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(平成23年12月31日現在)
11.投資企業の有する権利が関連する活動を指示する能力を与えるものか
パワーは”権利”から生じます。また、被投資企業に対するパワーを有するためには、投資企業は、関連する活動を指示する現在の能力を投資企業に与える権利を所有しなければなりません。
そのため、 パワーを有しているかどうかに関する決定は、投資企業や他の当事者が被投資企業に関して有している権利にも左右されます。
だだし、被投資企業にパワーを与える権利は、被投資企業ごとに異なる可能性があります。(IFRS10.B10,B14)
<パワーを与える権利の例>
投資企業にパワーを与える権利の例としては、下記のものが挙げられます。(IFRS10.B15)
・ | 被投資企業の議決権(もしくは潜在的議決権)の形をとる権利 |
・ | 関連する活動を指示する能力のある、被投資企業の重要な経営幹部のメンバーを選任、職務変更もしくは解任する権利 |
・ | 関連する活動を指示する別の企業を指示する又は解任する権利 |
・ | 投資企業の便益ための取引の契約を締結する、もしくは取引の変更を拒否するように被投資企業へ指示する権利 |
・ |
関連する活動を指示する能力を所有者に与えるその他の権利(管理契約において特定された意思決定権など) |
一般的に、被投資企業が、リターンに重要な影響を与える営業活動および財務活動を有し、これらの活動に関して実質的権利が継続的に必要となる場合、議決権もしくは類似の権利が、単独でもしくは他の取り決めとの組み合わせによって、投資企業にパワーを与えます(IFRS10.B16)。
<議決権だけでは被投資企業のリターンに重要な影響を与えることができない場合(議決権以外の他の権利に関連する場合)>
議決権が管理業務だけに関係があり、契約上の取り決めが関連する活動の方向を決定する場合のように、議決権が被投資企業のリターンに重要な影響を与えることができない場合、投資企業は被投資企業に対するパワーを与えるのに十分な権利を持っているかどうかを判断するためにそれらの契約上の取り決めを評価する必要があります。(IFRS10.B17)
状況によっては、投資企業が、被投資企業に対するパワーを与えるのに十分かどうかの決定が困難の場合があります。このような場合、投資企業は関連する活動を一方的に指示する実質的能力を持っているかどうかの証拠を検討しなければなりません。
例えば下記の場合は、投資企業の権利やパワーの兆候(下記※を参照)とともに検討した場合に投資企業の権利が被投資企業に対するパワーを与えるのに十分であるという証拠を提供する可能性があります。(IFRS10.B18)
なお、検討に際しては、パワーの兆候(IFRS10.B19~B20)よりも下記の証拠を重視しなければなりません(IFRS10.B21)。
・ | 投資企業は、契約上の権利を持たずに、関連する活動を指示する能力を有する被投資企業の重要な経営幹部を選任するか承認することができる |
・ | 投資企業は、契約上の権利を持たず、投資企業の利益のための重要な取引を行うか、もしくは、変更の拒否を被投資企業に指示することができる |
・ | 投資企業は、被投資企業の統治機関のメンバーを選出する選出手続あるいは他の議決権保有者からの委任状の獲得のいずれかを支配することができる |
・ | 被投資企業の重要な経営幹部が、投資企業の関連当事者である(例えば、被投資企業のCEOと投資企業のCEOが同一人物である) |
・ | 被投資企業の統治機関のメンバーの過半数が投資企業の関連当事者である |
※ パワーの兆候
投資企業が被投資企業に受動的な関与以上のものを有していることを示唆している場合のように、投資企業が、被投資企業と特別の関係にあるという兆候が存在する場合があります。 個々の兆候の存在もしくは特定の兆候の組み合わせが、必ずしもパワーの要件の充足を意味するものではありませんが、しかしながら、被投資企業に関して受動的な関与以上のものを有していることは、被投資企業に対するパワーを与える、もしくは被投資企業に対するパワーの存在の証拠を提供するのに十分なその他の関連する権利を投資企業が有しているという兆候を示しているかもしれません。(IFRS10.B19)
具体的には、例えば、下記の場合、投資企業が被投資企業に関して受動的な関与以上のものをもっていることを示唆しており、他の権利との組み合わせによりパワーを示しているかもしれません。
なお、投資企業の被投資企業への関与から生じるリターンの変動性に対するエクスポージャーもしくは権利が大きいほど、投資企業が被投資企業にパワーを与えるのに十分な権利を得るべきインセンティブは大きくなります。 したがって、リターンの変動性に対する大きなエクスポージャーをもつことは、投資企業がパワーを有している兆候となります。 しかしながら、投資企業のエクスポージャーの大きさのみでは、投資企業が被投資企業に対するパワーを持っているかどうかを決定しません。 (IFRS10.B20) |
なお、上記の検討に際しては下記事項も合わせて検討しなければなりません。(IFRS10.B17)
・被投資企業の目的とデザインの検討における考慮事項(IFRS10.B5~B8)
・議決権や類似の権利が被投資企業のリターンに重要な影響を与えない場合のパワーの検討における考慮事項(IFRS10.B51~B54)
12.実質的権利
投資企業が、パワーをもっているかどうかを評価する際に、被投資企業に関係のある実質的権利だけを考慮します。
権利が実質的権利となるために、所有者が権利を行使する実質的な能力を持っていなければなりません。(IFRS10.B22)
