株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

内部統制基準および内部統制実施基準の平成23年改訂について(2/3)

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3.内部統制の効率的な運用手法を確立するための見直し

内部統制の効率的な運用手法を確立するため、下記の見直しが行われています。

 

① 内部統制の評価手続の簡素化・明確化

 

全社的な内部統制の評価範囲および業務プロセスに係る内部統制いおける評価範囲および評価方法について、簡素化・明確化するための改訂が行われました。

 

・全社的な内部統制の評価範囲の明確化

全社的な内部統制の評価対象外とできる「財務報告に対する影響の重要性が僅少である事業拠点」について、売上高で全体の95%に入らないような連結子会社を例示するなど明確化。また、各連結子会社の事業の内容等に応じ、異なる基準を適用する方法も含まれる点を明確化。

 

・全社的な内部統制の評価方法の簡素化

全社的な内部統制の評価項目(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす評価項目を除く)のうち、前年度の評価結果が有効であり、かつ、前年度の整備状況に重要な変更がない項目については、前年度の運用状況の評価結果を継続して利用することが可能であること、全社的な内部統制の評価項目の運用状況の評価について、一定の複数会計期間内に一度の頻度で実施されることがあること(ローテーション)を明確化。一定の複数会計期間については、当該業務プロセスの重要性等を勘案し、適切に判断する必要がある。

全社的な内部統制の評価を個々の子会社や事業部単位等の単位で実施している場合には、財務報告の信頼性に与える影響の重要性を勘案し、当該評価単位ごとに前年度の運用状況の評価結果を継続して利用するか否か判断することができる点も明示。

 

・業務プロセスに係る内部統制の整備及び運用状況の評価範囲の更なる絞り込み

前年度の評価範囲に入っていた重要な事業拠点のうち、1)前年度の評価結果が有効であり、2)整備状況に重要な変更がなく、3)重要な事業拠点のの中でも、グループ内での中核会社ではないなど特に重要な事業拠点でないことを確認できた場合、当該事業拠点を本年度の評価対象としないことが可能。この場合には、結果として、売上高等の概ね3分の2を相当程度下回る場合があり得ることを明記。

 

また、評価範囲となった重要な事業拠点のうち、事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスで、評価対象外とできる影響の重要性が僅少である業務プロセスを明確化。具体的には、売上を「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」としている場合において、売上に至る業務プロセスの金額を合算しても連結売上高の概ね5%程度以下となる業務プロセスを、重要な事業又は業務との関連性が低く、財務報告に対する影響の重要性も僅少なものとして評価の対象からはずすといった取扱いはありうるものと明示。

 

・業務プロセス(IT全般統制およびIT業務処理統制を含む)に係る内部統制の評価手続の簡素化・明確化

統制上の要点として識別された内部統制の整備状況の評価は、原則として毎期実施する必要があるが、1)全社的な内部統制の評価結果が有効である場合、統制上の要点として識別された内部統制(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼすものを除く)のうち、2)前年度の評価結果が有効であり、かつ、3)前年度の整備状況と重要な変更がないものについては、その旨を記録することで、前年度の整備状況の評価結果を継続して利用することができること、および、これにより当該整備状況の評価について、一定の複数会計期間内に一度の頻度で実施されることがあること(ローテーション)を明確化。

 

統制上の要点として識別された内部統制の運用状況の評価は、原則として毎期実施する必要があるが、1)全社的な内部統制の評価結果が有効である場合、統制上の要点として識別された内部統制(財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼすものを除く)のうち、2)前年度の評価結果が有効であり、かつ、3)前年度の整備状況と重要な変更がないものについては、その旨を記録することで、前年度の運用状況の評価結果を継続して利用することができること、および、これにより当該運用状況の評価について、一定の複数会計期間内に一度の頻度で実施されることがあること(ローテーション)を明確化。

 

また、経営者の行った重要な事業拠点の選定過程や結果、評価対象とした業務プロセスが適切でないと監査人が判断した場合、監査人は、財務報告に対する影響の程度等に応じ、追加的な対応を求めるものとし、経営者に対し追加的な対応を常に求めるものではない点を明確化。

 

