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(平成23年1月31日現在)
8.取得した識別可能な資産、引き受けた負債および被取得企業に対する非支配持分の認識
<認識の原則>
取得時点において、取得企業は、のれんとは区別して、取得した識別可能な資産、引き受けた負債、被取得企業のすべての非支配持分を認識しなければなりません。(IFRS3.10)
<取得した識別可能な資産、引き受けた負債の認識>
取得した識別可能な資産、引き受けた負債について、認識の要件を満たすためには、取得日時点で、「財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」(概念フレームワーク)における資産と負債の定義を満たすものでなければなりません。(IFRS3.11)
概念フレームワークでは、下記のとおり定義されています。
【資産】
過去の事象の結果として企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源(fw49)
【負債】
過去の事象の結果として企業の現在の債務で、その決済により、経済的便益を有する資源が当該企業から流出されることが予測されるもの(fw49)
以上の定義より、例えば、被取得企業の活動を終了させるか、または被取得企業の従業員を解雇もしくは配置転換する計画を実行するためなどの、取得企業が将来に発生すると予想しているが発生させる義務のないコストは、取得日時点の負債ではありません。したがって、この場合、取得企業はそれらのコストを取得法の適用の一部として認識しません。当該コストは企業結合後の財務請表で他のIFRSに従って、認識することになります。(IFRS3.11)
<認識する資産または負債の範囲>
取得法の適用の一部として認識の要件を満たすためには、取得した識別可能な質産及び引き受けた負債は、別個の取引の結果ではなく、取得企業及び被取得企業(又は旧所有者)が企業結合取引で交換したものの一部でなければなりません。取得企業は、取得した資産又は引き受けた負債のうちどれが彼取得企業との交換の一部であるのか、また、どれが別個の取引の結果であってその性質および適用可能なIFRSに従って会計処理すべきものであるか判断するために、<13.取得した資産または負債が企業結合の一部であるかの判定>を適用しなければなりません。(IFRS3.12)
<企業結合の場合のみ認識する資産または負債>
取得企業が認識の原則と条件を適用することにより、被取得企業が以前の財務諸表において資産および負債として認識していなかった資産および負債が認識される場合があります。例えば、取得企業は、ブランド名・特許・顧客関係などの識別可能な無形資産を認識しますが、これらは被取得企業の内部で開発され、関連する原価を費用処理していたために、被取得企業の財務諸表では資産として認識されていなかったものです。(IFRS3.13)
<個別項目ごとのその他の留意点>
資産または負債の認識において、個別項目ごとにも下記内容について留意が必要です。
-オペレーティング・リース-
取得企業は、下記場合の除き、被取得企業が借手であるオペレーティング・リースに関する資産または負債を認識してはなりません。(IFRS3.B28)
・オペレーティング・リースの条件が、有利であるか市場条件と比べて有利である場合には無形資産を、市場の条件と比べて不利である場合には負の無形資産を認識しなければなりません。(IFRS3.B29)
・認識可能な無形資産がオペレーティング・リースに関連する場合(IFRS3.B30)
(例えば、空港のゲ一卜又は主要なショッピング・エリアの小売店スペースのリースにより、顧客関係などのような識別可能無形資産としての要件を満たす将来の経済的便益をもたらす場合など)
-無形資産-
取得企業は、のれんとは別に企業結合で取得した識別可能な無形資産を認識しなければなりません。無形資産は、分離可能性規準又は契約法律規準のどちらかを満たす場合に識別可能となります。(IFRS3.B31)
契約法律規準と分離可能性規準の検討においては下記点に留意が必要です。
・契約法律規準を満たす無形資産は、資産が譲渡可能あるいは被取得企業又はその他の権利及び債務から分離可能でなくとも識別可能となります。(IFRS3.B32)(例えば、被取得企業が、市場の条件と比べて有利な条件となるオペレーティング・リースにより、工場設備をリースしており、リースの条件は明確に(売却又は転リースを通しての)リースの譲渡を禁止している場合に置いて、リースの条件が同様又は類似の項目に関する現在の市場取引の条件と比べて有利となっている金額は、取得企業がリース契約を売却又は譲渡することができないとしても、のれんとは区別して認識できる契約法律規準を満たす無形資産となります)
