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シリーズ<6> 財務報告に係る内部統制の構築

1.はじめに

 本シリーズ6では、財務報告に係る内部統制の構築について解説します。シリーズ5までに示した内部統制の基本的な枠組みを踏まえて、財務報告に係る内部統制を構築していきます。実際に内部統制を構築する場合には、現状において実施されている業務内容を把握しながら、十分ではない箇所(内部統制の不備)を改善していく作業になると考えられます。シリーズ6では、まず財務報告係る内部統制構築の要点について確認し、その後、構築プロセスについて解説していきます。

2.財務報告に係る内部統制構築の要点

 財務報告に係る内部統制を構築していく場合は、シリーズ2からシリーズ5まで解説した基本的な枠組みを考えていくことになります。ただ、実際に内部統制を構築していく場合には、現状の事業内容に合わせて、個別具体的に考えていく必要があります。

 ここでは、財務報告に係る内部統制の構築に関して、重要となる点を簡単に確認します。経営者は、以下に挙げるような事項を確認し、何らかの不備があった場合には、必要に応じて改善を図ることが求められます。

 

≪内部統制構築の確認事項≫

  • 適正な財務報告を確保するための全社的な方針や手続が示されるとともに、適切に整備及び運用されていること
  • 財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクへの適切な評価及び対応がなされること
  • 財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクを低減するための体制が適切に整備及び運用されていること
  • 真実かつ公正な情報が識別、把握及び処理され、適切な者に適時に伝達される仕組みが整備及び運用されていること
  • 財務報告に関するモニタリングの体制が整備され、適切に運用されていること
  • 財務報告に係る内部統制に関するITに対し、適切な対応がなされること

3.財務報告に係る内部統制構築のプロセス

 内部統制の構築プロセスは、基本的に、左図のような流れに沿って行われると考えられます。

 経営者による基本的計画及び方針の決定から始まって、内部統制の整備状況の把握、把握された内部統制の不備への対応へと続きます。どの会社も当然内部統制は存在しており、内部統制報告制度が始まったことを理由に構築されていくものではありません。しかし、今まで財務報告との関連において強く意識していなかった内部統制に対して、その整備状況を把握していく過程で、内部統制の不備が発見されていく可能性は十分にあります。この場合、発見された内部統制の不備に対しては是正措置を講ずるといった適切な対応が図られていきます。これが、“構築”の意味になります。内部統制報告制度は、内部統制の不備を発見することが目的ではなく、財務報告の信頼性を確保することが目的です。このため、内部統制の不備を発見した場合には、適時・適切に是正措置を講じ、内部統制報告制度の実施までに、改善していくことが期待されています。

 以下では、それぞれの段階において留意すべきことを中心に解説していきます。

(1)基本的計画及び方針の決定


 会社法の規定によって、内部統制の基本方針は取締役会が決定することになりましたので、経営者は、取締役会の決定を踏まえて、財務報告に係る内部統制を組織内の全社的なレベル及び業務プロセスのレベルにおいて実施するための基本的計画及び方針を定めていく必要があります。当然ですが、内部統制の構築は、経営者の一貫した方針の下で実施されることが重要です。経営者が定めるべき基本的計画及び方針としては、例えば、以下のようなものが挙げられます。

 

≪基本的計画と方針≫

  • 適正な財務報告を実現するために構築すべき内部統制の方針・原則、範囲及び水準
  • 内部統制の構築に当たる経営者以下の責任者及び全社的な管理体制
  • 財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクを低減するための体制が適切に整備及び運用されていること
  • 内部統制の構築に必要な手順及び日程
  • 内部統制の構築に係る個々の手続に関与する人員及びその編成並びに事前の教育・訓練の方法等

 内部統制の方針・原則、範囲及び水準としては、今般の内部統制報告制度において、どのように対応していくのか、内部統制の評価範囲はどの程度にするのか、評価レベルをどの程度にするのか、といった基本的な枠組みについて計画します。これは、取締役会等で決定された方針をそのまま採用することも考えられます。

 次に、内部統制プロジェクトのリーダーを決定し、どのような管理体制で臨むのかを決定します。これに付随する形で、プロジェクトの進行手順や日程などを同時に決定していきます。