・サンプリングの合理化・簡素化

経営者が行ったサンプリングのサンプルを監査人が自らのサンプルとして利用できる範囲を拡大するとともに、経営者による評価結果についても利用できることを明確化。

具体的には、反復継続的に発生する定型的な取引について、経営者が無作為にサンプルを抽出しているような場合(IT業務処理統制を含む)には、統制上の要点として選定した内部統制ごとに、経営者が抽出したサンプルの妥当性の検討を行ったうえで、監査人は当該サンプル一部のみならず全部を利用することができると改訂。

また、前年度において、内部統制の評価結果が有効であった業務プロセス(IT業務処理統制を含む)に係る内部統制の運用状況の評価に当たっては、当該業務プロセスに係る内部統制の整備状況に重要な変更がないなど新たに確認すべき事項がない場合、経営者が評価において選択したサンプル及びその評価結果を利用するなど効率的な手続の実施に留意する旨の明示。

 

・持分法適用となる関連会社に係る評価・監査方法の明確化

持分法適用となる関連会社の評価方法について、海外の関連会社等で、質問書の送付、聞き取りあるいは当該関連会社で作成している報告等の閲覧等適切な方法をとることが困難な特段の事情がある場合には、当該関連会社等に対する投資損益の把握などの管理プロセスを確認することも適切な方法に含まれることを明確化。

さらに、持分法適用となる関連会社が他の会社の子会社であって、当該関連会社の親会社が金融商品取引法に基づき内部統制報告書を作成し監査を受けている場合、「当該親会社の内部統制報告書」または「当該親会社が当該関連会社の財務報告に係る内部統制の有効性に関して確認を行っている旨の書面」を利用することができることを明確化。

 

 

② 「重要な欠陥」の判断基準の明確化、「やむを得ない事情」に関する例示の改訂

 

「重要な欠陥」(改訂後は「開示すべき重要な不備」)の判断基準の明確化や「やむを得ない事情」の生じた時期の例示の改訂が行われています。

 

・「重要な欠陥」の判断基準の明確化

金額的重要性について、下記事項を明確化。

連結総資産、連結売上高、連結税引前利益などは評価対象年度の実績値のみならず、それぞれの過去の一定期間の実績値の平均値等の使用も含む
例年と比較して連結税引前利益の金額が著しく小さくなった場合や負になった場合には、必要に応じて監査人との協議の上、(連結税引前利益の)例えば5%ではなく、必要に応じて比率の修正や指標の変更を行うことがあり得る
連結税引前利益において特殊要因の除外等があり得る

 

 ・M&A等により、新たにグループ会社に加わった会社等に対する内部統制の評価・監査の方法等の明確化

他企業を買収または合併したこと、災害が発生したこと等の事由が生じたことにより、通常要する期間内に評価手続を実施できない場合など評価範囲から外すことができる「やむを得ない事情」の生じた時期として、「下期」が例示されるとともに(改訂前は「期末日直前」が例示)、合理性が認められる場合には、「下期」に限られないことを明確化。

 

 

③ 中堅・中小上場企業に対する簡素化・明確化

 

中堅・中小企業の評価手続や評価手続に関する記録に関して簡素化・明確化が行われています。

 

 ・業務プロセスの評価手続の合理化

事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等の内部統制の運用状況の評価においては、特に、それぞれの組織の状況等に応じ、評価方法を工夫して効率的に実施できることを明確化。

具体的には、一律に、通期あるいは組織内の各階層(例えば、部長レベル、担当レベル等)において必ず評価が求められるものではないことを明確化。

 

・代替手続の容認

事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等においては、経営者が直接行ったモニタリングの結果や監査役が直接行った棚卸の立会の結果などを内部統制監査において利用可能であることを明確化。

 

・評価手続等に係る記録及び保存の簡素化・明確化

事業規模が小規模で、比較的簡素な構造を有している組織等においては、様々な記録の形式・方法をとりうる点を明確化。

具体的に利用できる社内作成書類(当該会社の経営者からの社内への通達、後任者への伝達文書、受注の際の作成文書等)を例示するとともに、監査人も当該記録が利用可能であることも明確化。

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