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(平成23年1月31日現在)
6.認識後の測定
企業は、公正価値モデル又は原価モデルのどちらかを会計方針として選択し、当該方針をすべての投資不動産に適用しなければなりません。(IAS40.30)
<例外その1>
ただし、例外として次の選択をすることができます。(IAS40.32A)
① 投資不動産を含む特定の資産の公正価値又はその収益に直接にリンクして収益が支払われるすべての債務付き投資不動産に対して、公正価値モデル又は原価モデルのいずれかを選択する。
② ①での選択にかかわらず、その他の投資不動産に対して公正価値モデル又は原価モデルのいずれかを選択する。
上記2分類において異なったモデルを選択した場合、異なったモデルを使用して測定された資産群間の投資不動産の売却は公正価値で認識しなければならず、公正価値の累計的変更は純損益として認識しなければなりません。したがって、投資不動産について公正価値モデルが使用されている資産群から原価モデルが使用されている資産群に売却された場合、売却日におけるその投資不動産の公正価値はみなし原価となります。(IAS40.32C)
<例外その2>
オペレーティング・リースの下で借手が保有する不動産賃借権が投資不動産として分類される場合(IAS40.6)には、公正価値モデルを適用しなければなりません。(IAS40.34)
<会計方針の変更 -公正価値モデルから原価モデルへの変更->
IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」では、会計方針の任意の変更は、その変更により企業の財務諸表が、取引、その他の事象又は状況が企業の財政状態、財務業績又はキャッシュ・フローに与える影響に関して、信頼性があり、より目的適合性のある情報を提供することとなる場合にのみ行わなければならないとされていますが、公正価値モデルから原価モデルへの変更がより目的適合性のある表示をもたらす可能性は非常に低いとされています。(IAS40.31)
<独立鑑定人の評価>
本基準は、すべての企業が、測定(企業か公正価値モデルを使用している場合)又は開示(原価モデルを使用している場合)において、投資不動産の公正価値を算定することを要求しています。
企業は、承認され適切である専門的資格を所有し、かつ、評価対象の投資不動産の所在地及び分野について最近の実績を有する独立の鑑定人による評価に基づいて、投資不動産の公正価値を算定することを、強制はされないが奨励されています。(IAS40.32)
7.公正価値モデル
当初認識後、公正価値モデルを選択する企業は、公正価値が信頼性をもって算定不可能な場合を除いて、すべての投資不動産を公正価値で評価しなければなりません。(IAS40.33)そして、投資不動産の公正価値の変動から生じる利得又は損失は、発生した期の純損益に含めなければなりません。(IAS40.35)
<公正価値とは>
投資不動産の公正価値は、独立な第三者間取引において不動産について知識がある自発的な当事者の間で当該不動産が交換され得る価格となります。
そのため、公正価値からは、異常な融資や、セール・アンド・リースバック取引、売却に関連した当事者から与えられる特別な対価若しくは特権のような特別な条件又は事情によって過大又は過小となった見積価格は除外されます。(IAS40.36)売却又はそれ以外による処分に際し負担するかもしれない取引費用も控除してはなりません。(IAS40.37)
また、投資不動産の公正価値はとりわけ、現在のリース契約に基づく賃貸料収入及び取引の知識があり自発的な当事者がその時の状況に鑑みて将来のリースからの賃貸料収入について想定する金額を表す合理的かつ立証可能な予測を反映するとともに、同様の基準で、不動産に関し予測されるキャッシュ・アウトフロー(賃貸料支払及びその他のアウトフローを含む)も反映することになります。(IAS40.40)
投資不動産の公正価値には、その不動産の改良又は改造をもたらす将来の資本的支出を反映せず、この将来の資本的支出から生じる関連した将来便益も反映してはいけません。(IAS40.51)