 最後に、内部統制プロジェクトに参加するチーム・メンバーを全社的な視点から横断的に選抜していきます。内部統制は、各業務プロセスに係る内部統制の部分を構築していく必要もあるため、各事業部から業務プロセスを構築していくメンバーを選抜する必要があるわけです。なお、これらの選抜されたメンバーは、プロジェクトのコア・メンバーと考えられますが、業務プロセスについてはプロセス・オーナーと呼ばれる各業務プロセスの責任者が、その業務プロセスから選抜されたメンバーを後方支援していきます。

また、あまり大規模ではない会社の場合には、経理部の方を中心にプロジェクト・チームを組成し、必要に応じて各事業部の方々にヒアリングを実施するといった方法が採用されることもあります。

(2)内部統制の整備状況の把握


 内部統制の基本的計画及び方針が決定された後、組織内では、内部統制の整備状況を把握していくことになります。現状において、どのような内部統制が整備されているのか理解するところから始まります。

 財務報告に係る全社的な内部統制については、既存の内部統制に関する規程、慣行及びその遵守状況等を踏まえ、全社的な内部統制の整備状況を把握していきます。特に、暗黙裡に実施されている社内の決まり事等がある場合には、それを明文化しておくことが重要です。シリーズ1でも記述しましたが、内部統制は監査を受ける必要があるため、暗黙裡に行われているような事項は、監査上では規程が存在しないため、「整備されていない」と判断される可能性が高く、属人的に行われている事項や暗黙裡に実施されている事項については、しっかりと明文化させておく必要があります。

 また、財務報告に係る業務プロセスにおける内部統制については、重要な業務プロセスについて、例えば、次のような手順で内部統制の整備状況を把握していきます。

 

@組織の重要な各業務プロセスについて、取引の流れ、会計処理の過程を、必要に応じ図や表を活用して整理し、理解する。

Aこれらの各業務プロセスについて虚偽記載の発生するリスクを識別し、それらのリスクがいかなる財務報告又は勘定科目等と関連性を有するのか、また、識別されたリスクが業務の中に組み込まれた内部統制によって、十分に低減できるものになっているか、必要に応じ図や表を活用して、検討する。

 

 この@が、いわゆる業務フローチャートの作成と業務記述書の作成にあたり、AがいわゆるRCMの作成に該当することになります。内部統制の整備状況の理解とリスクと内部統制の関連性を把握するために、いわゆる“文書化3点セット”は作成されているのです。

(3)把握された不備えの対応及び是正


 (2)で把握した内部統制の整備状況の把握の過程で把握された問題点については、内部統制の不備として適切な対応を図る必要があります。シリーズ10でも解説しますが、内部統制の不備をそのまま放置している場合、もしそれが内部統制上において重要なものであれば、内部統制上の重要な欠陥として判断され、内部統制報告書の記載対象となります。このため、内部統制プロジェクト・チームは、内部統制の基本的計画及び方針に基づいて、不備の是正措置をとっていきます。

 全社的な内部統制について問題がある場合には、取締役会や監査役なども含めて、経営者レベルで是正措置を講ずる必要があります。この全社的な内部統制の不備は、内部統制監査において重要なポジションと占めることになりますので、不備を放置している場合には、重要な欠陥へと発展する可能性が非常に高いと言えます。

 また、業務プロセスに係る内部統制については、プロジェクト・リーダーが、各業務プロセスのプロジェクト・メンバーとプロセス・オーナーと一緒に是正措置を講じていくことになります。これらの関係者の間で話し合われた内容は、経営者等の上席者に報告され、関連諸規程が改訂・整備されていくのが一般的です。改訂又は新規に整備された内部統制は、関連部署へ伝えられ、社内研修等を通じて、内部統制としてまた新たに運用されていくことになります。 

金融商品取引法で求める内部統制報告制度は、財務報告の信頼性を確保することが目的であって、財務報告に係る内部統制の不備は、内部統制報告に先立って、適切に対応及び是正されていることが期待されています。このため、経営者は、内部統制報告の実施までに、自社内の内部統制が有効なものとなるよう改善していくことが求められています。

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