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債券の評価に関する基本

(平成23年7月1日現在)

2−1.債券の特徴

 債券(bond)は、株式(equity)とならぶ代表的な金融商品です。伝統的な投資手法といえば、債券投資か(公開)株式投資のどちらかで、これ以外の投資を近年では「オルタナティブ投資(alternative investment)」といい、非常に活発的になってきています。オルタナティブとは「代替的な」という意味で、すなわち、債券投資と公開株投資「以外」の投資を意味しています。

 

 債券は、調達サイドで考えると、金融負債(financial debt)です。つまり、債券は「負債」であり、債券によって調達した資金は返済することが原則となります。このため、投資家サイドの視点からすれば、株式に比べて投下資本の回収が容易であり、リスクが低いものと言えます。

 また、債券は、原則的に、キャッシュの発生タイミングと発生額が発行時に決められています。すなわち、決められた利払い日に、決められた利率で利息が支払われ、決められた元本返済日に元本が返済されます。このため、株式に比べれば容易(もしくは客観的)にキャッシュ・フローを見積もることができます。

 そして、債券は、株式と同様、有価証券(security)です。このため、債権(receivable)と異なり、流通する可能性があるため、市場価格(ないし公表価格)や取引価格が存在する可能性があります。

 

[債券の特徴]

  • 元本は返済される。
  • キャッシュの発生タイミングと発生金額は決められている。
  • 有価証券である。

 

 しかし、デリバティブ(derivatives)の発展により、コーラブル債、転換社債、仕組債といったデリバティブが組み込まれた金融商品が開発されており、一般的な債券のバリュエーションとは異なった技法が用いられることになります(「異なった」というより、組込デリバティブの部分をデリバティブの評価理論に基づいて評価することなる)。次項では、一般的な債券の評価方法について解説し、組込デリバティブの債券については、バリュエーションの応用編で解説します。

 

2−2.割引債の評価から理解する債券の基本評価構造

 一般的な債券の評価は、債券が生み出すキャッシュ・フローを設定された割引率で現在価値へ割引計算して求められます。このため、債券のバリュエーションは、@適切なキャッシュ・フローを引くことができるか、A現在価値へ割り引く際の割引率を適切に設定できるかどうか、の2点が中心となります(社債などの債券では、これに合わせて信用リスク部分についても検討が必要になります。信用リスクについては後述)。

 

 まずは、単純な例として、割引債(discount bonds)について考えてみましょう。割引債とは、満期日(maturity date)において元本(principal)返済のキャッシュが1度発生するだけで、発行時から満期の間までに利息の支払いも含めて、何らキャッシュが発生しないものをいいます。

 

 例えば、額面100円、満期5年の割引債を評価します。

 @キャッシュ・フローは、5年後に100円のみです。

 次に、A割引率はどうでしょうか。これは、評価時点(現時点)における満期日のスポット・レート(spot rate)を用いて計算します。

 スポット・レートとは、現時点から満期日までの期間に対応した利率のことです。レート(利率)は期間によって異なります。例えば、銀行の定期預金をみると、6か月満期の定期預金、1年満期の定期預金、3年満期の定期預金と、定期預金に適用される利率は満期までの期間に応じて異なっています。執筆日の三菱UFJ銀行のスーパー定期(300万円未満)の金利をみると、以下のとおりです。

 

期間 金利
6か月 年0.030%
1年 年0.030%
2年 年0.040%
3年 年0.060%
7年 年0.080%
10年 年0.20%

 

 これをみれば、期間に応じて金利が異なるのを直感的に理解できます。つまり、直感的な説明を続ければ、1年間キャッシュを拘束する場合の値段(レート)と10年間キャッシュを拘束する場合の値段(レート)は異なるということです。

 このため、しなければなりません。例えば、現時点の5年間のスポット・レートが4%としましょう。この場合、債券の評価額は、次のように計算されます。

 

 

 

 上記のとおり、割引債の評価額は、満期日に発生するキャッシュをスポット・レートで割り引いた現在価値として計算できます。

 

 さて、逆説的な説明になりますが、スポット・レートとは、この割引債の値段を導き出す割引率のことをいいます。すなわち、評価時点で、満期5年の債券が82.19円で評価されていた場合、逆算的に求められる利率がスポット・レートになるのです。

 

2−3.固定利付債の場合

 上項では、割引債の場合のバリュエーションについて検討しました。これを拡張して、固定利付債(fixed rate bonds)について評価することができます。

 固定利付債の多くは、決められた時点で決められた利息が支払われ、満期日に元本が返済されます。割引債では満期日に元本返済のキャッシュ・フローが発生するだけでしたが、固定利付債は何回かキャッシュ・フローが発生します。固定利付債の利息のことをクーポン(coupon)といい、その利率をクーポン・レート(coupon rate)といいます。

 

 例えば、3年後に満期が到来し、年に1回支払いのクーポン・レート5%の債券のバリュエーションを考えてみます。

 この債券のキャッシュ・フローは、以下のとおりです。

 

年数 クーポン 元本
1年後 5円
2年後 5円
3年後 5円 100円

 

 

 この固定利付債のキャッシュ・フローは、次のように分解して考えることができます。

@ 1年後に元本返済がある元本5円の割引債

A 2年後に元本返済がある元本5円の割引債

B 3年後に元本返済がある元本5円の割引債

C 3年後に元本返済がある元本100円の割引債

 

 @〜Cの割引債を、各満期日のスポットレートを用いて計算します。1年後、2年後、3年後のスポットレートが4%、5%、6%だったとすると、次のようになります。

 

@ = 4.807
A   = 4.535
B   = 4.198
C   =83.961
合  計 97.501円

  

 上記のとおり、この固定利付債の評価額は、@〜Cの価格の合計額97.50円となります。

 このように、固定利付債の評価は、キャッシュ・フロー発生時のスポット・レートを割引率として、それぞれのキャッシュ・フローを割引計算すれば求めることができるのです。

 

2−4.債券の最終利回り

 債券の評価では、上項のように各キャッシュ・フローと各キャッシュ・フロー発生までの期間に対応したスポット・レートを用いて計算します。しかし、各期間に対応した複数のスポット・レート、すなわち複数の変数が用いられるため、金利の期間構造の分析などには(数学的な)面倒さが生じます(金利の期間構造については後述)。

 しかし、複数のスポット・レートではなく、「1つ」の割引率を用いると、それほど難しい分析は発生しません。こうした理由から、よく利用される「1つ」の割引率が、最終利回り(yeild to maturity)です。

 正確には、ある資産について、各キャッシュ・フローを1つの割引率で割り引いて現在価値を求めた場合に、現在の市場価格となる割引率を内部収益率(internal rate of return; IRR)といい、債券における内部収益率のことを「最終利回り」といいます。IRRの概念はバリュエーションにおいて非常に重要なもので、株式のバリュエーションなどではIRRを求めて、DCF法などにおける割引率として利用したりします(株式のバリュエーションについては後述)。

 

 上記の債券の例を用いて、最終利回りを求めると以下のようになります。

 

 

 

 結果、最終利回りは5.933%となります。

 なお、割引債を考えると、もともと「1つ」の割引率しか存在しません。このため、割引債の最終利回りとスポット・レートは等しくなります。

 

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