株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

非流動性ディスカウントとは

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(平成23年11月30日現在)

6-1.非流動性ディスカウントとは

 非流動性ディスカウントとは、株式の流動性が存在しない、もしくは小さいことから評価額を割り引く価値部分のことをいいます。『流動性』とは、株式を現金化するための容易さを示すもので、上場株式のように株式市場で容易に現金化できるケースでは「流動性が高い」といい、非上場企業のように譲渡制限株式となっているケースでは「流動性が低い」といいます。

 流動性が低いケースでは、投資家は現金化する自由が奪われるため、その分リスクが高まり、それに対応するプレミアムを要求することになります。このため、流動性リスクに合わせて評価額からディスカウントを受けることになり、それが非流動性ディスカウントになります。

 

 非流動性ディスカウントがどの程度とするかは実務的に非常に難しいものがあります。非上場企業の取引内容が公開されることはほとんどないため実証的に評価するのが難しいのが1つの要因です。参考として利用できるのは、IPOにおける目論見書等によって把握でき直近増資・売買事例による取引価格とIPO時における株式市場の株価との差額として非流動性ディスカウントを判断することが考えられます。この場合は、少数株主価値による非流動性ディスカウントを示すことになります。

 また、流動性の程度は会社の状況によっても大きく異なります。すなわち、会社が設立されたばかりの超アーリーステージと上場目前の企業とでは流動性リスクのレベルが大きく異なります。業種・国によってはM&A市場が活発なケースもあって、この場合、買収企業はM&A等によって転売することで流動性リスクを抑制することができ、それほど非流動性ディスカウントを考慮する必要がないかもしれません。

 

 非流動性ディスカウントについては、十分な実証研究や統計データが公表されているわけでもないので、非流動性ディスカウントは評価実務においても主観的な判断が入りやすい分野ともいえます。評価実務では、合理的な非流動性ディスカウントを想定することが重要であると言えます。

6-2.DCF法と非流動性ディスカウント

 実務において、DCF法を用いて評価された評価額に対し、非流動性ディスカウントとして例えば70~80%を乗じて評価するケースが時折、散見します。しかし、この方法は、DCF法の評価方法と整合的ではなく、理論的に誤った評価方法と言わざるを得ません。

 

 DCF法は、将来キャッシュ・フローをWACC等の割引率を用いて評価する方法です。DCF法そのものは非流動性ディスカウントは一切関係なく、将来キャッシュフロー流列の現在価値の合計でしかありません。このため、評価対象企業の株式に流動性リスクがあるかどうかはDCF法によって評価された結果には関係がないのです。このため、DCF法による評価額に非流動性ディスカウントとして70%~80%を乗じることは評価額としては誤りであると言えます。

 

 一方で、流動性リスクは株式の期待収益率に反映させるべきものです。非流動性ディスカウントは、流動性リスクとして割引率に反映させて、流動性リスクが反映されたWACCを用いてDCF法を適用し、非流動性ディスカウントが反映されている評価額とすることができます

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