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今年1回目は、サントリーHDの巨額買収のニュースからです。
【記事要約】
・サントリーHDは13日、米蒸留酒最大手ビーム社を総額160億ドル(約1兆6500億円)で買収する。買収でサントリーHDは世界の蒸留酒メーカーで10位から3位に浮上。かねて懸案だった蒸留酒事業の巨額買収で、世界の酒類市場でグローバルプレーヤーとしての地位を固める。
・両社はビーム社の全発行済株式を、過去3カ月の平均株価を24%上回る1株あたり83.5ドルで買収することで13日未明に合意。サントリーHDが米国に全額出資で設立済みの特別目的会社がビーム社と6月までに合併、買収を完了する。
・買収資金はサントリーHDの手元資金に加え三菱東京UFJ銀行から調達する。借入額は1兆円規模になるもよう。
・ビーム社は世界最大のバーボンブランド「ジムビーム」のほか、コニャックやテキーラなど蒸留酒を幅広く展開し、高いブランド力を持つ。サントリーHDの「山崎」「響」などと合わせた両社の売上高合計は5億ドルを超え、英ディアジオ、仏ペルノ・リカールに次ぐ3位となる。
・佐治信忠社長は酒類事業について「ビールで世界で戦うのは厳しい。利益率が高く新規参入の少ない蒸留酒の拡大が中心になる」と指摘。価格競争が激しく、消耗戦となった国内市場からの大胆なシフトを模索していた。ビーム社の売上高を単純合算すると、サントリーHDの海外売上高比率は2012年12月期の21%から32%に上昇する。
・ビーム社の買収でこれまで英国や日本産が中心だったサントリーのウイスキー事業の構成は大きく変わる。サントリーは国内では販売量の多いビール類を主力とするがシェアは3位にとどまるうえ、ビール類市場は9年連続で縮小。蒸留酒の世界市場は拡大を続け、新興国はほとんど手つかず。世界的な需要拡大が期待でき、上位に欧米ブランドが並ぶ蒸留酒で勝負をかける。
・国内飲料大手はビールを中心としてきた事業モデルの転換を急ぐ。
<日本経済新聞 2014年1月14日 朝刊1面および14面より>
サントリーHDといえば、昨年、清涼飲料事業を手掛ける中核子会社、サントリー食品インターナショナルを上場させたばかりです。
このときの資金調達額、手取額でおおよそ3,700億円程度(うちサントリーHDの売出分で1,000億円弱)で、海外でのM&A資金などに充当するとの方針でしたが、その方針が実現した形になります。
■ 2012/12/12 サントリーHD、中核飲料会社を上場
■ IPOデータベース_サントリー食品インターナショナル株式会社
最近の日本企業による海外企業のM&Aではソフトバンクの米スプリントの総額216億ドルに次ぐ規模ですし、佐治社長も今回の買収を「一世一代の大勝負」と位置付けているようです。
ただし、蒸留酒の世界1位:英ディアジオ(ジョニー・ウォーカー(ウィスキー)等を主力)の売上高が31,896百万ドル、2位:仏ぺルノ・リカール(シーバスリーガル(ウィスキー)等が主力)の売上高が18,725百万ドルと上位2社はダントツの規模ですから、蒸留酒世界市場で確固たる地位を築くにはこれからになりますね。
簡単に”ジムビーム”などのバーボンウイスキーで有名な米ビーム社の財務状況を簡単に見てみます。
サントリーHD(日) |
Beam,INC(米) |
|
直近期(通期) | 2012.12 | 2012.12 |
適用会計基準 | JP | US |
Revenue/売上高 |
1,851,567 百万円 (うち酒類セグメントは 554,683百万円) |
$ 2,465.9 millions (256,453 百万円) |
Operating income/営業利益 |
107,744 百万円 (うち酒類セグメントは 31,783百万円) |
$ 575.9 millions (59,893 百万円) |
売上高営業利益率 |
5.81% |
23.35% |
Net income/当期利益 ※ |
36,631 百万円 |
$ 382.4 millions (39,769 百万円) |
Comprehensive income/包括利益 ※ |
44,706 百万円 |
$ 500.5 millions (52,052 百万円) |
Total assets/資産総額 |
1,727,963 百万円 |
$ 8,636.9 millions (898,237 百万円) |
Stockholders' equity/株主資本 ※ |
523,894 百万円 |
$ 4,612.1 millions (479,658 百万円) |
Equity Ratio/自己資本比率 ※ |
53.88% |
53.39% |
ROE/株主資本利益率 ※ |
- |
- |
Cash flows from operating activities /営業活動によるキャッシュフロー |
130,107 百万円 |
$ 378.2 millions (39,332 百万円) |
Cash flows from investing activities /投資活動によるキャッシュフロー |
△93,413 百万円 |
$ △802.1 millions (△83,418 百万円) |
Cash flows from financing activities /財務活動によるキャッシュフロー |
△100,211 百万円) |
$ 564.2 millions (58,676 百万円) |
Cash and cash equivalents /現金・現金同等物 |
228,110 百万円 |
$ 365.7 millions (38,032 百万円) |
※ 日本円ベースは104円/$で簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。
※ 当期利益、包括利益、株主資本は支配株主帰属分
※ 自己資本比率、株主資本利益率は期末残高ベースで簡便的に算出している。
※ セグメント情報は、セグメント間取引も含む金額
規模こそは大きくないものの、ビーム社の利益率の高さが目立ちます。
特に国内ビール業界が、凌ぎを削り、消耗戦となっているためか、キリン、アサヒ、サントリーの利益率を比較するとその高さが際立ちますね。
また、『過去3カ月の平均株価を24%上回る1株あたり83.5ドル』とのことですので、プレミアム水準としては、一般的な水準とは思いますが、EBITDA倍率では20倍超と一般水準より高めのため、買収額は割高だと指摘する声もあるようです。
サントリーHDの見込む相乗効果がどれだけ実現できるか、さらに企業価値を高めることができるのか期待です。
国内の飲料メーカーの大手3社といえば、キリン、アサヒ、サントリーですが、国内のビール市場がじり貧の中、各社とも豊富なキャッシュを手元に次なる成長戦略を模索しています。世界のビール市場では、ベルギーの酒類メーカーであるアンハイザー・ブッシュ・インベブ (ABインベブ)が圧倒的な地位を築いているため、世界展開したとしてもビール市場で生き残れるかは各社不透明ですし、現状、既存商品ラインでの海外展開と小粒な清涼飲料や酒類関連のM&A案件をこなしているという印象です。
このような状況の中、国内でこそプレミアムモルツのヒットによりビール事業は改善途上のサントリーですが、国内市場ですら3位のサントリーにとって、期待できる成長市場といえば、ニッチで利益率の高い伝統事業である蒸留酒マーケットであったことは容易に想像できます。
今年も内需産業のグローバル化の動きが多く見られるのでしょうか。
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