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(平成23年1月31日現在)
8.資金生成単位の減損
資産が減損している可能性の兆候がある場合には、個別資産について回収可能価額を見積もらなければなりません。
一方、個別資産についての回収可能価額の見積りが不可能な場合には、当該資産が属する資金生成単位(当該資産の資金生成単位)の回収可能価額を算定しなければなりません。(IAS36.66)
個別資産についての回収可能価額の見積りが不可能な場合とは、具体的には当該資産が他の資産からのキャッシュ・イン・フローから概ね独立したキャッシュ・イン・フローを発生させない場合などが挙げられます。そのような場合、使用価値そして回収可能価額を、当該資産の資金生成単位についてのみ算定することができます。(IAS36.67)
資金生成単位とは、他の資産または資産グループからのキャッシュ・イン・フローとは概ね独立したキャッシュ・イン・フローを生成させるものとして識別される資産グループの単位をいいます。(IAS36.6)
<資金生成単位の識別>
個別資産について回収可能価額が算定できない場合には、企業は概ね独立したキャッシュ・イン・フローを発生させる資産の最小の集合を識別します。(IAS36.68)
資産のキャッシュ・イン・フローが概ね独立してるかどうかを識別する場合、経営者が企業の事業をどのように監視しているか(製品別、事業別、地域別など)、または、経営者が企業の資産および事業を継続するか、処分するかについてどのように決断するかなど種々の要因を考慮する必要があります。(IAS36.69)
また、資金生成単位の識別おいては以下の点についても留意が必要です。
・資産または資産グループによって生産される生産物について、活発な市場が存在する場合、たとえ、生産物の一部または全部が企業全部で使用されるとしても、当該資産または資産グループは、資金生成単位として識別しなければなりません。
・資産または資金生成単位から発生するキャッシュ・イン・フローが内部振替価格によって影響される場合には、第三者間取引で達成され得る将来の価格に関する経営者の最善の見積りを用いなければなりません。(IAS36.70)
なお、資金生成単位は、変更が正当化されない限り、同一の資産または資産の種類に対して、各期間にわたり継続的に識別しなければなりません。(IAS36.72)
<資金生成単位の回収可能価額>
資金生成単位の回収可能価額は、当該資金生成単位の「売却費用控除後の公正価値」または「使用価値」のいずれか高い金額をなります。
また、回収可能価額の測定に関する個別資産についての考慮事項は、資金生成単位についても同様に当てはまります。
資産を回収可能性を評価のためにグループ化させる場合には、当該資金生成単位には、キャッシュ・イン・フローの流れを発生させるか又は発生させるために使用される全ての資産の含むことが重要です。(IAS36.77)
<資金生成単位の帳簿価額>
資金生成単位の帳簿価額は、当該資金生成単位の回収可能価額が算定される方法と首尾一貫した基礎により算定しなければなりません。(IAS36.75)
また、当該資金生成単位に直接に帰属するか、合理的かつ首尾一貫した基礎により配分される資金生成単位の使用価値の算定に用いられる将来キャッシュ・イン・フローを生成する資産の帳簿価額のみを含めるとともに、負債の帳簿価額を含めてはいけません。(IAS36.76)
ただし、資金生成単位の処分により、買手が負債を引き受けなければならないような場合のように資金生成単位の回収可能価額を算定するために、認識されている負債の一部を考慮することが必要な場合があります。(IAS36.78)
9.のれんの減損
<資金生成単位へののれんの配分>
減損テストの目的上、企業結合により取得したのれんは、取得日以降、取得企業の資金生成単位または資金生成単位グループで、企業結合のシナジーから便益を得ることが期待されるものに配分しなければなりません(配分はそれらの資金生成単位または資金生成単位グループに被取得企業のその他の資産または負債が配分されているか否かは関係ありません)。(IAS36.80)
