株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

国際財務報告基準(IFRS)の初度適用(免除規定)

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

(平成22年7月1日現在)

1.初度適用企業の免除規定(総論)

 初度適用企業は、すべてのIFRSの規定に従ったIFRS開始財政状態計算書及びIFRS財務諸表を作成しなければなりませんが、費用対効果の観点から、一部の処理について免除規定を設け、以下の事項については遡及適用をするかどうかを企業に選択できるようにしています(IFRS1.18)。

 

1 企業結合
2 株式報酬取引
3 保険契約
4 みなし原価としての公正価値又は再評価
5 リース
6 従業員給付
7 累積換算差額
8 子会社、共同支配企業及び関連会社に対する投資
9 子会社、関連会社及びジョイント・ベンチャーの資産及び負債
10 複合金融商品
11 すでに認識されている金融商品の指定
12 当初認識時における金融資産又は金融負債の公正価値測定
13 有形固定資産の原価に算入されている廃棄負債
14 IFRIC12号に従って会計処理される金融資産又は無形資産
15 借入費用
16 顧客からの資産の移転
17 資本性金融商品による負債の消滅
18 付録Eにおける短期免除

 

2.免除規定(企業結合)

 初度適用企業において、過去の企業結合(IFRS移行日前に生じた企業結合)について、IFRS3号(2008年改訂)を遡及適用しないことを選択することが認められています。ただし、IFRS3号に準拠するために企業結合を修正再表示する場合には、その後の企業結合はすべて修正再表示し、IAS27号(2008年改正)も同日から適用する必要があります(IFRS1.C1)。なお、(l)過去の企業結合に対する適用除外は、関連会社及びジョイントベンチャーに対する投資の過去の取得にも適用します(IFRS1.C5)。

 当該、免除規定を適用し、IFRS移行日前にIFRS3号を適用しない場合には、以下のような取扱いをする必要があります。

 

(a)企業結合の分類(取得者、被取得者、逆取得など)は従前の会計基準に従った処理を継続すること

(b)過去の企業結合で取得したIFRS移行日現在のすべての資産及び負債を認識すること(一部例外あり)

(c)従前の会計基準では認識していた項目のうちIFRSでは認識の要件を満たさないものはIFRS開始財政状態計算書では除外すること

(d)IFRSにおいて事後測定が原価以外のものは、その測定基準に従って再測定すること

(e)従前の会計基準における企業結合直後の帳簿価額は、IFRSにおいて当該日現在のIFRSに従ったみなし原価として処理すること

(f)従前の会計基準で認識されなかった資産・負債は、IFRSが要求する基準において被取得企業の個別財政状態計算書において認識・測定すること

(g)のれんの帳簿価額について、必要に応じた修正を行うこと

(h)のれんの帳簿価額について(g)以外の修正をしないこと

(i)従前の会計原則に従って、のれんを資本の控除として認識している場合は、のれんをIFRS開始財政状態計算書において認識しないこと

(j)過去の企業結合で取得した子会社を連結していないときは、当該子会社の資産及び負債の帳簿価額を、子会社の個別財政状態計算書においてIFRSが要求するであろう金額に修正する

(k)非支配持分と繰延税金の測定は、他の資産及び負債の測定の結果として修正すること

3.免除規定(株式報酬取引)

 IFRS2号「株式報酬」を2002年11月7日以前に付与された資本性金融商品に対して適用すること等が推奨され、経過措置が定められています。これに合わせてIFRS1号においても経過措置と同様の位置づけとして免除規定が設けられています。

4.免除規定(保険契約)

 IFRS4号「保険契約」について、経過措置を適用することを認める規定です。

5.免除規定(みなし原価としての公正価値又は再評価)

 IFRS移行日現在で、ある有形固定資産項目を公正価値で測定し、その公正価値を当該日現在のみなし原価として使用することができます(IFRS1.D5)。みなし原価とは、ある特定の日現在の原価又は償却後原価の代用として用いられる金額のことで、事後の減価償却又は償却は、企業がその資産又は負債をその特定の日に当初認識し、その原価がみなし原価に等しかったものと仮定して、計算が行われます(IFRS1.A)。

 また、初度適用企業は、IFRS移行日現在又はそれ以前における、ある有形固定資産項目の従前の会計原則に従った再評価が、再評価日の時点で、公正価値もしくはIFRSに準拠した原価又は償却後原価(一般物価指数又は個別物価指数により調整したもの)と概ね同等である場合には、それを再評価日現在のみなし原価として使用することができます(IFRS1.D6)。

 なお、IAS40号「投資不動産」における原価モデルを使用している投資不動産、IAS38号「無形資産」の認識基準及び再評価の要件を満たす無形資産についても同様にみなし原価が認められています(IFRS1.D7)。それ以外にも2009年のIFRS1号の改訂により、石油及びガス資産の測定に関して、みなし原価の適用が認められました(IFRS1.D8A)。

6.免除規定(リース)

 初度適用企業は、IFRIC4号「契約にリースが含まれているか否かの判断」の経過措置を適用することができます。したがって、初度適用企業は、移行日時点で存在する事実と状況をもとに、IFRSへの移行日時点で存在する契約にリースが含まれているか否かを判断することになります(IFRS1.D9)。

7.免除規定(従業員給付)

 企業が回廊アプローチを選択した場合、当該制度の開始日からIFRS移行日までの数理計算上の差異の累積額を、認識済みの部分と未認識の部分とに分解する必要がありますが、初度適用企業は、数理計算上の差異の累積額の全額をIFRS移行日時点で認識することを選択することができます。ただし、初度適用企業がこの選択を用いる場合には、すべての制度について適用しなければなりません(IFRS1.D10)。 

8.免除規定(累積換算差額(為替換算調整勘定))

