株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

2013/08/28 鉄道会社 生活に密着

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、本日の日経朝刊13面の私鉄大手の生活関連サービスの話題から。

 

【記事要約】


私鉄大手が沿線住民向けの生活関連サービスの充実を競っている。

・国立社会保障・人口問題研究所の推計によると首都圏の人口は2015年ごろをピークに減少に転じ、近畿圏では既に減少が始まっている。沿線住民の減少は輸送人員減につながる。

・京王電鉄は系列の京王ストが販売する食品や日用品を専用トラックに積んで定期的に団地などをまわる。

・小田急電鉄は子育てしやすい環境を整備し、沿線地域へのファミリー層の転入を促す。

・東京急行電鉄は家事代行サービス「東急ベル」を沿線で展開など。

<日本経済新聞 2013年8月28日 朝刊13面より


 

 以前にも鉄道については、JR関連の記事とスカイツリー絡みの記事について取り上げました。

 

2012/08/20 内需で相次ぐ最高益 JR東日本、営業利益2割小売りで稼ぐ

2012/03/26 東京スカイツリー天望デッキ 初日から予約殺到

【リソース】IKP-BizBlog

 

 上記の以前のBizBlog記事をみてもわかるように、JRの収益は飛びぬけてますね。直近の平成25年3月期でみると、以下のとおりです。

 

・JR東日本が営業収益2兆6718億円で経常利益が3174億円(売上高経常利益11.88%)

・JR東海が営業収益1兆5853億円で経常利益が3280億円(同率20.7%)

・JR西日本が営業収益1兆2989億円で経常利益が1046億円(同率8.06%)

・民鉄の最大手(非上場のメトロを除く。)の東京急行電鉄が営業収益1兆680億円で経常利益562億円(同率5.27%)。

 

 今日は民鉄の財務情報を中心に確認していこうと思います。

◆大手民鉄各社のステータス

民鉄各社のステータスを簡単に確認してみます。

 

 東京急行電鉄近畿日本鉄道阪急阪神HD

名古屋鉄道

東武鉄道
証券番号 9005 9041 9042 9048 9001
直近年度決算期 平成25年3月期 平成25年3月期 平成25年3月期 平成25年3月期 平成25年3月期

直近営業収益

1,068,046

932,185

682,439

609,836

577,223

直近経常利益(率)

56,279

(5.27%)

35,063

(5.09%)

74,914

(10.98%)

28,814

(4.72%)

47,540

(8.24%)

26年3月期

予想営業収益

1,085,200

1,250,000

670,000

610,0000

578,000

26年3月期

予想経常利益(率)

54,000

(4.97%)

40,000

(3.2%)

72,000

(10.74%)

26,500

(4.34%)

49,000

(8.47%)

26年3月期

予想当期純利益

42,500

23,000

42,000

14,500

29,000

【リソース】平成25年3月期はIKP財務データベースより。予想値は各社の平成26年3月期1Q短信より。

 

 近畿日本鉄道が今期に東急を逆転するようですね。近畿日本鉄道の大幅な増収要因は、旅行大手の近畿日本ツーリスト(いわゆる”近ツー”)の連結子会社化です。グループの近畿日本ツーリストとクラブツーリズムを経営統合したようです。

 

 それ以外は横ばいないし若干の減少といったところでしょうか。日経の記事にもあったように輸送人員の伸び悩みにより収益の成長性は見込めていません。上記5社の売上高と経常利益の推移の5期推移をみてみましょう。

 

【リソース】IKP財務データベース。予想値は短信。

 

 

【リソース】IKP財務データベース。予想値は短信。

 

【リソース】IKP財務データベース。予想値は短信。

 

【リソース】IKP財務データベース。予想値は短信。

 

【リソース】IKP財務データベース。予想値は短信。

 次に、各社のセグメント状況を確認してみましょう。下記の資料は各社の決算説明会の資料を転載しています。

 

【リソース】東京急行 平成25年3月期決算説明会資料p25

 

 営業収益の半分は「生活サービス」セグメントですね。東急百貨店や東急ストアの小売業ですね。次に大きいセグメントが「ビジネスサポート」セグメントで、次いで「不動産」セグメントとなっています。ビジネスサポートセグメントでは東急エージェンシーが筆頭ですね。

 これをみてもわかるように、東急は関東圏の民鉄では群を抜いていますが、小売業、広告代理業、不動産業などの鉄道事業以外が収益を大半を占めており、鉄道事業をベースにどれだけ拡散できるかがキーになっているのがわかります。

 

【リソース】近畿日本鉄道 平成25年3月期決算説明会資料p6

 

 近鉄のセグメントでは、「流通」セグメントが筆頭で、「ホテル・レジャー」、「運輸」と続きますね。「流通」セグメントは東急と同様、百貨店とストアになります。「ホテル・レジャー」では、旅行業などがあり、平成26年3月期ではここが大きく増加する見込みとなっています。

 

【リソース】阪急阪神HD 平成25年3月期決算説明会資料p25

 

 阪急阪神HDではトップセグメントは、「都市交通」と「不動産」が同じくらいで、その後に「エンタテインメントコミュニケーション」、「旅行・国際輸送」と続きます。上位2社では小売業の規模が大きかったのに比べて阪急阪神HDはそこまでではないようですね。不動産事業では、ちょっと見えづらいですが、マンション分譲戸数の増加により200億円ほどの増収をしていますね。

 「エンタテイメントコミュニケーション」セグメントは、阪神タイガース事業で224億円の営業収益を計上しているようです。約6割は姫路ケーブルテレビなどのメディア事業になっています。

 

【リソース】名古屋鉄道 平成25年3月期決算説明会資料p3

 

  次に名鉄ですが、「交通事業」がトップセグメントで、次いで「流通事業」、「運送事業」、「不動産事業」となっているようです。「流通事業」では名鉄百貨店でだいたい600億ぐらいのようです、名鉄ではトップセグメントが本業の鉄道業ですが、逆の見方をすると本業以外の部分が東急や近鉄に比べると伸ばせていない、、といえるでしょう。

 

【リソース】東武鉄道 平成25年3月期短信 セグメント情報

 

 東武鉄道は決算説明資料で一覧表になっているものがなかったので短信のセグメント情報を転載しています。トップセグメントは「運輸事業」で、次いで「流通事業」となっています。流通事業では、東武百貨店があり、約1500億円ほどの売上規模です。池袋の東武百貨店などが基幹店ですね。スカイツリーのところにも東京ソラマチ店として出店しています。

 最近注目のスカイツリー事業は、「レジャー事業」にセグメンテーションされていますが、運輸事業や流通業を含め多くの事業に寄与していると考えられます。当初の計画値よりも来場者数が多かったようで順調のようですね。去年5月のグランドオープンから今年の3月末までに約4476万人が来場したようです(平成25年3月期有価証券報告書より)。

 上記のとおり、鉄道事業各社は鉄道業以外をどれだけ成長させられるかが企業の成長性にかかるところであり、日経の記事にあったように鉄道事業以外の周辺事業を拡張していく必要があります。

 伝統的な不動産業、小売業の成長性にも限界がある中で、より沿線住民の生活に溶け込んでいくようなサービスの拡張は必要でしょう。どういった新規事業が次の柱になるかはわかりませんが、東急の家事代行サービスや各社が展開する介護事業などは高齢化社会の中で確実にニーズはあるかと思われます。もちろん、それに相応して競合企業も多く、特に介護事業は異業種からの新規参入が激しく経営環境は決して優しいものではありません。

 

 

 今後の民鉄事業はどのように展開するのでしょうか。

以  上

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