株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

IAS第18号「収益」

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(平成23年1月31日現在)

1.目的

概念フレームワークおよびIFRSでは、収益概念について「広義の収益(income)」、「狭義の収益(revenue)」、「利得(gain)」をそれぞれ使い分けて使用しています。

 

「広義の収益(income)」は、「狭義の収益(revenue)」と「利得(gain)」が含む概念です(fm74)。

 

広義の収益(income)とは、概念フレームワークにおいて「会計期間中の資産の流入、増価、負債の減少の形をとる経済的便益の増加であり、持分参加者からの出資に関連するもの以外の持分の増加を生じさせるもの」として定義されています(fm70)。

 

狭義の収益(revenue)とは、「企業の通常の活動の過程で発生し、売上・報酬・利息・配当・ロイヤルティを含むさまざまな名称で呼ばれるもの」と定義されています(fm74)。

 

 利得(gain)とは、「広義の収益の定義を満たすその他の項目を表し、企業の通常の活動の過程において発生するものと発生しないものがある」と定義されており、非流動資産の処分から発生する利得や市場性のある有価証券や固定資産の再評価により発生する未実現利益などがあります。利得(gain)は通常、包括利益計算書で別個に表示さます(fm76)。

 

 IAS18号では、狭義の収益(revenue)の会計処理を定めること、主として収益の認識規準が満たされる状況を明らかにすることを目的としています(fm76)。

そのため、本シリーズでの「収益」とは「狭義の収益」を指すことにご留意ください。

2.範囲

IAS第18号は下記の取引および事象から生じる収益の会計処理に適用されます。

 

・物品の販売

・役務の提供

・利息、ロイヤルティ、配当を生ずる企業資産の第三者による利用

 

以下に関連する収益は他の規定で扱われるためIAS第18号では適用対象外となります(18.6)。

 

・リース契約(IAS第17号「リース」)

・持分法で会計処理される投資から生じる配当(IAS第28号「関連会社に対する投資」)

・IFRS第4号「保険契約」の範囲に含まれる保険契約

・金融商品および金融負債の公正価値の変動またはそれらの処分(IAS第39号「金融商品-認識及び測定」)

・その他の流動資産の価値の変動・農業活動に関連する生物資産の当初認識および公正価値の変動(IAS第41号「農業」)

・農作物の当初認識(IAS第41号「農業」)

・鉱物の採取

 

また、プロジェクトの管理者や設計者の役務に関する契約のように、直接的に工事契約に関連するものはIAS第11号「工事契約」で示された工事契約に関する定めに従います。(18.4)

3.定義

本基準で使用する用語を下記のとおり定義しています。(IAS18.7)

 

<収益(Revenue)>

持分参加者からの拠出に関連するもの以外で、持分の増加をもたらす一定期間中の企業の通常の活動過程で生ずる経済的便益の総流入

 

-収益の総額表示と純額表示-

収益は、企業が自己の計算により受領したか、領し得る経済的便益の総流入額だけを含みます。そのため、物品税、サービス税、付加価値税のように第三者のために回収した金額や代理人として取引先のために回収した金額で、企業の持分の増加をもたらさない金額は収益には含めません。その代わり、代理人としての手数料が収益となります。(IAS18.8)

 

<公正価値(Fair Value)>

独立第三者間取引において、取引の知識がある自発的な当事者間で、資産が交換され得るまたは負債が決済され得る価額

4.測定

収益は、受領した又は受領可能な対価(値引、割戻の考慮後)の公正価値により測定しなければなりません(IAS18.9)。

 

-割賦販売など対価の繰延販売の場合-

ほとんどの場合は、対価は現金および現金同等物の形であり、収益の額は受領した現金および現金同等物の額になります。しかし、割賦販売のように現金および現金同等物の流入が繰り延べられる場合、対価の公正価値は受領する現金の名目的な金額よりも少なくなることがあります。このような場合、当該差額はIAS第39号に従い利息収益として認識しなければなりません。(IAS18.12)

5.取引の識別

本基準における認識規準は、通常それぞれの取引に個々に適用されます。

 

