株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」(1/3)

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(平成23年1月31日現在)

1.目的

IFRS第5号の目的は、売却目的で保有する非流動資産の会計処理、非継続事業の表示及び開示を定めることであり、特に次のことを要求しています。(IFRS5.1)

 

 ① 売却目的保有に分類される要件を満たす資産は、帳簿価額か売却費用控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定し、当該資産の減価償却は中止する。

 ② 売却目的保有に分類される要件を満たす資産は、財政状態計算書上区分表示し、非継続事業の経営成績は、包括利益計算書上区分表示する。

2.範囲

本基準の分類及び表示の定めは、企業が認識したすべての非流動資産及び処分グループに適用しなければなりません。(IFRS5.2)

また、売却目的保有に分類される非流動資産(又は処分グループ)に適用される本基準の分類、表示及び測定の規定は、所有者としての立場で行動する所有者への分配のための保有(所有者分配目的保有)に分類される非流動資産(又は処分グループ)にも適用されます。(IFRS5.5A)

 

<測定の定めの適用が除外される項目(IFRS5.5)>

ただし、下記のものは、個々の基準に従い測定を行うこととし、本基準の測定の定めを適用しません。

 ・繰延税金資産(IAS第12号「法人所得税」)

 ・従業員給付により生じる資産(IAS第19号「従業員給付」)

 ・IFRS第9号「金融商品」の対象範囲の金融資産

 ・IAS第40号[投資不動産]の公正価値モデルに従って会計処理される非流動資産

 ・IAS第41 号「農業」に従って売却費用控除後の公正価値で測定される非流動資産

 ・IFRS第4号「保険契約」で定義された保険契約における契約上の権利

 

<適用単位>

企業は、資産のグループを、場合によっては直接それに関連する負債とともに単一の取引において同時に処分することがあります。このような処分グループは、資金生成単位のグループである場合もあれば、単一の資金生成単位そのものである場合もあり、資金生成単位の一部であることもあります。また、資産又は資産グループからのキャッシュ・フローが、継続的使用ではなく主に売却から生じるといったん予想された場合には、その他の資産から生じるキャッシュ・フローに依存する割合は低くなり、資金生成単位の一部であった処分グループが別個の資金生成単位となります。

 

当該グループには、流動資産、流動負債及び本基準の測定の定めから除外される資産が含まれている場合もあると考えられますが、本基準の対象となる非流動資産が処分グループの一部である場合には、測定についての本基準の定めは当該グループ全体に対して適用され、当該グループは帳簿価額と売却費用控除後の公正価位のいずれか低い金額で測定されることになります。(IFRS5.4)

 

<非流動資産の流動資産への再分類>

 IAS第1号「財務諸表の表示」に従って非流動に分類された資産は、本基準に従って売却目的保有に分類される要件を満たすまでは、流動資産として再分類してはいけません。企業が通常であれば非流動とみなす種類の資産で、転売するだけのために取得したものは、本基準に従って売却目的保有に分類される要件を満たさない場合は、流動資産に分類してはならない。(IFRS5.3)

 

<開示における本基準の適用>

本基準は、売却目的保有に分類された非流動資産(若しくは処分グループ)又は非継続事業について要求される開示を特定しています。そのため、他のIFRSにおける開示は、当該IFRSが次のいずれかを求めている場合を除き、当該資産(又は処分グループ)には適用されません。(IFRS5.5B)

 ① 売却目的保有に分類された非流動資産(若しくは処分グループ)又は非継続事業に関する具体的な開示

 ② IFRS第5号の測定の定めの範囲に含まれない処分グループの中の資産及び負債の測定に関する開示(このような開示が財務諸表の他の注記ですでに提供されていない場合)

 

なお、売却目的保有に分類された非流動資産(若しくは処分グループ)又は非継続事業に関する追加的な開示がIAS第1号の全般的な要求に従い必要となる場合があります。

3.定義

IFRS第5号で使用されている主要な用語の定義は下記のとおりです。(付録A)

 

・処分グループ(disposal group)

 売却又はその他の方法により、単一の取引として処分される資産のグループ及びそれらの資産に直接関連し、当該取引で移転される負債をいいます。当該グループが、IAS第36号「資産の減損」の定めに従ってのれんが配分された資金生成単位であるか、又はその資金生成単位の中の営業活動である場合には、企業結合で収得したのれんも当該グループに含まれます。

 

・資金生成単位(cash-generating unit)

他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローとはおおむね独立したキャッシュ・インフローを生成させるものとして識別される資産グループの最小単位をいいます。

 

・流動資産(current asset)

企業は、次の場合には資産を流動資産に分類しなければなりません。

(a)企業が、企業の正常営業循環期間において、当該資産を実現させる予定であるか又は販売若しくは消費することを意図している場合

(b)企業が、主として売買目的で当該資産を保有している場合

(c)企業が、報告期問後12か月以内に当該資産を実現させる予定である場合

(d)当該資産が現金又は現金同等物(IAS第7号で定義)である場合。

ただし、当該資産を交換すること又は負債の決済に使用することが、報告期間後少なくとも12か月にわたり制限されている場合を除く。

 

・非流動資産(non-current asset)

流動資産の定義を満たさない資産をいいます。

 

・非継続事業(discontinued operation)

 処分されたか又は売却目的保有に分類された企業の構成単位で、次のいずれかに該当するものをいいます。

(a)独立の主要な事業分野又は営業地域を表す。

(b)独立の主要な事業分野又は営業地域を処分する統一された計画の一部である。

(c)転売のみのために取得した子会社である。

 

