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(平成22年12月31日現在)
11.認識および測定 -適用例-
「10.認識および測定 -原則-」における認識および測定の原則の適用例と見積りの使用例がIAS第34号のAppendixのB、Cにおいて紹介されています。主なものは、下記のとおりです。
<認識及び測定の原則の適用例>
● 雇用主負担の法定福利費と保険拠出金
雇用主負担の法定福利費又は政府所管の保険基金への拠出金が、年次基準で課されるときは、たとえ支払の大部分が事業年度の初期に行われるとしても、雇用主負担の費用は、中間期間では法定福利費又は拠出金の見積平均負担年率によって認識します。(IAS34.B1)
● 予定された定期的大修繕または検査
その年度の終わりの頃に発生すると見込まれる予定された定期的大修繕若しくは検査、又は他の季節的支出のコストに対しては、事象が発生して企業に法的又は推定的債務が発生したのでない限り、中間報告目的上、見越計上されることはありません。(IAS34.B2)
● 引当金
引当金の認識及び測定の規準は事業年度末と同様です。すなわち、法的又は推定的債務を生じさせた事象の結果として、経済的便益を移転する以外に現実的な選択肢が企業にない場合には引当金が認識し、その後企業の最善の負債見積額に変更が生じた場合には、債務の額を上下に修正し、対応する損失又は利得を純損益に認識します。(IAS34.B2、B3)
● 年度末ボーナス
ボーナスが法的債務、又は過去の慣行によって企業には支払をする以外には現実的な選択肢がない推定的債務となっていて、かつ、その債務に対して信頼できる見積りが可能であるならば、中間期末においてもボーナスは見越計上しなければなりません。(IAS34.B5、B6)
● 変動リース料
リース契約に、借手の年間売上が一定水準に達したときは変動リース料が支払われるという条項があり、その一定水準の売上が達成されると予測され、それゆえに企業にとって将来の外に現実的な選択肢がない場合には、事業年度の中間期に年間売上が定められた水準に達する前であっても、法的又は推定的債務として負債認識します。(IAS34.B7)
● 無形資産
無形資産の定義と認識規準を中間期間に対しても年次期間と同じ方法で適用します。すなわち、無形資産の認識規準が満たされる前のコストは費用として認識し、規準が満たされることとなった特定の時点後のコストは、無形資産の取得原価の一部として認識します。そのため、同じ事業年度内の後日に認識規準が満たされるであろうという希望によって中間財政状態計算書でコストを「繰り延べる」ことは正当化されません。(IAS34.B8)
● 年金
中間期間の年金コストは、前事業年度末に保険数理的に決定された年金コスト率を使用して年初からの累積基準で計算します。ただし、前年度末後の重要な市場変動及び重要な縮小、清算又はその他の重要な一時的な事象に関して調整を行う必要があります。(IAS34.B9)
● 休暇、休日、その他の短期有給休暇手当
年次報告期間の末日と同様に、累積有給休暇の場合は、報告期間の末日に累積している未使用の権利日数に対する支払予測額によって、累積有給休暇に関する債務のコストを測定し、非累積型の有給休暇の場合は、有給休暇取得時にコスト認識します。(IAS34.B10)
● 予定されているが不規則に発生するその他の費用
企業の予算には、慈善寄付金、従業員研修費等の、その事業年度中に不規則に発生すると予測される費用が含まれる場合があります。
これらの費用は予定されており、かつ、毎年繰り返し発生する傾向のものでありますが、一般的には任意のものと考えられます。そのため、このような未だ発生していない費用について、中間報告期間の末日に債務を認識することはできません。(IAS34.B11)
● 所得に対する中間税金費用の測定
中間期間の税金費用は、中間財務報告書では年次財務諸表で適用されるのと同じ会計上の認識と測定の原則が適用されなければならないという基本原則に基づき、年間の見積利益総額に適用される税率、すなわち、中間期間の税引前利益に適用される見積平均年次実効税率を用いて計上します。
見積平均年次税率は、年間の利益に対して適用されると予測される累進税率を平均したものであり、当該事業年度末に施行又は実質的に施行される予定となっている税率の変更をも考慮に入れたものになり、その後の中間期末ごと、年初からの累積期間基準で再見積りします。
さらに、実務的な範囲内で、見積平均年次実効税率は租税区域ごとに決定され、租税区域ごとの中間税引前利益に対して個別に適用し、同様に、利益の種類が異なるごとに(キャピタル・ゲイン又は特定の業種での利益など)異なる税率が適用される場合には、実務的な範囲内で、中間税引前利益の個々の種類ごとに、別々の税率を適用します。ただし、もし個別の税率を使用した場合の結果に比して合理的な近似値となるものであれば、各租税区域全体又は各種利益全体の加重平均税率が用いることもできます。(IAS34.B12,B13,B14)
● 税額控除
税額控除は、見積年次実効税率を計算する際に考慮に入れます。
ただし、1回限りの事象に関係する税額控除は、当該中間期間の税金費用の計算において認識されます。(IAS34.B19)
● 税務上の欠損金または税額控除の繰戻しおよび繰越し
税務上の欠損金繰戻しによる便益は、当該税務上の欠損金が発生した中間期間に計上します。また、IAS第12号「法人所得税」の規準は各中間期末にも適用され、もし規準が満たされれば、税務上の欠損金繰越しの税効果は、見積平均年次実効税率の計算上考慮されます。(IAS34.B20, B21)
● 契約または予測される購入価格の変更
取扱数量に基づくリベート、割引及び原材料、労賃、あるいはその他の購入商品とサービスの価格の契約による変更は、それらが稼得されるか実行される可能性がかなり大きければ、支払側と受取側の両方によって、中間期間に見越計上されます。一方、任意のリベート及び割引の場合は、見越計上はされません。(IAS34.B23)