なお、公正価値は、IAS第36号「資産の減損」に定義されている使用価値とは異なります。公正価値は、取引について知識を有する自発的な売手と買手の知識と見積りを反映しますが、使用価値は、その企業に固有で一般の企業には該当しない要因の影響を含む企業の見積りを反映しています。
例えば、公正価値は、一般的に取引について知識を有する自発的な売手と買手が入手することができない範囲である次の要因を反映しません。(IAS40.49)
・別々の場所にある複数の不動産のポートフォリオから生じる追加的な価値
・投資不動産と他の資産とのシナジー効果
・現所有者のみに固有の法的権利及び法的制限
・現所有者に固有の税務便益又は負担
<公正価値の基準日>
投資不動産の公正価値は、報告期間の末日現在の市場の状況を反映するものでなければなりません。(IAS40.38)公正価値は特定時点の価格であり、引渡しと売貿契約完了とが同時であることを前提としています。(IAS40.39)
<公正価値の証拠>
-活発な市場がある場合-
公正価値の最善の証拠は、同一の所在地及び状況にあり、かつ、類似するリース及びその他の契約を有する、類似した不動産の活発な市場での現在価格により与えられます。企業は、不動産の種類、所在地若しくは状況における、又は当該不動産に関係するリース及びその他の契約の契約条件におけるいかなる差異も明確にするよう注意しなければなりません。(IAS40.45)
-活発な市場がない場合-
上記のような活発な市場における現在の価格がない場合、企業は以下を含む多様な出所からの情報を検討しなければなりません。(IAS40.46)
・異なる種類、状況又は所在地の(又は異なるリース若しくは他の契約を有する)不動産に対する活発な市場の現在の価格を、これらの差異による影響を考慮し修正した価格
・不活発な市場における類似の特性を備えた不動産の最近の価格を、その価格で取引が成立した日以降における経済状況の変化のすべてを影絆させ修正した価格
・既存のリース及びその他の契約のすべての条件、並びに(可能な場合)例えば、 同一の所在地及び状況にある類似する不動産の現在の賃貸料の市場相場のような外部証拠により立証可能な将来のキャッシュ・フローの信頼できる見積りに基づく割引キャッシュ・フロー計算で算出された価格。使用する割引率は、その時点におけるキャッシュ・フローの金額と時期に関する市場の評価を反映したものでなければなりません。
場合によっては、上記の列挙された種々の出所から別々の結論が提出されることもあります。企業は、これらの差異の理由を検討し、公正価値見積額の範囲内で最も信頼性の高い公正価値の評価額を決定しなければなりません。(IAS40.47)
なお、例外的なケースとして、企業が投資不動産を取得する当初の時点(又は、既存の不動産が用途変更後に投資不動産になる当初の時点)で、合理的な公正価値見積もり額の範囲の変動可能性が非常に大きく、またさまざまな結果の確率を評価することが非常に困難であるため、単一の公正価慎の見積りが有用でないという、明確な証拠が存在する場合があります。このような場合、不動産の公正価値が継続して信頼性をもって算定されないことを示していると考えられます。(IAS40.48)
また、場合によっては、企業が、投資不動産に関係する企業の支出額(認識済みの負債に関する支払を除く)の現在価値が閔連する現金収入額の現在価値を超過することになると予想するこがあります。この場合、企業は、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」を適用して、負債を計上すべきか否か、計上する場合の測定方法について決定しなければなりません。(IAS40.52)
<公正価値算定におけるその他の留意事項>
公正価値モデルにおける投資不動産の帳簿価額の算定に際し、企業は個別の資産又は負債として認識される資産と負債を二重計算しないように注意が必要です。例えば、下記のようなものがあります。(IAS40.50)
・エレベーター又は空調等の機器は、多くの場合、建物の不可分の一部であり、有形固定資産として個別に認識せずに、一般的に投資不動産の公正価値に含まれる。
・家具付条件で賃貸する事務所の場合、賃貸料収入は家具付き事務所のものであるので、事務所の公正価値は家具の公正価値を通常含んでいる。投資不動産の公正価値が家具を含んでいる場合には、企業はそれらの家具を別個の資産としては認識しない。
