株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

IAS第38号「無形資産」(認識・当初の測定 4/4)

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(平成22年12月31日現在)

8.認識・当初の測定 -自己創設のれん-

自己創設のれん(internally generated goodwill)を資産として認識してはなりません(IAS38.48)。

自己創設のれんは、信頼性をもって原価で測定できるような、企業が支配する識別可能な資源ではないことから(例えば、分離可能でも契約その他の法的権利から生じたものでもない)、資産として認識されません(IAS38.49)。企業の市場価値を企業の識別可能な純資産の帳簿価額との間の差異は、自己創設のれんが企業の価値に影響を与える一定範囲の諸要因を捉えているかもしれませんが、このような差異は、企業が支配している無形資産の原価を表していているわけではありません(IAS38.50)。

9.認識・当初の測定 -自己創設無形資産-

自己創設無形資産は、下記のような問題から資産認識規準の充足が困難な場合があります(IAS38.51)。

 

期待する将来の経済的便益を生成する識別可能資産が存在するかどうか、またそれがいつ存在するかを識別することに関する問題
資産の取得原価を信頼性をもって決定することに関する問題

 

そこで、IAS第38号では、無形資産の認識および当初測定に関する一般的な定めを規定するとともに、自己創設無形資産の創出過程を「研究局面(research phase)」と「開発局面(development phase)」に分類し、それぞれ認識規準の充足の有無について定めています(IAS38.52)。

なお、研究局面と開発局面とを区別することができない場合、企業は支出の全てを研究局面において発生したものとして処理します(IAS38.53)。

 

また、内部で創出される、ブランド、題字、出版表題、顧客名簿および実質的にこれらに類似する項目は、無形資産として認識してはなりません(IAS38.63)。

内部で創出される、ブランド、題字、出版表題、顧客名簿および実質的にこれらに類似する項目に関する支出は、事業を全体として発展させる原価と区分することは不可能であるためです(IAS38.64)。

 

 

<認識 -研究局面->


研究(research)」とは、新規の科学的・技術的な知識および理解を得る目的で実施される基礎的・計画的調査をいいます(IAS38.8)。

 

研究活動の例としては、下記のものが挙げられます(IAS38.56)。

新知識の入手を目的とする活動
研究成果または他の知識の応用の調査、評価および最終的選択
材料、装置、製品、工程、システム、サービスに関する代替的手法の調査
新規または改良された材料、装置、製品、工程、システム、サービスに関する有望な代替的手法等についての定式化、設計、評価および最終的選択

 

研究(または内部プロジェクトの研究局面)から生じた無形資産は、認識してはいけません。研究(または内部プロジェクト局面)に関する支出は、発生時に費用として認識しなければなりません。(IAS38.54)

企業は、将来の経済的便益を創出する可能性が高い無形資産の存在を立証することができないためです(IAS38.55)。

 

 

<認識 -開発局面->


開発(development)」とは、商業ベースの生産または使用の開始前における、新規または大幅に改良された材料、装置、製品、工程、システム、サービスによる生産のための計画・設計への研究成果・知識の応用をいいます(IAS38.8)。

 

開発活動の例としては、下記のものが挙げられます(IAS38.59)。

生産または使用する以前の試作品

モデルに関する設計、建設およびテスト

新規の技術を含む工具、治具、鋳型および金型の設計
商業生産を行うには十分な採算性のない規模での実験工場の設計、建設および操業・新規のまたは改良された材料、装置、製品、工程、システムまたはサービスに関して選択した代替的手法等についての設定、建設およびテスト

 

開発(または内部プロジェクトの開発局面)から生じた無形資産は、企業が次のすべてを立証できる場合に限り資産として認識しなければなりません(IAS38.57)。

 

使用または売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
無形資産を完成させ、さらにそれを使用または売却するという企業の意図
無形資産を使用または売却できる能力

無形資産が蓋然性の高い将来の経済的便益を創出する方法 ※1

(無形資産による産出物または無形資産それ自体の市場の存在あるいは無形資産を内部で使用する予定である場合には、無形資産が企業の事業に役立つことを立証しなければなりません)

無形資産の開発を完成させ、さらにそれを使用または売却するために必要となる適切な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能※2

開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性もって測定できる能力 ※3

 

※1 

無形資産の将来の経済的便益を創出する可能性の高さを立証するため、企業は、IAS第36号「資産の減損」における原則に基づき、資産から受領することになる将来の経済的便益を査定します。資産が将来他の資産と一体となってのみ経済的便益を創出する場合は、同基準の資金生成単位の考え方を採用します(IAS38.60)。

 

※2 

無形資産を完成させ、使用し、それから便益を入手するのに必要となる資源の入手可能性は、例えば、技術上、財務上およびその他の資源を示す事業計画、およびこれらの資源を確保する企業の能力により、立証することができます。 融資先から当該計画への融資承諾書を受領して外部資金の利用可能性を立証するなどの事例もあります(IAS38.61)。

 

※3

企業の原価計算システムにより、著作権またはライセンスを保護するため、あるいはコンピュータソフトウェアを開発するために生じる、給料およびその他の支出のような、内部で創出される無形資産の取得原価を信頼性をもって測定できることが多いと考えられます。

 

 

<測定> 


自己創設無形資産は、当該無形資産が認識規準を最初に満たした日以降に発生する支出の合計である取得原価で測定されます(IAS38.65)。

 

自己創設無形資産の取得原価は、その資産の生成、製造およびその資産を経営者が意図する方法により操業可能とするための準備に必要な、直接起因するすべての原価から構成されます。

 

【直接起因する原価】 

直接起因する原価の例として、次のもの挙げられています(IAS38.66)。

・無形資産を創出する上で使用または消費した材料およびサービスに関する原価

・無形資産の創出から生じる従業員給付の原価

・法的権利を登録するための手数料

・無形資産を創出するために用いられる特許およびライセンスの償却

また、IAS第23号「借入費用」は、自己創設無形資産の原価の要素として利息を認識するための要件を定めています。

 

【原価に含めてはいけない支出・費用】 

以下のものは、自己創設無形資産の取得原価に含めてはいけません(IAS38.67)。

・販売、管理およびその他一般の間接的支出(ただし、この支出が資産の使用のめの準備に直接起因する場合を除く)

・識別された非能率ロスおよび資産が計画した稼働に至るまでに発生した当初の操業損失

・資産の操業に必要な職員の訓練に関する支出

 

なお、過去に費用として認識した支出を戻し入れることは禁止されています(IAS38.65)。

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