上しない」という単純な会計処理ができないため、理解が難しい分野と言えます。

 また、金融技法の代表例である「証券化」といったオフバランス・ファイナンスが開発されたことに伴い、価値の毀損している資産をオフバランス処理できてしまう可能性や、負債比率を高めることなく資金調達ができる可能性、含み損益を発生させることができる可能性が顕在化したことで、金融商品の認識(認識の中止)の論点の理解が重要となってきています。

 

 IFRSでは、こうした認識及び認識の中止に関してIAS第39号で詳細に規定することで最初解決を図っていました。しかし、FASBとのコンバージェンスを含めた金融商品会計基準の大幅改訂の一環として、2009年3月にIASBより公開草案「認識の中止」が公表され、幅広く議論されました。当初予定では新基準であるIFRS第9号への移行に際して、認識の中止についても改訂されたものが移行される予定でした。

 ところが、認識の中止については多くの解決すべき問題があったため整理に時間がかかり、また、減損やヘッジ会計といったその他の論点に関する議論も早急に行う必要があったことから、結論を出すことをやめ、IAS第39号の基準をそのままIFRS第9号へ移行することで解決しました。金融商品の認識及び認識の中止における基準は、2010年10月のIFRS第9号改訂で移行されています。今後も認識の中止について議論が続くものと考えられますが、現時点では「IAS第39号をそのまま移行する」という1つの結論が出たという形になっています。

 

 IFRSにおける認識及び認識の中止は、以下のような論点について順次解説していきます。

 

1.当初認識
2.通常の方法による取引
3.「認識の中止」におけるフローチャート
4.金融資産の中止は連結レベル
5.認識の中止の基準を適用するための範囲の決定
6.キャッシュ・フローを受取る契約上の権利の消滅
7.IFRSに定める金融資産の「譲渡」の要件

 7-1.IFRSに定める金融資産の「譲渡」の要件

 7-2.証券化におけるパススルー要件
8.所有に係るリスクと経済価値の移転の判定
9.「支配」による判定
10.金融資産の認識の中止に係る会計処理
 10-1.認識の中止の要件を満たす譲渡の場合の会計処理
 10ー2.認識の中止の要件を満たさない譲渡
 10-3.継続的関与における会計処理
 10-4.継続的関与における会計処理(設例)
11.すべての譲渡に共通する事項
12.金融負債の認識の中止
 12-1.法的債務における金融負債の認識の中止
 12-2.著しく異なる条件による金融負債の認識の中止
13.金融資産と金融負債の相殺
 13-1.金融資産と金融負債の会計処理について
 13-2.相殺権の有無と相殺する意図
 13-3.相殺が不適切なケース
 13-4.マスターネッティング契約
 13-5.公開草案「金融資産と金融負債」の相殺

 

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