・企業は前受又は未収賃貸料収入を別の負債又は資産として認識するので、投資不動産の公正価値はそれらを除外する。
・リースの下で保有される投資不動産の公正価値は予測されるキャッシュ・フロー(支払われることが予測される条件付賃貸料を含む)を反映する。したがって、不動産について得られる評価額が予定される支払額のすべてを除いたものである場合には、公正価値モデルによる投資不動産の帳簿価額を算出するために認識済みのリース負債を足し戻すことが必要となる。
8.公正価値モデル -公正価値が信頼性をもって算定不可能な場合-
例外的なケースにおいては、企業が投資不動産の当初認識時点において、投資不動産の公正価値を継続して信頼性をもって算定することができないという明確な証拠が存在することがあります。
これは比較可能な市場取引が稀であり、またそれに代わる信頼のおける公正価値見積額(例えば、DCF法による評価結果)の利用できない場合に生じます。(IAS40.53)
<公正価値が信頼性をもって算定不可能な場合の測定方法>
企業が、投資不動産(建設中の投資不動産を除く)の公正価値が継続的には信頼性をもって算定できないと判断している場合には、企業はその投資不動産をIAS第16号「有形固定資産」の原価モデルにより測定しなければなりません。その投資不動産の残存価値をゼロと想定しなければなりません。企業はその投資不動産を処分するまで、IAS第16号を適用しなければなりません。(IAS40.53)
上記理由によりIAS第16号に従って原価モデルを用いて投資不動産を測定せざるを得ない例外的ケースにおいても、公正価値モデルを採用している企業は他のすべての投資不動産(建設中の投資不動産を含む)を公正価値で測定しなければなりません。このような場合、企業はある投資不動産について原価モデルを用いることができるとしても、残りの不動産の各々については公正価値モデルを用いて引き続き会計処理を行わなければなりません。(IAS40.54)
なお、企業がこれまで投資不動産を公正価値で測定していた場合には、比較可能な市場取引が稀になるか又は市場価格が容易に利用できなくなったときでも、企業は、処分時まで(又はその不動産が自己使用不動産になるまで、若しくは通常の事業の過程における事後的な販売のためにその不動産の開発を開始するまで)、 公正価値で測定し続けなければなりません。(IAS40.55)
<建設中の投資不動産>
企業が、建設中の投資不動産の公正価値が信頼性をもって算定できないと判断しているが、建設が完了した時には当該不動産の公正価値が信頼性をもって算定できると予想している場合には、建設中の当該投資不動産を、その公正価値が信頼性をもって算定できるようになるか又は建設が完了した時(いずれか早い方)まで取得原価で測定しなければなりません。(IAS40.53)
企業がそれまで取得原価で測定していた建設中の投資不動産の公正価値を信頼性をもって測定できるようになった場合には、当該不動産を公正価値で測定しなければならない。当該不動産の建設が完了した時には、公正価値が信頼性をもって測定できるものと推定される。そうでない場合には、当該不動産はIAS第16号に従って原価モデルにより会計処理しなければならなりません。(IAS40.53A)
建設中の投資不動産の公正価値が信頼性をもって測定できるという推定は、当初認識時にのみ反証可能です。建設中の投資不動産の項目を公正価値で測定してきた企業は、完成した投資不動産の公正価値が信頼性をもって測定できないと判断することはできません。(IAS40.53B)
9.原価モデル
当初認識後、原価モデルを選択する企業は、その投資不動産のすべてを、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従って、売却目的保有に分類する(又は、売却目的保有に分類される処分グループに含まれる)規準に合致するものを除き、当該モデルについて定めているIAS第16号「有形固定資産」に従って、測定しなければなりません。
売却目的保有に分類される(又は売却目的保有に分類される処分グループに含まれる)規準に合致する投資不動産は、IFRS第5号に従って測定しなければなりません。(IAS40.56)
10.振替
