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今日は、日本航空(JAL)のエアバス機の導入決定のニュースからです。
ニュースそのものは10月7日に公表されたもので古いですが、昨日10月22日の朝刊11面に、エアバスのブレジエCEOの日本での生産に関するコメントが掲載されていました。
【記事要約】
・エアバスのブレジエCEOは21日、日本での航空機の生産について「ビジネス上の合理性があれば考えないでもない」と述べた。
・日本航空から初めての大型受注を獲得し、日本市場に本格的に進出。
・ブレジエCEOはエアバスが中国と米国に小型機「A320」の最終組み立て工場を構えることを引き合いに出し「我々は可能性に関してオープンだ。いろいろな可能性を考えている」と語った。
・ブレジエCEOはボーイングと強固な協力関係を持つ三菱重工業など日本の航空機部品メーカーについて「絆を深めたい」と強調。「日航の受注で我々にはチャンスが広がった。ハイテク技術と言えば日本だ」と指摘。
<日本経済新聞 2013年10月22日 朝刊11面より>
LCCの世界的な広がりで何かと注目度の高い航空機業界ですが、中型・大型旅客機の世界2大メーカーと言えば、米・ボーイング社(BOEING)と欧州・エアバス社(AIR BUS)ですね。
ボーイングは、「B787」など「B×××」が機体名になり、エアバス社は、「A350」など「A×××」が機体名になります。
エアバス A350 Wikipediaより | ボーイング B787 Wikipediaより |
今日は、この2社の財務状況について簡単に確認してみようと思います。
◆ボーイング社とエアバス社のステータス
ボーイング社とエアバス社の直近のステータスをみてみましょう。
エアバス社は、欧州各国の航空機、宇宙産業、軍事関連企業の連合体として誕生したEADS(European Aeronautic Defence and Space Company)社の100%子会社です。エアバスは上場しておらず、EADSがユーロネクストに上場しています。EADSは、米国のボーイング社が世界の航空機市場をほぼ独占している状況に危機感をもった欧州連合によって作り出された会社で、現在ではボーイング社とエアバス社が世界の中型・大型旅客機を2分するまでになっています。
なお、EADSグル-プは、Airbus社(旅客機と軍用機製造のエアバス社)、Eurocopter社(ヘリコプター製造会社)、Astrium社(宇宙開発)、Cassidian社(防衛・安全保障関係)で構成されています。
ボーイング社とEADS社の財務状況は以下のとおりです。
BOEING(米) |
EADS(欧) |
|
直近期(通期) | 2012.12 | 2012.12 |
適用会計基準 | US-GAAP | IFRS |
Revenue(Sales of products)/売上高 |
$ 71,234 millions (6,980,932 百万円) |
€ 56,480 millions (7,568,320 百万円) |
Operating income/営業利益 |
$ 6,311 millions (618,478百万円) |
€ 2,131 millions (285,554 百万円) |
売上高営業利益率 |
8.85% |
3.77% |
Net income/当期利益 ※ |
$ 3,900 millions (382,200 百万円) |
€ 1,228 millions (164,552 百万円) |
Comprehensive income/包括利益 ※ |
$ 2,987 millions (292,726 百万円) |
€ 1,817 millions (243,478 百万円) |
Total assets/資産総額 |
$ 88,896 millions (8,711,808 百万円) |
€ 92,102 millions (12,341,668 百万円) |
Stockholders' equity/株主資本 ※ |
$ 5,867 millions (574,966 百万円) |
€ 10,409 millions (1,394,806 百万円) |
Equity Ratio/自己資本比率 ※ |
6.5% |
11.30% |
ROE/株主資本利益率 ※ |
65.35% |
11.79% |
Cash flows from operating activities /営業活動によるキャッシュフロー |
$ 7,508 millions (735,784 百万円) |
€ 3,840 millions (514,560 百万円) |
Cash flows from investing activities /投資活動によるキャッシュフロー |
