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(平成22年12月31日現在)
17.確定給付制度の会計処理(認識及び測定)
<考え方>
確定給付制度の会計処理は、債務及び費用を測定するために数理計算上の仮定が必要とされ、数理計算上の差異の可能性が存在するので複雑になります。さらに、当該債務は、従業員が関連する勤務を提供してから長年経過した後に決済されることもあるため、当該債務は割引現在価値で測定されます。(IAS19.48)
<認識及び測定>
確定給付制度は、積立てをしない場合や、報告企業とは法的に別個の事業体(又は基金)への企業(時には従業員)による拠出によって、一部又は全部が積み立てられ、そこから従業員給付が支払われる場合があります。期日の到来による積み立てられた給付の支払は、基金の財政状態及び運用成績のみならず、基金の資産不足を補う企業の能力(及び意思)にも依存します。したがって、企業は実質的に制度に関連する数理計算上と投資上のリスクを引き受けています。この結果、確定給付制度に対して認識する費用は、必ずしも当期中に期日が到来している掛金ではありません。(IAS19.49)
そのため、確定給付制度に関する債務と費用の認識及び測定は、次の手順を踏むことになります。(IAS19.50)
Ⅰ. |
確定給付債務の現在価値および当期勤務費用の認識と測定 (詳細は「21.確定給付制度(確定給付制度債務の現在価値と当期勤務費用の認識と測定)」で解説) |
数理計算上の技法を使用して、企業が、いくらの給付を当期及び過去の期間に帰属させるかを決定し、数理計算上の仮定の設定をおこなうことにより、当期及び過去の期問の勤務の対価として従業員が稼得した給付の信頼性のある見積額を求めます。そして、確定給付制度債務の現在価値及び当期勤務費用を算定するために、予測単位積増方式の考え方のもと、当該給付の割引計算を行います。 | |
Ⅱ. |
制度資産の評価 (詳細は「24.確定給付制度(制度資産の評価)」「25.確定給付制度(補填)」で解説) |
制度資産があれば、その公正価値を算定します。 | |
Ⅲ. |
数理計算上の差異の算定 (詳細は「22.確定給付制度(数理計算上の差異の算定)」「26.確定給付制度(制度資産の収益)」で解説) |
数理計算上の差異の合計額及びその数理計算上の差異のうち認織すべき金額を算定します。 | |
Ⅳ. |
過去勤務費用の算定 (詳細は「23.確定給付制度(過去勤務費用の算定)」で解説) |
制度を導入又は変更した場合には、それにより生じた過去勤務費用を算定します。 | |
Ⅴ. |
縮小および清算 (詳細は「28.確定給付制度(縮小および清算)」で解説) |
制度を縮小又は清算した場合には、それにより生じた利得又は損失を算定します | |
企業が複数の確定給付制度を有する場合には、当該企業は、これらの手続を個々の重要な制度について個別に適用します。場合によっては、見積り、平均及び簡便計算により、本基準で例示した詳細な計算の信頼し得る近似値を求めることもできます。(IAS19.51)
-推定的債務(constructive obligation)の会計処理-
企業は、確定給付制度の正式な規約に基づく法的債務のみならず、企業の非公式の慣行により生じる推定的債務についても会計処理しなければなりません。当該企業が従業員給付を支払う以外に現実的な選択肢を有しない場合には、非公式の慣行から推定的債務が発生しているということになります。例としては、非公式の慣行を企業が変更すると従業員との関係に受け入れ難い悪影響を引き起こすであろうケースが挙げられます。(IAS19.52)
18.確定給付制度の会計処理(財政状態計算書)
確定給付負債(defined benefit liability)として認識する金額は、次の金額の差引合計としなければなりません(IAS19.54)。
① | 報告期間の末日における確定給付制度債務(defined benefit obligation)の現在価値に、 |
② | 未認識の数理計算上の差益または差損があればそれを加算または減算する(数理計算上の差損があればそれを減算する) |
③ | 未認識の過去勤務費用があればそれを減算する |
④ | 当該債務を直接決済する制度資産(もしあれば)の報告期間の末日現在の公正価値を減算する |
