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ストック・オプション会計基準 −未公開企業の取扱い−

6.未公開企業の取扱い

未公開企業とは、株式を証券取引所に上場している企業またはその株式が組織された店頭市場に登録されている企業(公開企業という)以外の企業をいいます。

 

未公開企業については、ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことができます。このようにストック・オプション会計基準では、未公開企業について例外的な取り扱いを認めています。

 

「単位当たりの本源的価値」とは、算定時点においてストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の単位当たりの価値であり、当該時点におけるストック・オプションの原資産である自社の株式の評価額と行使価格の差額をいいます。

 

通常、ストック・オプションの公正な評価単価は、ブラック・ショールズモデルや2項モデル等の一般的に認められた評価方法により評価しますが、これが単位当たりの本源的価値の見積りで代替できるということは、付与時点の株価と権利行使価格の差額でオプション・プレミアムの評価として代替できると取り扱っているに他なりません。

 

この特例を適用し、「付与時の株価≦権利行使価格」にすれば、当然に本源的価値はゼロになりますので、結果ストック・オプションの公正な評価単価がゼロ、ストック・オプションの公正な評価額がゼロ、ストック・オプションの費用計上がゼロという結果になります。そのため、財務力に乏しい上場準備会社にとっては、現金報酬に替えてストック・オプションを付与することにより、キャッシュ負担を抑えられるばかりか、財務諸表上の費用負担も抑えることができるという利点があります。

 

ここで、税制適格ストック・オプションの要件の一つに 「新株予約権の1株当たりの権利行使価格は、付与契約時における株式時価以上であること」といった要件がありますが、この要件は、付与時の本源的価値をゼロにしなさいといっていることに他なりません。この要件の目的は、本源的価値がプラスのストック・オプションは、そもそも将来へのインセンティブ目的のものではなく、単なる利益供与であるため、そのようなものを特例の優遇から排除することにあります。

 

なぜ、未公開企業の場合、本源的価値でいいのでしょうか?そのためには、本源的価値と時間的価値という概念を理解する必要があります。

 

オプションの価値は本源的価値と時間的価値から構成されています。 本源的価値は、さきほど説明したとり、今すぐ権利行使したら得られる価値で、時間的価値は、株価が変動することにより将来獲得できるであろう期待価値です。

 

例えば、付与時株価が1,000円で、権利行使期間2年間の権利行使価格1,000円のオプションを1個無償で取得できた場合、得したと思うはずです。

今すぐ権利行使したとしても、利益は得られませんが、2年間の間に株価が1,000円以上に上昇した場合、利益が得られる可能性があるからです。

しかも、オプションの性質上、株価が下がったとしても、そもそも権利行使をしなければよいので、損失を被るリスクもありません。

上記例の利益が得られるかもしれない期待部分こそが、時間的価値に他なりません。

この時間的価値、株価の変動が激しい方がより利益の期待が大きいことはおわかりだと思います。なぜなら、株価がマイナスの方向に激しく動いたとしてもオプションの特性から権利行使を行わないことにより損失を被らなくて済むからです。 この株価の変動性をボラティリティといい、ボラティリティが大きいほど時間的価値が大きくなり、その分オプションの価値も高くなります。ボラティリティは、通常過去の株価の推移から求めるわけですが、未公開企業の場合、そもそも市場価格がありませんので、信頼性のある数値を求めることは困難です。

 

このように未公開企業の場合、ストック・オプションの評価、特にこの時間的価値の算定に必要なボラティリティを算出することが困難なため、本源的価値も代替評価として認めています。

 

ただし、この未公開企業の特例を使用して場合、その旨を注記しなければなりません。また、未公開企業の場合、本源的価値に必要なそもそも付与時の株価をどう求めるのかといった課題もあります。

 

<国際財務報告基準(IFRS)の取扱い>

国際財務報告基準(IFRS)においても、付与した資本性金融商品の測定日現在の公正価値を信頼性をもって見積もれない場合、その資本性金融商品の本源的価値(intrinsic value)により測定しなければならないという同様の取り扱いを定めた規定あります。

しかし、資本性金融商品の公正価値を信頼性をもって見積もれないのは「稀な状況(rare case)」として限定しており、未公開企業においてもストック・オプションの公正な評価単価の見積りは通常可能との前提にあります。そのため、IFRSを採用した場合、未公開企業というだけでは、本源的価値に基づく会計処理は困難であると考えられます。

また、例え「稀な状況(rare case)」に該当し、資本性金融商品の本源的価値により測定したとしても、各報告期間の末日および最終決済日で本源的価値を再測定し、その変動を当期の純損益として認識しなければなりません。

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