現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。
今日は、一昨日の日経朝刊の「経営の視点」からです。
【記事要約】
・60歳で退職した社員に、現役時代の基本給の半分を生涯にわたって企業年金として払い続ける会社がある。「社員1人あたり約1億円の原資を見込んでいる」。この会社は日本企業ではなく外資系のネスレ日本である。「もともとスイスのネスレ本社で始めた年金制度を日本にも導入した。この話をすると皆さん驚く」。
・ネスレがこんな手厚い制度を維持できる秘密は何か、、高い収益力こそ、充実した福利厚生の基盤。
・世界最大の食品企業であるネスレは連結売上高およそ10兆円に対し、営業利益は1兆5千億円で、営業利益率は15%に達する。キリンホールディングス7%、味の素6%、ヱスビー食品3%と国内大手の利益率と比べても、突出している。
・「キットカット」のような強力ブランドを多数擁して、それを世界中で手広く売る。地域限定的なローカル企業にはマネのできない物量のすごみが、ネスレの力の源泉だ。
・例えば「ネスカフェ」は日本市場だけでも年間120億杯相当を販売し、日本人が飲むコーヒーの4分の1を占める。今もっとも重視しているアフリカ市場では、調味料の「マギー」が売れ筋、ナイジェリアでは1日1億個が売れるという。
・全社員35万人のなかで、全体の0.2%にも満たない「インターナショナルスタッフ(IS)」と呼ばれる少数のエリートがいる。複数の外国語を操り、世界各拠点を渡り歩くが、絶対に赴任しない(できない)国が一つだけある。自分の母国だ。「何かの事情で母国で働くことになれば、ISの資格を失う。国を捨てるぐらいの覚悟がなければ、本当のグローバル人材は育たない。スイス本社はそう考えている」
・「社員を大事にする」のは一昔前の日本企業に似ているが、一方で「母国を捨てろ」と幹部に迫る厳しさこそネスレ流経営の真骨頂。
・ネスレに限らず、スイス企業に共通した強みはブランド力とグローバル化。それを支えるのが、世界中から集まった人材のダイバーシティー(多様性)。スイスは人口800万人の小国ながら、金融や製薬、重電まで幅広い業種で強い国際競争力を発揮し、フォーチュン500社番付に名を連ねる世界企業が14社もある。1人あたりのGDPは8万ドルで、日本の2倍近い。
<日本経済新聞 2013年9月30日 朝刊11面より>
少子高齢化を背景に企業のグローバル化、グローバル企業と叫ばれて久しいですが、 真のグローバル企業とは何か、考えされられる記事でした。
ネスレは初めてなので、簡単にステータスを見てみます。
食品・飲料関連の国内企業記事も参考にしてください。
■ 2012/12/12 サントリーHD、中核飲料会社を上場
Nestle (スイス) |
|
直近期(通期) | 2012.12 |
適用会計基準 | IFRS |
Revenue/売上高 |
S₣ 92,186 million (9,863,902 百万円) |
Operating income/営業利益 |
S₣ 13,932 million (1,490,724 百万円) |
売上高営業利益率 |
15.11% |
Net income/当期利益 ※ |
S₣ 10,611 million (1,135,377 百万円) |
Comprehensive income/包括利益 ※ |
S₣ 9,037 million (966,959 百万円) |
Total assets/資産総額 |
S₣ 126,229 million (13,506,503 百万円) |
Stockholders' equity/株主資本 ※ |
S₣ 60,947 million (6,521,329 百万円) |
Equity Ratio/自己資本比率 ※ |
49.59% |
ROE/株主資本利益率 ※ |
17.41% |
Cash flows from operating activities /営業活動によるキャッシュフロー |
S₣ 15,772 million (1,687,604 百万円) |
Cash flows from investing activities /投資活動によるキャッシュフロー |
S₣ △14,587 million (△1,560,809 百万円) |
Cash flows from financing activities /財務活動によるキャッシュフロー |
S₣ △57 million (△298,500 百万円) |
Cash and cash equivalents /現金・現金同等物 |
S₣ 5,840 million (6,099 百万円) |
※ 日本円ベースは107円/S₣(スイスフラン)で簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。
※ 当期利益、包括利益、株主資本は支配株主帰属分
※ 自己資本比率、株主資本利益率は期末残高ベースで簡便的に算出している。
売上規模は9兆円と巨大企業ですが、利益効率もすばらしいものがあります。営業利益率は15%、最終利益は1兆円レベルに達しています。
食品・飲料業というと、ITやエレクトロニクス産業のようなハイリスク・ハイリターンでない薄利多売なディフェンシブビジネスのイメージがありますが、この業種でここまでの利益および利益効率はすごいですね。
もう少し詳細な収益状況を見てみます。
一般的に安定業種のためか、売上高・利益ともにここ3年を見る限り安定しています。世界的人口増加の流れのなか、今後の売上高・利益とも長期的には伸びシロがありそうですね。
セグメント状況も、地域別、製品別にも実に分散されたポートフォリオですね。
ユニクロの柳井さんが、店長候補として採用した正社員すべてと役員の賃金体系を全世界のユニクロで統一する「世界同一賃金」の導入を検討していることが明らかになり、物議を醸しましたが、真のグローバル企業を目指すためには、人のグローバル化は避けて通れません。
ネスレのビジネス哲学には日本企業が学ぶことが沢山ありそうです。
【関連記事】
■ 2013/03/27 キリンHD、株主配分優先
■ 2012/12/12 サントリーHD、中核飲料会社を上場
■ 2012/05/09 アサヒ、カルピス買収 「定番」獲得へ1000億円
■ 2012/04/16 『ロー化』に苦しむビール 微妙な差を求め消耗戦に
■ 2012/03/14 ニチレイ ベトナム食品大手と資本業務提携
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。