企業は、財務諸表で認識される金額が、報告期間の末日現在で算定されたであろう金額と著しくは異ならないよう、十分な定期性をもって、確定給付制度債務の現在価値及び制度資産の公正価値を算定しなければなりません。(IAS19.56)
-正味金額がプラスの場合(退職給付資産が計上される場合)-
上記により算定された金額が負の金額(資産)となることもあります。企業は、その結果として生じる資産を、次のいずれか低い方の金額で測定しなければなりません。(IAS19.58)このような資産計上制限ルールは、アセットシーリングといわれています。
58(a) | 上記(①~④)により算定した金額 | |
58(b) | 次の合計額 | |
(i) | 未認識の正味数理計算上の差損及び過去勤務費用の累積額 | |
(ii) |
制度からの返還又は制度への将来掛金の減額の形で利用可能な経済的便益があればその現在価値 (当該経済的便益の現在価値は、数理計算上の仮定における割引率を使用して算定しなければなりません) |
ただし、当期の数理計算上の差損又は過去勤務費用のみを原因として利得を認識したり、当期の数理計算上の差益のみを原因として損失を認識したりする結果となってはなりません。したがって、企業は、アセットシーリングに抵触し、上記(b)により資産計上が制限されている期間において確定給付資産を算定する場合、次の範囲の金額は遅延認識せず、直ちに認識しなければなりません。(IAS19.58A)
58A(a) |
経済的便益の現在価値の減少を超える範囲の、当期の正味の数理計算上の差損及び当期の過去勤務費用。 経済的便益の現在価値に変動または増加がない場合、当期の正味数理計算上の差損及び当期の過去勤務費用の全体を、直ちに認識しなければなりません。 |
58A(b) |
経済的便益の現在価値の増加を超える範囲の、当期の正味の数理計算上の差益から当期の過去勤務費用を控除した額。 経済的便益の現在価値に変動または減少がない場合、当期の正味数理計算上の差益から当期の過去勤務費用を控除した額の全体を、直ちに認識しなければなりません。 |
上記の制限は、企業が、会計期間の期首又は期末の時点て、確定給付制度の積立超過を有しており、制度の現行の規約に基づけば、返還や将来掛金の減額という形で当該積立超過を完全に回収できない場合にのみ適用されます。
この場合、期中に生じた過去勤務費用と数理計算上の差損は、58(b)(i)に示した金額を増加させます。この増加が、58(b)(ii)の下で認識に適格である経済的便益の現在価値の、同額の減少と相殺されない場合、58(b)に示した差引合計が増加し、その結果、利得が認識されることになります。上記の制限は、こうした状況における利得(逆の場合、損失)の認識を禁止しています。(IAS19.58B)
19.確定給付制度の会計処理(包括利益計算書)
企業は、次の金額の差引合計を純損益に認識しなければならなりません。ただし、他の基準が当該給付を資産の原価に含めることを要求又は許容している範囲を除きます。(IAS19.61)
・ | 当期勤務費用 |
・ | 利息費用 |
・ | 制度資産や補填の権利があれば、それらに係る期待収益 |
・ | 数理計算上の差異(企業の会計方針に従って要求されたもの) |
・ | 過去勤務費用 |
・ | 縮小又は清算があれば、その影響額 |
・ | ・アセットシーリングにより定められる上限の影響(ただし、その他の包括利益で認識される場合を除く) |
なお、他の基準で、特定の従業員給付費用を棚卸資産又は有形固定資産のような資産の原価に含めることを要求されている場合があります(IAS第2号及びIAS第16号参照)。(IAS19.62)
20.確定給付制度の会計処理(保険数理人の関与)
本基準は、すべての重要な退職後給付債務の測定にあたり、資格を有する保険数理人に関与させることを企業に奨励していますが、要求はしていません。実務上の理由から、企業は、資格を有する保険数理人に、報告期間の末日前に当該債務の詳細な評価の実施を求めることもあるかもしれませんが、その場合でも、当該評価の結果は、報告期間の末日現在までの重要な取引及び他の重要な状況の変化(市場価格及び利率の変動を含む)があれば、それについて更新されなければなりせん。(IAS19.57)
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