● 減価償却費及び償却
中間期間の減価償却及び償却は、当該中間期間の間に所有した資産のみに基づき、当該事業年度中の後の期間に予定されている資産の取得又は処分を計算に入れてはいけません。(IAS34.B24)
● 棚卸資産
棚卸資産は、中間財務報告上は事業年度末と同じ原則で測定されます。
ただし、時間と費用とを節約するために、企業は、棚卸資産を測定するうえで、中間期末にしばしば年次報告期間の末日よりも広い範囲で見積りを使用する場合があるとされています。また、企業は、事業年度末に過去の評価下げを正味実現可能価額まで戻入れすることが適切である場合にのみ、評価下げを行った後の中間期間において戻入れを実施します。(IAS34.B25,B26)
● 中間期間の製造原価差額
製造業を営む企業の価格、能率、消費及び数量差異は中間報告日においても事業年度末に損益に計上されるのと同じ範囲で損益に計上されます。
年度末までに吸収されると予測される原価差額でも繰り延べることは、中間期末の棚卸資産を実際原価よりも多く又は少なく報告することになるため適切ではありません。(IAS34.B28)
● 外貨換算差損益
中間財務報告上、外貨換算差損益は事業年度末と同じ原則で測定されます。
換算修正額が当該事業年度末までに戻入れされると見込まれていても、中間期末に外貨換算修正額を繰り延べません。(IAS34.B29,B30,B31)
● 超インフレ経済下の中間財務報告
超インフレ経済下の中間財務報告書は、事業年度末に用いられる原則と同じ原則に基づいて作成されます。すなわち、超インフレ経済下の通貨で報告する企業の中間財務諸表は、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」に従い、中間期末現在の測定単位で表示しなければならず、正味貨幣持高に関する利得又は損失は、中間期間の純利益に計上されるとともに、過去の期に報告された比較財務データも現在の測定単位で修正再表示されます。当該利得又は損失を年換算したり、超インフレ経済下の中間財務報告書作成にあたり、インフレーションの見積年率を使用することもありません。(IAS34.B32,B33,B34)
● 資産の減損
IAS第34号は、中間期間における減損テスト、認識、及び戻入規準を事業年度末と同じようにIAS第36号「資産の減損」を適用することを求めています。しかし、このことは企業が毎中間期末ごとに詳細な減損のための計算を必ず実施しなければならないということを意味するものではなく、むしろ、企業は、直前の事業年度以降の重要な減損の兆候を検討し、そのような計算が必要であるか否かを決定することを求めています。(IAS34.B35,B36)
<見積りの使用例>
● 棚卸資産
全数量の棚卸及び評価の手続は、事業年度末には行われるかもしれないが、中間期末の棚卸資産には必ず必要とは限らず、場合によっては中間期末では、売上マージンに基づいて見積りを行えば十分だと考えられます。(IAS34.C1)
● 資産及び負債の流動又は非流動の分類
中間期末では、年次報告日ほど資産及び負債の流動又は非流動の分類のための調査を徹底して行う必要はないかもしれません。
● 引当金
適切な額の引当金(保証、環境保全、用地修復のための引当金など)の算定は複雑で、しばしば費用と時間を要する場合があるため、年次計算においては外部の専門家に委託することもありますが、中間期末における見積りは、前年度の引当額の更新によることが多いと考えられます。
● 年金
IAS第19号「従業員給付」では、企業が各報告期間の末日に確定給付年金債務の現在価値と基金資産の市場価値とを算定することを求めるとともに、企業に債務の測定のために専門家として資格のある保険数理人と共働することを勧奨していますが、中間報告の目的上は、直近の数理評価からの推計によって信頼できる測定が得られることが多いと考えられます。
● 法人所得税
さらに、実務的な範囲内で、見積平均年次実効税率は租税区域ごとに決定され、租税区域ごとの中間税引前利益に対して個別に適用し、同様に、利益の種類が異なるごとに(キャピタル・ゲイン又は特定の業種での利益など)異なる税率が適用される場合には、実務的な範囲内で、中間税引前利益の個々の種類ごとに、別々の税率を適用します。ただし、もし個別の税率を使用した場合の結果に比して合理的な近似値となるものであれば、各租税区域全体又は各種利益全体の加重平均税率が用いることもできます。
企業は事業年度末には、税金費用と繰延税金負債を、個別の租税区域ごとの所得の額に各区域ごとの税率を適用して計算した方が望ましいですが、一方ではすべての場合にそれが達成可能であるとは限らないため、もし個別の税率を使用した場合の結果に比して合理的な近似値となるものであれば、各租税区域全体又は各利益区分全体の加重平均税率が使用することが認められています。
● 偶発事象
偶発事象の測定には、法律専門家又は他のアドバイザーの意見を必要とする場合があります。このような意見は、年度末のみ入手すれば十分かもしれません。
● 再評価及び公正価値会計
有形固定資産や投資不動産について、会計方針として公正価値モデルを採用している場合、公正価値の設定のために、企業は、年次報告日には資格ある職業的評価人に依拠するかもしれませんが、中間報告日にはそうはしない場合があります。
● 連結会社間の調整
事業年度末に連結財務諸表を作成する際に詳細に調整される連結会社間の残高の中には、中間期末日現在の連結財務諸表の作成に際してはそれほど詳細な調整が行われないものもあると考えられます。
● 特別の業種
保険会社の保険準備金のように特別の業種における中間期間の測定は、その複雑性、費用や時間的制約の観点から事業年度末よりも精密度が低いかもしれません。
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