現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。
(平成23年1月31日現在)
1.目的
IAS第10号「後発事象」の目的は、次のことを定めることにあります(IAS10.1)。
・企業は後発事象について、どのような場合に財務諸表を修正しなければならないか
・財務諸表の公表が承認された日及び後発事象に関して企業が行わなければならない開示
また、本基準は、後発事象が継続企業の前提が適切でないことを示す場合には、企業は、継続企業ベースで財務諸表を作成してはならないことを規定しています。
2.範囲
IAS第10号「後発事象」は、後発事象に関する会計処理及び開示に際して適用しなければなりません(IAS10.2)。
3.後発事象の定義
「後発事象(events after the reporting period)」とは、報告期間の末日と財務諸表の公表の承認日との間に発生する事象で、企業にとって有利な事象と不利な事象の双方をいいます(IAS10.3)。
後発事象は、次の2種類の事象に分類できます。
① 修正を要する後発事象(adjusting events after the reporting period)
報告期間の末日に存在した状況についての証拠を提供する事象をいいます。
② 修正を要しない後発事象(non-adjusting events after the reporting period)
報告期間後に発生した状況を示す事象をいいます。
財務諸表の公表を承認するプロセスは、経営組織、法的要請及び財務諸表の作成と最終決定の手続によって異なります。
場合によっては、企業は、財務諸表が公表された後に、株主総会にその承認を求めて提出しなければならないこともあります。そのような場合には、財務諸表は、株主総会での承認日ではなく、その前に公表が承認された日が、財務諸表の公表の承認日になります。
また、場合によっては、企業の経営者がその財務諸表を監督機関(supervisory board;経営執行者以外の者のみによって構成される)に提出して承認を受けなければならないことがあります。そのような場合には、経営者が監督機関に提出することを承認した日が、財務諸表の公表の承認日になります。(IAS10.4,5,6)
なお、後発事象には、たとえ利益又はその他の抜粋された財務情報の公表後に発生したものであっても、財務諸表の公表が承認される日までのすべての事象が含まれる点に注意が必要です(IAS10.7)。
4.認識及び測定
<修正を要する後発事象>
企業は、修正を要する後発事象を反映させるよう、財務諸表において認識された金額を修正しなければなりません(IAS10.8)。
【修正を要する後発事象の例】
例えば、下記のような事象は、財務諸表において認識された額の修正又は以前に認識されていなかった項目の認識が必要となります(IAS10.9)。
① | 報告期間の末日においてすでに企業が現在の債務を有していたことを証明することになる、報告期間後における訴訟事件の解決 | |
企業は、この訴訟事件に関しIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従って従前に計上していた引当金を修正する、又は新しい引当金を認識します。訴訟事件の解決は、現在の債務を生じさせているか否か(IAS37.16)の追加の証拠を提供することになるため、企業は単に偶発負債を開示することにはなりません。 | ||
② | 報告期間の末日においてある資産がすでに減損していたこと,あるいはその資産に対してすでに認識されていた減損損失を修正する必要があることを示すl青報の報告期間後の入手 | |
例えば、報告期間後に発生する顧客の倒産は、通常、報告期間の末日に債権勘定に損失が存在していたこと及び企業か債権勘定の帳簿価額を修正する必要があることを示唆したり、報告期間後における棚卸資産の販売は、報告期間の末日の正味実現可能価額について証拠を提供するかもしれません。 | ||
③ | 報告期間の末日前に行われた資産の購入又は売却についての、購入原価又は売却価額の報告期間後における決定 | |
④ | 企業が報告期間の末日以前の事象の結果として,利益分配又はボーナスの支払を行う法的又推定的債務を貸借対照表日時点で有していた場合の、そのような支払金額の報告期間後における決定(IAS第19号「従業員給付」参照) | |
⑤ | 財務諸表が誤っていたことを示す不正又は誤謬の発見 |
<修正を要しない後発事象>
企業は、財務諸表において認識した金額に対して、修正を要しない後発事象を反映するように修正してなりません(IAS10.10)。
【修正を要しない後発事象の例】
例えば、修正を要しない後発事象の例としては、貸借対照表日と財務諸表の公表が承認される日との間に発生した投資の市場価値の下落がああります。市場価値の下落は、貸借対照表日における投資の状況とは通常関連しておらず、その後に発生した状況を反映しています。