このとき、のれんが配分される当該資金生成単位または資金生成単位グループのそれぞれは、次のような単位またはグループでなければなりません。
・のれんが内部管理目的でモニターされている、企業内の最小の単位を示している
・集約前におけるIFRS第8号「事業セグメント」で定義された事業セグメントよりも小さい
<のれんの配分の時期>
企業結合で取得したのれんの当初の配分を、企業結合取引が生じた年度の末日までに完了することができない場合には、取得日以後開始する最初の年度の末日までに完了しなければなりません。(IAS36.84)
<のれんが配分された資金生成単位内の事業を処分した場合>
のれんが資金生成単位に配分され、企業がその資金生成単位内の事業を処分した場合、その処分される事業に関連するのれんは次のように処理しなければなりません。(IAS36.86)
・処分による利得または損失を算定する際に、その事業の帳簿価額に含める
・企業が他の処分される事業に関わるのれんをよりよく反映する方法があることを立証できない限り、「処分する事業と存続する資金生成単位との価値の比」に基づいて測定する。
<資金生成単位の構成を変更した場合>
のれんを配分した1つ又はそれ以上の資金生成単位の構成を変更したこと伴って自社の報告構造を再編した場合には、のれんは、影響する資金生成単位に再配分しなければなりません。当該再配分は、企業が他に処分される事業に関わるのれんをよりよく反映する方法があること立証できない限り、資金生成単位内の事業を処分した場合に用いる方法に類似した相対価値アプローチを用いることにより行われます。(IAS36.87)
<のれんを配分された資金生成単位の減損テスト>
のれんは、他の資産または資産グループから独立してキャッシュ・フローを生み出すことはなく、しばしば複数の資金生成単位のキャッシュ・フローに貢献します。そのため、のれんは恣意性なしでは独立した最小の資金生成単位に配分することはできず、多くの資金生成単位から構成される資金生成単位グループのみにしか配分することができない場合があります。(IAS36.81)
そのため、のれんがある資金生成単位に関連しているが、合理的かつ首尾一貫した基準で当該資金生成単位に配分できない場合で当該単位について減損の兆候がある場合には、のれんを除いた当該単位の帳簿価額と回収可能価額とを比較して減損テストを行わなければなりません。(IAS36.88)
一方、のれんが配分されている資金生成単位については、毎年、さらに減損の兆候がある場合にはその都度、のれんを含む当該単位の帳簿価額と回収可能価額との比較により減損テスト行わなければなりません。
当該単位の回収可能価額が帳簿価額を上回っている場合、当該単位とそれに配分されたのれんは減損していないものとみなしますが、当該単位の帳簿価額が回収可能価額を上回っている場合には、減損損失を認識しなければなりません。(IAS36.90)
<減損テストの時期>
のれんを配分した資金生成単位に対する毎年の減損テストは、毎年同時期に実施する限り、年度中のどの時点に実施してもよく、異なる資金生成単位は、別々の時期に減損テストを実施してもよいとされています。
ただし、ある資金生成単位に配分されたのれんの一部または全部が当年度中の企業結で取得したものである場合には、当該資金生成単位については当年度末までに減損テストを実施しなければなりません。(IAS36.96)
<減損テストの順序>
のれんが配分される資金生成単位を構成する個別資産について、のれんを含む当該単位と同じ時期に減損テストを行う場合には、当該資産は、単位にのれんが含まれる前に減損テストを行わなければなりません。
同様に、のれんが配分される資金生成単位グループを構成する資金生成単位について、のれんを含む生成単位と同時に減損テストを行う場合には、のれんを含む単位のグループについて減損テストを行う前に、個々の単位について減損テストを行わなければなりません。(IAS36.97)
のれんが配分される資金生成単位について減損テストを行う時点で、のれんを含む単位内の個別資産について減損の兆候がある場合があります。そのような状況では、企業はのれんを含む資金生成単位について減損テストを行う前に、当該資産についてまず減損テストを行います。同様に、のれんが配分される資金生成単位グループを構成する資金生成単位につて減損の兆候がある場合があります。そのような状況では、企業はのれんを含む資金生成単位グループについて減損テストを行う前に、当該単位についてまず減損テストを行い、その単位に係る減損損失があれば認識します。(IAS36.98)