・分離可能性規準とは、取得した無形資産を、個別に又は関連する契約、識別可能資産又は負債とともに被取得企業から分離又は分割して、売却、譲渡、ライセンス付与、賃貸又は交換することができることをいいます。取得企業に売却、ライセンス化、あるいは交換する意図がなくても、取得企業が、売却、ライセンス付与、又は他の方法で何らかの価値のある項目と交換できるであろう無形資産は、分離可能性規準を満たしているといえます。また、取得した無形資産は、取引の頻度が少なくても、また取得企業がその取引に関与しているかどうかに関係なく、当該種類の資産又は類似の種類の資産に関する交換取引の証拠が存在する場合には、分離可能性規準を満たしているといえます。(IFRS3.B33)
・被取得企業又は結合後企業から個別に分離可能ではない無形資産は、関連する契約、識別可能な資産又は負債との組合せによって分離可能となる場合、分離可能性規準を満たします。(IFRS3.B34)
-再取得した権利-
企業結合の一部として、取得企業が、以前に被取得企業に対して付与していた、取得企業の1つ又は複数の認識済み又は未認識の資産を使用する権利を再取得する場合があります。例として、フランチャイズ契約により取得企業の商号を使用する権利や、技術ライセンス契約により取得企業の技術を使用する権利などがこれに該当します。再取得した権利は、取得企業がのれんとは区別して認識する識別可能な無形資産となります。(IFRS3.B35)再取得した権利を生じさせる契約の条件が、同じか又は類似した項目の現在の市場取引の条件と比べて有利又は不利である場合、取得企業は決済利得又は損失を認識しなければなりません。(IFRS3.B36)
-識別可能でない集合的な人的資源及びその他の項目-
IFRS第3号では、下記のものについては、のれんに内包するとされています。
・取得日時点で識別できない無形資産の価値
例えば、取得企業は、集合的な人的資源、すなわち取得企業が取得した事業を取得日から継続して運営できるようにする既存の従業員の集合体に価値を帰属させることがあります。このような集合的な人的資源は、のれんと区別して認識される識別可能な資産ではないため、それに帰属する価値はすべてのれんに包含されます。(IFRS3.B37)
・取得日時点で資産としての要件を満たさない項目に帰属する価値
例えば、取得企業は、被取得企業が取得日時点て交渉していた、新規の見込顧客との潜在的な契約に価値を帰属させることがあります。その潜在的な契約自体は取得日時点では資産ではないため、取得企業は当該契約をのれんとは区別して認識しません。
ただし、取得企業はその後、取得日後に発生する事象に関して、当該契約の価値をのれんから再分類してはなりません。しかし、取得企業は、取得日時点で個別に認識可能な無形資産が存在していたかどうかを判断するために、取得日直後に発生した事象を取り巻く事実や状況の評価は実施しなければなりません。(IFRS3.B38)
以上のように識別可能性の要件(契約法律規準または分離可能性規準)により、無形資産がのれんと区別して識別されるかどうかが決まります。ただし、当該要件は無形資産の公正価値を測定する指針を示しておらず、無形資産の公正価値を見積る際に利用される仮定も制限していません。(IFRS3.B40)
<取得した識別可能な資産、引き受けた負債の分類または指定>
取得企業は、取得日において、取得した識別可能な資産及び引き受けた負債について、取得後に他のIFRSを適用するために必要な分類又は指定を行わなければなりません。当該分類及び指定は、取得企業は取得日に存在する契約条件、経済状況、営業方針又は会計方針及びその他の適切な条件に基づいて行わなければなりません。(IFRS3.15)
取得日に存在する適切な条件に基づいて取得企業が行う分類又は指定の例としては、下記のようなものがあります。(IFRS3.16)
(a)IFRS第9号「金融商品」及びIAS第39号「金融商品:認識及び測定」に従って、特定の金融資産及び負債を、公正価値で測定するもの又は償却原価で測定するものに分類すること
(b)IAS第39号に従って、デリバティブ商品をヘッジ手段として指定すること
(c)IAS第39号に従って、組込デリバティブをIFRS第9号の範囲外の主契約から区分すべきかどうかを評価すること
ただし、IAS第17号「リース」に従ったリース契約の分類やIFRS第4号「保険契約」に従った保険契約の分類については、上記分類と指定の原則について例外規定が設けられており、当該契約を契約開始時における契約条件やその他の要素に基づいて分類することとなります。(IFRS3.17)
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