したがって、企業は、当該投資について財務諸表において認識した金額を修正してはなりません(IAS10.11)。
<配当>
企業が、資本性金融商品(IAS第32号「金融商品:表示」で定義されている)の所有者に対する配当を報告期間後に宣言する場合には、企業は当該配当金を報告期間の末日時点の負債として認識してはなりません(IAS10.12)。
当該配当は,、IAS第1号に従って財務諸表の注記で開示されます(IAS10.13)。
5.継続企業の前提
ある企業の経営者が報告期間後に、その企業の清算又は営業の停止をする方針を決定するか、もしくはそうする以外に現実的に代替案がないと判断した場合には、その企業は、継続企業ベースで財務諸表を作成してはなりません(IAS10.14)。
継続企業の前提がもはや適切でない場合には、その影響が広範にわたるため、本基準では、当初の会計処理基準の枠内で認識された金額に対する修正ではなく、会計処理基準の根本的変更を要求しています(IAS10.15)。
なお、IAS第1号号「財務諸表の表示」は、次の場合において要求される開示事項を規定します。
① | 財務諸表が継続企業ベースで作成されていない場合 |
② |
経営者が、当該企業の継続企業としての存続能力に対して重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関係する重要な不確実性に気付いている場合(開示を要求する事象又は状況が、報告期間後に発生する場合もあります) |
6.開示
<公表承認日>
企業は財務諸表の公表の承認日及び誰がその承認を行ったかを開示しなければなりません(IAS10.17)。
企業の所有者その他の者が財務諸表を公表後に修正する権限を有している場合には、企業はその旨を開示しなければなりません(IAS10.17)。
財務諸表は,財務諸表公表の承認日後の事象を反映していないため,当該財務諸表の公表がいつ承認されたかを知ることは,財務諸表利用者にとって重要なためです(IAS10.18)。
<報告期間の末日の状況においての開示の更新>
企業が、報告期間後において、報告期間の末日に存在した状況について情報を得た場合には、新しい情報に鑑みて、その状況に関する開示を更新しなければなりません(IAS10.19)。
状況によっては、企業が報告期間後に得た情報がその財務諸表上で認識した金額に影響を与えない場合であっても、その情報を反映させるために財務諸表における開示を更新することが必要な場合があります。開示の更新の必要がある例としては、報告期間の末日に存在した偶発負債について報告期間後に関連する証拠が入手可能になった場合が挙げられます。この場合は、企業は、当該新たに人手した証拠に照らして、IAS第37号による引当金を認識又は変更すべきか否かの検討を行うとともに、偶発負債についての開示を更新しなければなりません(IAS10.20)。
<修正を要しない後発事象>
修正を要しない後発事象が重要である場合には、それを開示しないことは財務諸表利用者が行う経済的判断に影響を与える可能性があります。そのため、企業は、修正を要しない後発事象の重要なカテゴリーごとに、次の事項を開示しなければなりません(IAS10.21)。
① 当該事象の性質
② 財務的影響の見積り、又はそのような見積りが不可能である旨の記述
一般的に開示されることになる修正を要しない後発事象の例としては次のものがあります。
・ | 報告期間後の主要な企業結合(IFRS第3号「企業結合」は、そのような場合の開示を要求している)、又は主要な子会社の処分 |
・ | 事業を継続しないという計画の公表 |
・ | 主要な資産の購入、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従った売却目的保有への資産の分類、資産のその他の処分、又は主要な資産の政府による収用 |
・ | 報告期間後の火災による主要生産設備の損壊 |
・ | 重要なリストラクチャリングの発表又は着手(IAS第37号参照) |
・ |
報告期間後の重要な普通株式及び潜在的普通株式取引 (IAS 第33号「1株当たり利益」は、取引がIAS第33号により修正が要求される資本組入れ、無償交付、株式分割又は株式併合を伴うとき以外の普通株式等取引についての説明を企業が開示することを要求している) |
・ | 報告期間後における資産の価格又は外国為替レートの通常の範囲を超える重要な変動 |
・ | 報告期間後に施行又は発表された税率若しくは税法の変更で,当期税金及び繰延税金の資産・負債に重要な影響を及ぼすもの(IAS 第i2号「法人所得税」参照) |
・ | 例えば多額の保証の発行等、重要なコミットメント又は偶発負債の発生 |
・ | 報告期間後に発生した事象から生じた重要な訴訟の開始 |
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。