<前期以前の計算結果の利用>
前期以前に行われた、のれんが配分される資金生成単位の回収可能価額についての直近の詳細な計算は、次の要件がすべて満たされていれば、当期における当該単位の減損テストにも用いてもよいとされています。(IAS36.99)
・当該単位を構成する資産および負債が、直近の回収可能価額の計算のときから著しく変化してないこと
・直近の回収可能価額の計算の結果、当該単位の回収可能価額が帳簿価額に比べて相当程度大きいこと
・直近の回収可能価額の計算時点以降に発生した事象および変化のあった状況の変化を分析した結果、当該資金生成単位についての現在の回収可能価額が、現在の帳簿価額を下回る可能性が極めて低いこと
10.全社資産の減損
全社資産とは、のれん以外の資産で、検討の対象である資金生成単位と他の資金生成単位の双方の将来キャッシュ・フローに寄与する資産をいいます。(IAS36.6)
全社資産は、他の資産または資産グループから独立してキャッシュ・インフローを発生させず、かつそれらの帳簿価額を検証対象の資金生成単位に十分に配分することはできません。(IAS36.100)
そのため、全社資産に減損の兆候がある場合は、回収可能価額は当該全社資産が所属する資金生成単位または単位グループについて決定され、対応する帳簿価額と比較されます。
資金生成単位の減損テストにあたり、企業は、検討対象となっている資金生成単位に関連するすべての全社資産を識別しなければなりません。
全社資産の帳簿価額の一部について、当該単位に合理的かつ首尾一貫した基準で配分できる場合には、当該単位の帳簿価額(当該単位に配分された全社資産の帳簿価額の一部を含む)をその回収可能価額と比較します。(IAS36.102)
当該資金生成単体に合理的かつ首尾一貫した基準で配分できない場合には、企業は下記手順で減損の検討を行わなければなりません。(IAS36.102)
① 全社資産を除く当該単位の帳簿価額と回収可能価額とを比較し、減損損失を認識する
② 検討の対象となる資金生成単位を含む、かつ全社資産の帳簿価額の一部が合理的かつ首尾一貫した基準で配分できるような、最小の資金生成単位グループを識別する
③ 全社資産の帳簿価額の一部を含む当該資金生成単位グループの帳簿価額と、当該単位グループの回収可能価額とを比較し、減損損失を認識する
11.資金生成単位、のれん、全社資産の減損損失の認識と測定
資金生成単位(単位グループ)(のれん又は全社資産が配分された最小の資金生成単位グループ)の回収可能価額が当該単位(単位グループ)の帳簿価額を下回る場合に、かつ、その場合にのみ、当該単位(単位グループ)について減損損失を認識しなければなりません。(IAS36.104)
減損損失は、次の順序に従って当該単位(単位グループ)の資産の帳簿価額を減少させるように配分します。(IAS36.104)
① 最初に当該資金生成単位(単位グループ)に配分されたのれんの帳簿価額を減額する
② 次に、当該単位内の各資産の帳簿価額に基づいた比例按分によって、当該単位内のその他の資産に対して配分する
このような帳簿価額の減額は個別資産の減損損失として取り扱い、個別資産の減損損失の方法に従って認識します。
なお、上記の減損損失を配分するにあたり、企業は、資産の帳簿価額を次の項目のうち最も高い価額を下回るまで減額してはなりません。(IAS36.105)
・売却費用控除後の公正価値(算定可能な場合)
・使用価値(算定可能な場合)
・ゼロ
上記に該当し、当該資産に配分できなかった減損損失の金額は、当該単位(単位グループ)の他の資産に比例配分しなければなりません。
以上の処理の結果、資金生成単位に対する減損損失の残額が生じた場合については、他のIFRSで要求されている場合のみ、負債が認識されます。(IAS36.108)
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