投資不動産への又は投資不動産からの振替は、次により証明される用途変更がある場合にのみ行わなければなりません。(IAS40.57)
・投資不動産から自己使用不動産への振替について、自己使用の開始
・投資不動産から棚卸資産への振替について、販売する計画を伴う開発の開始
・自己使用不動産から投資不動産への振替について、自己使用の終了
・棚卸資産から投資不動産への振替について、他者へのオペレーティング・リースの開始
販売する計画を伴う開発の開始により証明される用途変更かおる場合に、かつその場合にのみ、投資不動産を棚卸資産へ振り替えなければなりません。企業が投資不動産の開発を伴わない処分を決定する場合、企業はそれを除去するまで、その不動産を、棚卸資産としてではなく、引き続き投資不動産として取り扱わなければなりません。同様に、既存の投資不動産を将来も投資不動産として継続使用するため再開発を開始する場合、その不動産は、再開発期間中も自己使用不動産として再分類せず、投資不動産のままとしなければなりません。(IAS40.58)
<公正価値モデル採用下での投資不動産から自己所有不動産等への振替>
公正価値で計上されていた投資不動産から自己使用不動産又は棚卸資産への振替に関しては、IAS第16号「有形固定資産」又はIAS第2号「棚卸資産」に基づく振替後の会計処理におけるその不動産のみなし取得原価は、その用途変更日の公正価値でなければならなりません。(IAS40.60)
<公正価値モデル採用下での自己所有不動産等から投資不動産への振替>
自己使用不動産が公正価値で計上する投資不動産になった場合、企業は用途変更日まではIAS第16号を適用しなければなりません。企業は、用途変更日におけるIAS第16号に従ったその不動産の帳簿価額と公正価値との差額を、IAS 第16号に従った再評価モデルと同一の方法で処理しなければなりません。(IAS40.61)
企業は、自己使用不動産を公正価値で計上する投資不動産とする日まで、その不動産の減価償却を行い、発生しているいかなる減損損失も認識します。企業は、その目現在のIAS 第16号に従ったその不動産の帳簿価額とその公正価値の一切の差額を、 下記の通りIAS第16号に従った再評価モデルと同一の方法で処理します。(IAS40.62)
■帳簿価額<再評価額の場合
その不動産の帳簿価額に生じたすべての減少額は純損益に認識します。しかし、その不動産の再評価剰余金に含まれている金額の範囲で、その減少額はその他の包括利益に認識され、資本の中の当該再評価剰余金の減額となります。
■帳簿価額>再評価額の場合
増加額のうちその不動産のそれ以前の減損の戻入れになる範囲まで、増加額を純損益に認識します。純損益に認識される金額は、減損損失が認識されていなかったとした場合に (減価償却額控除後で)算定されていたであろう帳簿価額まで帳簿価額を回復させるために必要な金額を超えない範囲で認識します。
増加額の残額があれば、その他の包括利益に認識し、 資本の中の再評価剰余金を増額します。投資不動産のその後の処分がある場合は、資本に含まれている再評価剰余金を利益剰余金に振り替えます。再評価剰余金から利益剰余金への振替は純損益を経由しません。
<公正価値モデル下での棚卸資産から投資不動産への振替>
棚卸資産から公正価値で計上する投資不動産への振替に関しては、振替日当日の不動産の公正価値と従来の帳簿価額との差額を純損益に認識しなければなりません。(IAS40.63)
棚卸資産から公正価値で計上される投資不動産への振替の処理は、棚卸資産の販売の会計処理の同様の基準で行われます。(IAS40.64)
<公正価値モデル下での自家建設の投資不動産>
公正価値で計上される自家建設の投資不動産の建設又は開発を企業が完了した時に、その日現在の不動産の公正価値と従前の帳簿価額との差額を純損益に認識しなければなりません。(IAS40.65)
<原価モデル下での振替>
なお、企業が原価モデルを使用する場合、投資不動産と自己使用不動産及び棚卸資産との間での振替は、振り替えられる不動産の帳簿価額を変化させることはなく、また、測定又は開示の目的上その不動産の取得原価を変化させないため上記のような特別な規定はありません。(IAS40.59)
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