 初度適用企業は、IFRS移行日にIAS21号「外国為替レートの変動」を適用せず、以下の免除規定を採用することができます。

 

(a)すべての在外営業活動体に係る累積換算差額を、IFRS移行日現在でゼロとみなす。

(b)在外営業活動体のその後の処分による損益は、IFRS移行日前に生じた換算差額を除外し、その後の換算差額を含めなければならない。

9.免除規定(子会社、共同支配企業及び関連会社に対する投資)

 IAS27号「連結及び個別財務諸表」において、子会社、共同支配企業及び関連会社に対する投資は、取得原価もしくはIAS39号準拠による処理のいずれかとなります。この際に、取得原価で算定するとした場合、IAS27号に従って算定した取得原価だけでなく、みなし原価も認められています。この際のみななし原価は、IAS39号に従って算定されたIFRS移行日現在の公正価値もしくは従前の会計原則による帳簿価額となります(IFRS1.D15)。

10.免除規定(子会社、関連会社及びジョイント・ベンチャーの資産及び負債)

 子会社が親会社よりも後で初度適用企業となる場合には、当該子会社は、その個別財務諸表において、資産及び負債のいずれかにより測定しなければなりません(IFRS1.D16)。

 

(a)親会社のIFRS移行日を基礎として、親会社の連結財務諸表に含められていたであろう帳簿価額(連結手続及び企業結合の影響について修正前の場合)

(b)子会社のIFRS移行日を基礎として、IFRS1号に準拠した帳簿価額。

 

 (b)の結果は、IFRS1号の免除規定を適用して測定した場合や子会社の財務諸表における会計方針が連結財務諸表の会計方針と異なる場合には、上記(a)と結果が異なることがあります。 

 なお、子会社が先に初度適用企業となっている場合には、当該子会社の資産及び負債を、当該子会社の個別財務諸表と同じ帳簿価額で測定することになります(IFRS1.D17)。

11.免除規定(複合金融商品)

 IAS32号「金融商品:表示」を適用すると、複合金融商品を当初に負債部分と資本部分に分離した場合、負債部分の残高がなくなっているケースがあります。この場合、資本部分において、負債部分の金利の累積額となる利益剰余金の資本部分と、当初の資本部分との2つに区分する必要が生じます。しかし、本基準ではIFRS移行日の時点で負債部分の残高がない場合には、これらの2つの部分を区分する必要はありません(IFRS1.D18)。

12.免除規定(すでに認識された金融商品の指定)

 IAS39号では、金融資産を当初認識する時点で売却可能資産か公正価値測定資産かを決定し、それに従った会計処理をる必要があります。しかし、初度適用企業では、当初認識ではなく、IFRS移行日時点での選択を認めています(IFRS1.D19)。

13.免除規定(当初認識時における金融資産又は金融負債の公正価値測定)

 IAS39号AG76項及びAG76A項(つまり、“Day1損益”)の規定について、2002年10月25日後に実行される取引から将来に向かって適用する場合と2004年1月1日後に開始した取引から将来に向かって適用する場合が認められます(IFRS1.D20)。遡及適用となると事務的な対応が困難になることが予想されるためです。

14.免除規定(有形固定資産の原価に算入される廃棄負債)

 IFRIC1号「廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存の負債の変動」により、廃棄、原状回復及びそれらに類似する負債の特定の変動については、関係する資産の原価に還元することになりますが、初度適用企業は、IFRS移行日以前に発生しているそうした負債の変動に関しては、これらの定めを遵守する必要はなく、適用除外が認められています。適用初度企業がこの適用除外を適用する場合には、以下のとおりとします。

 

(a)IAS37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従ってIFRS移行日時点で負債を測定する

(b)負債がIFRIC1号の適用範囲内となる限りにおいて、負債が最初に発生した時点で関連資産の原価に算入されていたであろう金額を、リスク調整後割引率(介在期間にわたり適用することになっていたであろうリスク調整後の割引率の最善の見積り)を使用して、移行日時点までの負債を割引計算する。

(c)資産の耐用年数の現在見積りを基に、IFRSに従って企業が採用する減価償却方針を用いて、IFRS移行日時点の当該金額の減価償却累計額を算定する。

 

 なお、石油及びガス資産の探査及び開発コストに関する免除規定を適用する場合は、IFRS移行日現在の廃棄、原状回復およびそれらに類する負債をIAS37号に従って測定するか、上記の測定額と従前の会計基準において算定されたIFRS移行日現在の負債金額との差額を利益剰余金において直接認識します(IFRS1.D21A)。

15.免除規定(IFRIC12号に従って会計処理される金融資産又は無形資産)

 初度適用企業は、IFRIC12号「サービス委譲契約」の経過措置を適用することができます(IFRS1.D22)。

16.免除規定(借入費用)

 初度適用企業は、IAS23号「借入費用」(2007年改訂)の経過措置を適用することができます。それらの項における発効日の参照は、2009年1月1日又はIFRS移行日のいずれか遅い方の日に読み替えるものとします(IFRS1.D23)。

 

17.免除規定(顧客からの資産の移転)

 IFRIC18号「顧客からの資産の移転」の経過措置として、2009年7月1日もしくはIFRS移行日から適用することを認めています。また、IFRS移行日より前の日を指定して、そこから適用することも認めています(IFRS1.D24)。

18.免除規定(資本性金融商品による負債の消滅)

 初度適用企業は、IFRIC19号「資本性金融商品による負債の消滅」の経過措置を適用することが認められています(IFRS1.D25)。

19.付録Eにおける短期免除

 IFRS9号を早期適用する場合における取扱いを定めた免除規定などが設けられています(IFRS1.E1,E2)。

前へ  次へ

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

お問い合わせ

PAGETOP