しかし、状況によっては、取引の実質を反映させるために、単一取引の個別に識別可能な構成部分ごとに認識規準を適用することが必要となることがあります(取引の分割)。

反対に、その経済的実質が一連の取引として考えないと理解できないような複数の取引が行われるときは、その複数の取引を一体として認識規準を適用する必要があります(取引の結合)。(IAS18.13)

 

したがって、IAS18号を適用するに当たっては、適切な取引単位で収益が認識されているかどうか検討する必要があります。

6.物品の販売の認識規準

物品の販売からの収益は、次の条件すべてが満たされたときに認識します。(IAS18.14 )

 

① 物品の所有に伴う重要なリスクおよび経済的価値を企業が買手に移転したこと

② 販売された物品に対して、所有と通常結び付けられる程度の継続的な管理上の関与も実質的な支配も企業が保持していないこと

③ 収益の額を、信頼性をもって測定できること

④ その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと

⑤ その取引に関連して発生したまたは発生する原価を、信頼性をもって測定できること

7.役務の提供の認識規準

役務の提供に関する取引の成果を、信頼性をもって見積もることができる場合には、その取引に関する収益は、報告期間の末日現在のその取引の進捗度に応じて認識しなければなりません。取引の成果は、次のすべての条件が満たされる場合には、信頼性をもって見積もることができます。(IAS18.20)

 

① 収益の額を、信頼性をもって測定できること

② その取引に関する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと

③ その取引の進捗度を、報告期間の末日において信頼性をもって測定できること

④ その取引について発生した原価および取引の完了に要する原価を、信頼性をもって測定できること

 

ただし、役務の提供に関する取引の成果を、信頼性をもって見積もることができない場合、収益は費用が回収可能と認められる部分についてのみ認識しなければなりません。(IAS18.26)

8.利息、ロイヤルティおよび配当の認識規準と会計処理

<認識>

利息、ロイヤルティおよび配当を生む企業資産を第三者が利用することにより生ずる収益は、下記条件を満たすとき認識します(IAS18.29)。

 

① 取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと

② 収益の額を、信頼性をもって測定できること

 

<会計処理方法>

上記条件を満たす場合は下記の方法で認識しなければなりません。(IAS18.30)

 

利息:IAS第39号で示されている実効金利法により認識

ロイヤルティ:関連する契約の実質に従って発生基準により認識

配当:支払いを受ける株主の権利が確定したときに認識

9.開示

収益に関する次の事項の開示が要求されています(IAS18.35)。

 

① 収益の認識に対して採用された会計方針(役務の提供において取引の進捗度を決定するために採用された方法を含む)

 

② 期間中に認識された収益の重要な区分ごとの額で以下を含みます。

 ・物品の販売

 ・役務の提供

 ・利息・ロイヤルティ

 ・配当

 

③ 収益の重要な各区分に含まれている、物品または役務の交換から生じた収益の額

10.IASBの動向

IASBとFASBに収益認識モデルの開発を目的として、2002年6月より収益認識に関する共同プロジェクトを推進しています。

両者は、当該プロジェクトの成果物として2008年12月にディスカッションペーパー「顧客との契約における収益認識についての予備的見解」を公表しています。

そして、当該DPへのコメントをもとに2010年6月24日には公開草案「顧客との契約から生じる収益」を公表しています。

 

当該公開草案が採用されれば、IAS第18号「収益」、IAS第11号「工事契約」および関連する解釈指針に置き換わる予定です。

当該公開草案の基本原則によると、企業は顧客との契約から生じる収益を、財またはサービスが顧客に引き渡された時点で、企業が顧客から受領した対価か、もしくは受領することが期待される対価の金額で認識することになります。

 

最近の収益認識に関する改正論点は順次織り込んでいく予定です。

11.我が国の動向

我が国においては、IAS18号について我が国の収益認識の実務慣行と照らし合わせた検討された結果が、「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察-(平成21年7月9日、公認会計士協会)」、「収益に関する論点の整理(平成21年9月8日、企業会計基準委員会)」として公表されています。

 

最近ではIASBとFASBより2010年6月24日に公表された公開草案「顧客との契約から生じる収益」をもとに企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成23年1月20日に「顧客との契約から生じる収益に関する論点の整理」を公表しています。

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