権利が実質的なものか否かを判定する際は、すべての入手可能な事実および状況を考慮することが求められています。実質的なものか否かの決定の際の考慮事項としては下記のものが挙げられます。(IFRS10.B23)
① |
権利保有者による権利の行使を妨げる障壁があるかどうか(経済的障壁もしくはその他を含む) 障壁の例としては下記のものが挙げられます。 |
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1) | 権利保有者の権利行使を妨げる、違約金やインセンティブ | |
2) | 権利保有者の権利行使を妨げる、金銭的障害を創出する行使価格もしくは転換価格 | |
3) | 権利行使のタイミングを制限するなどのような権利行使の可能性を低くする契約条件 | |
4) | 被投資企業の設立文書あるいは権利の所有者が権利行使することを可能とする法律あるいは規則において、明確で合理的な仕組みが欠如していること | |
5) | 権利保有者が権利を行使する上で必要な情報を入手できないこと | |
6) |
権利保有者の権利行使するのを妨げる(あるいは防止する)、運用上の障壁あるいはインセンティブ (例えば、専門的なサービス又は現職の管理者が提供しているサービス及びその他の関与を引き受ける意思又は能力のある他の管理者がいないこと) |
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7) |
権利所有者の権利行使を妨げる法律上、規則上の要求 (例えば、外国の投資企業による権利行使を禁止しているなど) |
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② |
権利の行使に複数の当事者の合意が必要な場合、もしくは複数に当事者によって権利が所有される場合で当該当事者が権利行使を希望する場合に、集団的に権利行使する実際の能力を当該当事者に付与する仕組みがあるかどうか そのような仕組みの欠如は、権利が実質的なものではないことを示唆しています。 権利の行使に合意する必要のある当事者の数が多いほど、実質的権利である可能性は低くなります。 しかしながら、メンバーが意思決定者から独立した取締役会が、多数の投資企業が権利を行使する際に集団的に行動するためのメカニズムとして機能する場合があります。 したがって、独立した取締役会が行使可能な排除権は、同じ権利を多くの投資者によって個々に行使可能な場合により実質的である可能性が高いといえます。 |
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③ |
権利保有者が権利の行使により便益を享受するかどうか 例えば、被投資企業における潜在的議決権の所有者(潜在的議決権についは後でで解説、IFRS10.B47~B50参照)は、当該金融商品の行使価額や転換価額を考慮しなければなりません。潜在的議決権がイン・ザ・マネーの状態にある場合、または投資企業が潜在的議決権の権利の行使や転換権の行使により他の便益を享受することができる場合(例えば、投資企業と被投資企業との間でシナジー効果を得られる場合)は、当該潜在的議決権の条件や状況は、実質的権利である可能性が高くなります。 |
さらに、実質的権利であるためには、関連する活動に関する決定を行う時点でその権利が行使可能である必要があります。そのため、通常は、現在時点において行使可能である必要がありますが、場合によっては、たとえ現時点において権利が行使可能でなくても、権利は実質的なものとなる場合があります。(IFRS10.B24)
<他の当事者が保有する実質的権利>
他の当事者によって行使可能な実質的権利が、投資企業が権利に関係する被投資企業を支配するのを妨げることがあります。 そのような実質的権利は、所有者に意思決定を先導する能力を持つことを要しません。 権利が単に防御権(防御権についは後で解説、、IFRS10.B26~B28参照)でない限り、他の当事者によって保持された実質的権利は、権利の所有者に関連する活動に関係のある意思決定を承認するか阻むための現在の能力だけを与えるだけの場合であっても、投資企業が被投資企業を支配するのを妨げる可能性があります。(IFRS10.B25)
13.防御権
権利が被投資企業に対するパワーを投資企業に与えているかどうか評価する際には、投資企業は、その権利と他の企業に所有された権利が、防御権になるかどうか評価しなければなりません。
防御権は、被投資企業の活動に関する根本的変更事項に関係があるか、あるいは例外的な状況に適用されます。
しかしながら、例外的な状況で適用されるか、イベントを条件とする権利のすべてが防御権とは限りません。(IFRS10.B26)
防御権は、権利に関係する被投資企業に対するパワーを当該当事者に与えずに、所有者の利益を保護するようにデザインされているため、防御権だけを所有する投資企業は、被投資企業に対するパワーを持つことができず、他の当事者が被投資者に対するパワーを持つことを防ぐことができません。(IFRS10.B27)
防御権の例として、下記の権利が挙げられます(IFRS10.B28)。
① | 貸し手に損害を与えるような借手の重要な信用リスクの変動を生じさせる活動を制限する権利 |
② | 通常の事業において必要となる金額を超える資本的支出や株式・社債等の発行に係る承認権 |
③ | 借手の債務不履行時に貸手が借手の資産を差し押さえる権利 |
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