・企業の構成単位(component of an entity)

営業活動上及び財務報告上、企業の他の部分から明らかに区別できる営業活動及びキャッシュ・フロ―をいいます。

 

・可能性が非常に高い(highly probable)

「可能性が高い」よりも著しく可能性が高いこと

 

・可能性が高い(probable)

起こる可能性の方が起こらない可能性よりも高いこと

4.売却目的で保有する非流動資産(又は処分グループ)の分類

企業は、非流動資産(又は処分グループ)の帳簿価額が、継続的使用よりも主として売却取引により回収される場合には、当該資産(又は処分グループ)を売却目的保有に分類しなければなりません。(IFRS5.6)

交換がIAS第16号「有形固定資産」に従った経済的実質を有する場合には、売却取引には非流動資産と他の非流動資産との交換を含みます。(IFRS5.10)

 

<売却目的保有への分類要件>

当該分類に該当するためには、資産(又は処分グループ)は、当該資産(又は処分グループ)の売却において通常又は慣例的な条件のみを基に、現況で直ちに売却することが可能でなければならず、その売却の可能性が非常に高くなければなりません。(IFRS5.7)そして、売却の可能性が非常に高いと言えるためには、適切な地位の経営者が当該資産(又は処分グループ)の売却計画の実行を確約していなければならず、買手を探し売却計画を完了させる活発な計画が開始されていなければなりません。

さらに資産(又は処分グループ)は積極的に売り込まれており、その販売価格は現在の公正価値との関係において合理的なものでなければなりません。

加えて、当該売却は、分類した日から1年以内で売却が完了したものと認識される要件を満たす予定でなければならず、計画を完了させるために必要な行動により、計画に重要な変更が行われたり計画が撤回されたりする可能性が低いことが示唆されていなければなりません。

株主の承認(その法域で要求されている場合)の可能性も、その売却の可能性が非常に高いかどうかの評価の一部として考慮しなければなりません。(IFRS5.8)

 

ただし、事象や状況によっては、売却の完了までの期間が1年を超える可能性もあります。企業の支配の及ばない事象や状況により売却が遅延しているが、企業が当該資産(又は処分グループ)の売却計画の実行を依然として確約しているとの十分な証拠がある場合には、売却の完了までに必要な期間が延びたとしても資産(又は処分グループ)を売却目的保有に分類することを妨げるものではないとされています。(IFRS5.9)

 

<子会社への支配の喪失を伴う売却の場合>

子会社に対する支配の喪失を伴う売却計画を確約している企業は、売却後にその子会社に対する非支配持分を企業が保持するかどうかにかかわらず、上記に示した要件が満たされた時に、その子会社のすべての資産及び負債を、売却目的保有に分類しなければなりません。(IFRS5.8A)

 

<処分目的の非流動資産(又は処分グループ)>

企業が、非流動資産(又は処分グループ)をその後処分するためだけに取得した場合、上記1年以内という要件が満たされ、取得日時点ではその他の要件が満たされていないが取得後短期間(通常3か月以内)に満たされる可能性が非常に高い場合にのみ、その非流動資産(又は処分グループ)を取得日時点て売却目的保有に分類しなければなりません。(IFRS5.11)

 

<報告期間後に分類要件が満たされる場合>

分類要件が報告期間後に満たされる場合には、企業は、財務諸表の公表時には、非流動資産(又は処分グループ)を売却目的保有に分類してはいけません。ただし、当該要件が報告期間後、財務諸表の公表承認時までに満たされる場合には、企業は、財務諸表の注記において関連情報を開示しなければなりません。(IFRS5.12)

5.所有者分配目的で保有する非流動資産(又は処分グループ)の分類

非流動資産(又は処分グループ)は、企業がその資産(又は処分グループ)を所有者に分配することを確約している場合には、所有者分配目的保有に分類されます。

 

<所有者分配目的保有への分類要件>

当該該当するためには、資産が現在の状況で直ちに分配に利用できるものでなくてはならず、分配の可能性が非常に高くなければなりません。

分配の可能性が非常に高いと言えるためには、分配を完了するための行動が開始されていなければならず、かつ、分類の日から1年以内に完了する見込みでなければなりません。分配を完了するために必要とされる行動は、その分配について重大な変更が行われたり分配が取り止められたりする可能性が低いことを示すものでなければなりません。

株主の承認(その法域で要求されている場合)の可能性は、その売却の可能性が非常に高いかどうかの評価の一部として考慮しなければなりません。(IFRS5.12A)

6.廃棄予定の非流動資産の分類

企業は、廃棄予定の非流動資産(又は処分グループ)を売却目的保有に分類することが禁止されています。これは、その帳簿価額が主として継続的使用により回収されるからです。

 

しかし、廃棄予定の処分グループが非継続事業の要件(後述)を満たす場合には、企業は、当該処分グループの使用を中止した日において、当該処分グループの業績及びキャッシュ・フローを非継続事業として報告、開示しなければなりません。

 

廃棄予定の非流動資産(又は処分グループ)には、経済的耐用年数終了時まで使用が予定される非流動資産(又は処分グループ)や、売却されず閉鎖予定の非流動資産(又は処分グループ)が含まれます。(IFRS5.13)

企業は、一時的に使用しなくなった非流動資産を、廃棄されたかのように会計処理することは禁止されています。(IFRS5.14)

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