株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

コントロール・プレミアムとは

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(平成23年11月30日現在)

5-1.コントロール・プレミアムとは

 コントロール・プレミアム(Control Premium)とは、企業を支配する株主が保有する支配権に相当する価値のことをいいます。

 株式市場における株価は、少数株主同士で売買する株価であり、このコントロール・プレミアムは加算されていません。支配株主の株式価値を支配株主価値といい、少数株主の株式価値を少数株主価値とよびますが、コントロール・プレミアムは少数株主価値と支配株主価値との差額に該当することになります。一方、支配株主価値から少数株主価値をみた場合、その割引かれる部分をマイノリティ・ディスカウント(Minority Discount)といいます。コントロール・プレミアムとマイノリティ・ディスカウントは、少数株主価値と支配株主価値との差額であって同じものを指しますが、その方向性が異なります。

 

 コントロール・プレミアムは、一般的に合意された算定方法は存在しません。このため、M&AもしくはTOB等で提示される買収価額と公表前の株価との差額をコントロール・プレミアムとして表現することがしばしば行われます。しかし、正確には買収価額はコントロール・プレミアム以外にもシナジー効果(Synagy)が買収プレミアムに含まれていると考えられます。このため、買収価額と株式市場株価との差額がコントロール・プレミアムとはいえません。それでも、コントロール・プレミアムとシナジー効果部分を区分することが非常に難しいことから実務的にはこの2つを区分しないでコントロール・プレミアムということが多いように思われます。

5-2.コントロール・プレミアムと評価方法

 それぞれの評価方法にコントロール・プレミアムがどのように組み込まれているのか、以下のとおり解説します。

 

(1) アセット・アプローチとコントロール・プレミアム


 アセット・アプローチは、資産・負債をベースに株式価値を評価する方法です。このため、資産・負債の利用方法は支配株主が決定することを鑑みれば、資産・負債をベースにしたアセット・アプローチは、支配株主価値といえます。このため、アセット・アプローチによる評価は一般的にコントロール・プレミアムが加味されていると考えられます。逆説的に言えば、アセット・アプローチによって少数株主価値を算定する場合には、アセット・アプローチで評価された評価額からマイノリティ・ディスカウントを適用することになります。

 

(2) マーケット・アプローチとコントロール・プレミアム


 マーケット・アプローチの場合、類似公開企業比較法であれば少数株主価値、類似取引比較法であれば支配株主価値となると一般的に言われています。類似公開企業比較法は、少数株主価値として評価されている市場株価に基づく倍率を用いて株式価値を算定するため、少数株主価値と言われます。一方、類似取引比較法では、支配株主価値を含められた過去のM&AやTOB価格を基礎にした倍率を用いて株式価値を算定するため、支配株主価値と言われているのです。

 しかし、株式市場で算定される倍率は類似公開企業の収益率を基礎にしていることから、中立的な株式収益率(期待率)を基礎にした倍率に支配株主価値と少数株主価値といった違いが含まれているとは理論的に考えられないという考えもあります。確かに、支配株主が支配株主のみのための利益を最大化させるような行動はとれないし、収益については支配株主と少数株主の両方に対して中立的に、平等に与えられるものであるから、倍率そのものに支配株主価値と少数株主価値の違いを見出すことに整合性が取れないように思えます。どちらかというと、倍率を乗じる側の収益やキャッシュフロー、財務数値が支配株主に属するものなのか、少数株主に属するものなのかによって、その評価額が支配株主価値に該当するのか、少数株主価値に該当するのかを決定するものと考えるのが整合的といえます。 

 

(3) インカム・アプローチとコントロール・プレミアム


 インカム・アプローチでは、分子に用いられる収益、キャッシュフローによって支配株主価値と少数株主価値のそれぞれを示すことになります。

 上記のマーケット・アプローチによる議論と同様、分母の割引率がCAPMといった株式市場を用いて算定されたものであるため、これにより計算されるインカム・アプローチは少数株主価値であるという議論があります。しかし、上記でも解説した通り、CAPMの基礎となる収益率は支配株主と少数株主に対して中立的、平等であるため、そのCAPMによって算定された割引率(WACC)には支配株主と少数株主の属性はないものと考えられます。

 なお、DCF法を採用する場合、事業計画に基づいて算定される将来キャッシュ・フローが支配株主の意思が反映されたキャッシュフローとなる可能性が高いため、DCF法により算定された評価額は支配株主価値となる可能性が高いといえます。しかし、事業計画が支配株主に帰属するキャッシュフローであるというわけではないので、将来キャッシュ・フローが支配株主価値ベースなのか少数株主価値ベースなのかを十分に検討していく必要はあると考えられます。

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