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1.はじめに
平成18年6月に成立した金融商品取引法により、上場会社を対象に財務報告に係る内部統制の経営者による評価と公認会計士等による監査が義務付けられ(内部統制報告制度、いわゆるJ-SOX制度)、平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用されています。
そうした中、制度導入後2年が経過し、①実際に制度を実施した上場企業等の経験を踏まえ、内部統制の基準・実施基準等の更なる簡素化・明確化、特に中堅・中小上場企業の実態に即した簡素化・明確化等を求める要望・意見が多く寄せられていたこと、②平成20年3月に公表した内部統制報告制度の円滑な実施に向けた対応において、「制度導入後、適時にレビューを行い、その結果を踏まえ、必要に応じ、内部統制の評価・監査の基準・実施基準の見直しや更なる明確化等を検討」することとされていたこと、③平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」においても、中堅・中小企業に係る内部統制報告制度等の見直しが、具体的な実施事項として記載されていたこと、から金融庁の企業会計審議会において、平成22年5月から内部統制の基準・実施基準の更なる簡素化・明確化等が審議検討がなされていました。
そして、平成22年12月に公表された公開草案に寄せられた意見等を踏まえ、更に審議を行い、基準・実施基準案の内容を一部修正して、平成23年3月30日に金融庁の企業会計審議会から「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下「内部統制基準」という。)および「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下「内部統制実施基準という」。)が公表されました。
主な改訂内容は下記のとおりとなります。
(1) 企業の創意工夫を生かした監査人への対応の確保
(2) 内部統制の効率的な運用手法を確立するための見直し
(3) 「重要な欠陥」の用語の見直し
(4) 効率的な内部統制報告実務に向けての事例の作成
2.企業の創意工夫を生かした監査人への対応の確保
企業の創意工夫を生かした監査人の対応の確保するため、具体的に下記内容の改訂が行われています。
① 経営者が実施する内部統制の評価方法等への理解・尊重
内部統制をどのように整備し、運用するかは、個々の企業等がおかれた環境や事業の特性、規模等によって異なるものであり、一律に示すことは適切ではなく、経営者には、それぞれの企業の状況等に応じて、内部統制の機能と役割が効果的に達成されるよう、自ら適切に創意工夫を行っていくことが期待されています。しかし、実態としては、監査人に企業独自の内部統制の手法を尊重してもらいえないという意見が寄せられました。そこで、「監査人は、内部統制の基準・実施基準等の内容や趣旨を踏まえ、経営者による会社の状況等を考慮した内部統制の評価の方法等を適切に理解・尊重した上で内部統制監査を実施する必要があり、各監査人の定めている監査の手続や手法と異なることをもって、経営者に対し、画一的にその手法等を強制することのないように留意する」ことが実施基準で明記されることになりました。
② 小規模組織等への監査人の指導的機能の発揮へ留意
事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している組織等の場合には、当該組織等の内部統制の構築や評価における経営資源配分上の制約から、監査人に対して効率的な内部統制対応に係る相談等を行うことがありますが、監査人が独立性の観点から、相談に応じてない場合が見受けられることから、監査人は、経営者からの相談に対しては、内部統制の有効性を保ちつつ、特に効果的かつ効率的な内部統制の構築や評価を行うとの観点から、指導的機能の適切な発揮に留意することが明確化されました。
③ 内部統制監査と財務諸表監査の一体化による効果的かつ効率的な監査の実施
監査人は、経営者による内部統制の整備並びに運用状況及び評価の状況を十分理解し、監査上の重要性を勘案しつつ、内部統制監査と財務諸表監査が一体となって効果的かつ効率的に実施する必要があることに留意することが明確化されました。
また、経営者が行った内部統制の評価の検討に当たって、監査人は、財務諸表監査の実施過程において、一定の監査証拠を入手していることが通常であると考えられ、その場合には、その利用が可能であることに留意する必要があります。
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