株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

IAS第19号「従業員給付」(退職後給付 6/9)

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(平成22年12月31日現在)

22.確定給付制度(数理計算上の差異の算定)

数理計算上の差異(actuarial gains and losses)」とは、実績による修正(事前の数理計算上の仮定と実際の結果との差異の影響)と数理計算上の仮定の変更の影響による差異をいいます(IAS19.7)。

数理計算上の差異は、確定給付制度債務の現在価値、又は関連する制度資産があればその公正価値の、増加又は減少から生じます。

数理計算上の差異の原因には、例えば次のようなものがあります。(IAS19.94)

 

(a) 当初の予想よりも高い又は低い、従業員の離職、早期退職若しくは死亡の率、又は給与、給付(制度の止式な規約又は推定的規約がインフレーションによる給付の増加について規定している場合)若しくは医療費の増加率
(b) 将来の従業員の離職、早期退職若しくは死亡についての、又は給与、給付(制度の正式な規約又は推定的規約がインフレーションによる給付の増加について規定している場合)若しくは医療費の増加についての、見積りの変更の影響
(c) 割引率の変更の影響
(d) 制度資産に係る実際収益と制度資産に係る期待収益との間の差異

 

数理計算上の差異の処理方法として、下記の3つの方法を選択適用することができます。

 

 ・ 回廊モデル

 ・ 期間償却モデル

 ・ 一括償却モデル

 

 

<回廊モデル> 


前報告期間末における未認識の数理計算上の差異の正味累積額が、次の大きい方の金額を超過する場合に、当該制度に加入している従業員の予想平均残存勤務期間で規則的に償却し、収益又は費用として認識する方法です。(IAS19.92,93)

 

前報告期間末日現在の確定給付制度債務の現在価値(制度資産控除前)の10%

前報告期間末日現在で制度資産があればその公正価値の10%

なお、当該制限額は、確定給付制度ごとに別個に計算し、適用しなければなりません。

 

-回廊モデルの考え方- 

数理計算上の差異は長期的には互いに相殺される可能性があります。そのため、退職後給付債務の見積額は、最善の見積りの近辺の範囲(あるいは「回廊(corridor)」)であると考えることができます。

そこで、IAS第19号では、数理計算上の差異が「回廊」のプラス・マイナス10%の外に出る場合には、最小限、その部分を認識することを要求していますが、一定の条件を満たす限り、より早期に認識する規則的な方法(期間償却モデル、一括償却モデル)も許容しています。(IAS19.95)

 

 

<期間償却モデル>


数理計算上の差異をより早期に認識する結果になる任意の規則的な方法により償却し、収益又は費用として認識する方法です。

ただし、この方法を適用する場合は、利得と損失の双方に同一の方法を適用し、かつ、当該方法を毎期一貫して適用しなければなりません。

この方法では、数理計算上の差異が回廊モデルにおける制限以内にとどまる場合でも、償却することができます。(IAS19.93)

また 、この方法では、数理計算上の差異が発生した期間より償却することなになります(IAS19.94)

 

 

<一括償却モデル>


すべての確定給付制度におけるすべての数理計算上の差異について、数理計算上の差異を発生した期間に、その他の包括利益に認識する方法です。(IAS19.93A)

 

 

第93A項で認めるところにより、その他の包括利益に認識された数理計算上の差異は、包括利益計算書に表示しなければならない。(IAS19.93B) 93C 第93A項に従って数理計算上の差異を認識する企業は、第58項(b)の上限により生じる調整額も、その他の包括利益に認識しなければならない。(IAS19.93C) 93D 数理計算上の差異及び第58項(b)の上限により生じる調整額で、その他の包括利益に認識されたものは、直ちに利益剰余金に認識しなければならない。それらは、その後の期間において純損益に振り替えることはできない。(IAS19.93D)

23.確定給付制度の会計処理(過去勤務費用の算定)

過去勤務費用(past service cost)」とは、過去の期間における従業員の勤務に関して、当期中における退職後給付または他の長期従業員給付の導入または変更により生じた、確定給付制度債務の現在価値の変動額をいいます。過去勤務差異は、プラス(確定給付制度債務の現在価値を増加させるように給付の導入または変更された場合)またはマイナス(確定給付制度債務の現在価値を減少させるように既存の給付が変更された場合)のいずれの値にもなりえます。(IAS.19.7)

 

企業は、過去勤務費用を、下記のとおり認識しなければなりません(ただし、第58A項を制約とする)。(IAS19.96)

給付の権利が確定していないもの
給付の権利が確定するまでの平均期間にわたり定額法によって費用として認識する
給付の権利が確定しているもの
給付が確定給付制度の導入又は変更の直後にすでに権利が確定している範囲内では、企業は過去勤務費用を直ちに認識する

 

過去勤務費用が発生するのは、企業が過去の勤務に給付を帰属させる確定給付制度を導入するとき又は既存の確定給付制度の下で支払うべき給付を変更する場合です。そして、当該変更は、関連する給付が権利確定するまでの期間にわたる従業員の勤務への対価といえます。したがって、企業は、当該費用が従業員の過去の期間の勤務に帰するという事実にかかわりなく、上記の期間にわたって過去勤務費用を認識することになります(IAS19.97)。

 

企業は、給付を導入又は変更した時に過去勤務費用の償却予定を作成します。

当該償却予定の事後の変動を識別して実施するために必要な、詳細な記録を維持することは実務上不可能、かつ、その影響は、縮小又は清算の場合にのみ、重要となると考えられます。したがって、企業は、縮小又は清算があった場合にのみ、過去勤務費用に関する償却予定を修正します(IAS19.99)。

また、企業が既存の確定給付制度の下で支払うべき給付を減額し、同時に当該制度の下で同一の従業員に支払うべき他の給付を増額する場合には、当該企業は当該変更を単一の正味変更として扱います(IAS19.101)。 

 

 

<過去勤務費用に該当しない項目>


なお、次の項目は、過去勤務費用には、該当しません(IAS19.98)。

過年度の勤務に対する給付を支払う債務に関する、昇給についての実績と以前の仮定との間の差異による影響
数理計算上の仮定で予測給与を考慮しているため、過去勤務費用は該当しません。
企業が裁量により年金の増加を付与する推定的債務を有する場合の、当該増加額の過小又は過大見積り
数理計算上の仮定で当該増加を考慮しているため、過去勤務費用には該当しません。
給付の増加がまだ正式に付与されていない場合でも、制度の正式な規約(又は当該規約を超える推定的債務)又は法律のいずれかにより、その制度の積立超過を制度加入者の給付に使用することが義務付けられている場合には、財務諸表に認識されている数理計算上の差益から生じる給付の改善の見積り(IAS19.55(b)によるもの)
その結果として生じる債務の増加は数理計算上の差損であり、過去勤務費用には該当しません。
 新たな給付又は給付の改善がない場合における、従業員が権利の確定の要件をすべて満たした際の権利確定した給付の増加
勤務が提供される際に、企業は給付の見積費用を企業が当期勤務費用として認識するので、過去勤務費用は該当しません。
将来の勤務に対する給付を減額する制度の変更(縮小)の影響

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