$ △3,757 millions (△368,186 百万円) |
€ △26 millions (△3,484 百万円) |
Cash flows from financing activities /財務活動によるキャッシュフロー |
$ △3,477 millions (△340,746 百万円) |
€ △365 millions (△48,910 百万円) |
Cash and cash equivalents /現金・現金同等物 |
$ 10,341 millions (1,013,418 百万円) |
€ 8,756 millions (1,173,304 百万円) |
旅客機セグメント(ボーイング社:Commercial Airplanes、EADS社:Airbus Commercial) |
||
Revenue / 売上高 |
$ 49,127 millions (4,814,446 百万円) |
€ 36,227 millions (4,854,418 百万円) |
Operating Income /営業利益 |
$ 4,711 millions (461,678 百万円) |
€ 1,100 millions (147,400 百万円) |
売上高営業利益率 |
9.58% |
3.03% |
※ 日本円ベースは98円/$(ドル)、134円/€(ユーロ)で簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。
※ 当期利益、包括利益、株主資本は支配株主帰属分
※ 自己資本比率、株主資本利益率は期末残高ベースで簡便的に算出している。
企業全体規模からすると、EADS社の方がボーイング社よりも大きいようですね。EADS社が総資産12兆3000億円なのに対し、ボーイング社は8兆7000億円程度になっています。売上高比較では、EADS社が7兆5600億円、ボーイング社は6兆9800億円程度で、こちらもEADS社の方が規模が大きいのがわかります。
一方で、旅客機セグメントをみると、売上高はEADS社(エアバス社)が4兆8544億円に対し、ボーイング社は4兆8144億円とほぼ拮抗しており、まさに世界の旅客機分野を2分していると言えますね。
◆JALのエアバス社の導入に伴う今後の動き
既に報道でもあったように、JALはボーイング社のB777型機の後継機種として、エアバス社のA350-900型機18機とA350-1000型機13機からなる確定31機、及びオプション25機の購入契約を締結することになりました。
政治的な要因もあって、日本の大型旅客機はすべてボーイング社のものが採用されており、A350型機を日本の航空会社が購入するのは初となります。
エアバス社を採用した理由として、「安全性を含めた性能、機材品質、高い経済性、お客さまの快適性、地球環境への配慮など総合的に勘案した」と植木日本航空社長は記者会見で述べています。
詳細な採用理由は守秘義務などで明らかにされていませんが、エアバス社を採用したことで航空機市場における大きな転換期になることは間違いないでしょう。
今まで日本の航空会社はボーイング社を採用していたこともあり、ボーイング社の胴体部分や部材などで多くの日本製品が採用されていました。三菱重工や川崎重工などが主翼や胴体などの主要な部分を製造しており、B787では東レの炭素繊維技術が採用されたことでも注目されてましたね。
こうした中で、エアバス社への切り替えは航空機系の部材を多く供給している日本企業にとって大きなニュースと言えるでしょう。ボーイング社が新型旅客機で約30%ほどを日本企業に発注しているとも言われており、エアバス社としても日本市場への本格的に参入するためには日本の部材企業に対する発注量を増加させることは必要でしょう。こうした中で、日経の記事にもあったブレジエCEOの発言に繋がったと言えます。なお、A350型では日本の部品を10~12%程度を使っているようです。
次に注目されるのは、全日空(ANA)の動きですね。エアバス社のブレジエCEOは今回のJAL受注を受けて、ANAにも積極的な営業をかけていると言われており、日本におけるボーイング社のシェアを奪っていきたいと考えているでしょう。
さて、日の丸旅客機として注目されている三菱重工(正確には子会社の三菱航空機)のMRJですが、今年の9月に3度目の延期を発表し、2017年4~6月の納入予定に変更されました。BizBlogでも、取り上げたことのある話ですね。
■ 2012/05/25 国産旅客機MRJ 15年就航へ背水
小型ジェット機は新興国での需要も含めて今後20年間で5,000機ほどあると言われており予定通りの完成を望みたいところですね。
以 上
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