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2013/07/17 所得拡大促進税制について

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

 今日は、平成25年度税制改正の1つである「所得拡大促進税制」について概要を解説します。平成25年度税制改正の全般的な解説については、以前のこちらのBizBlogをご覧ください。

 

2013/02/07 平成25年度税制改正大綱【後編】

2013/02/06 平成25年度税制改正大綱【中編】

2013/01/30 平成25年度税制改正大綱【前編】

【リソース】IKP-BizBlogより

 

 また、時間の都合上、今日は組織再編関係の規定については割愛します。

 

1.所得拡大促進税制の創設の経緯

 所得拡大促進税制は、リーマンショック後から低迷する給与所得水準を回復させ、消費喚起による景気の拡大を目指す政策です。財務省の「平成25年度税制改正の解説」では、冒頭部分で次のように記載しています。

 

 安倍新政権の日本経済再生に向けた強い意志・ 明確なコミットメントを示すものとして、本年1 月11日に「日本経済再生に向けた緊急経済対策」 が閣議決定されました。その基本理念は、長引く 円高とデフレ不況から脱却するため、「成長と富 の創出の好循環」を実現し、「強い経済」を取り 戻すことにありました。

 これを受け、平成25年度税制改正においても、現下の経済情勢等を踏まえつつ、「成長と富の創 出の好循環」を実現するための様々な税制が講じ られることとなりました。近年の厳しい雇用情勢の中、給与所得者の平均 給与額が年々減少し、特にリーマンショック以降 は低位の水準に留まっていましたので、個人所得 の拡大を図り、所得水準の改善を通じた消費喚起 による経済成長を達成するため、企業の労働分配 (給与等支給)の増加を促す措置として、給与等支給額を増加させた場合におけるその増加額の一定割合の税額控除を可能とする制度(所得拡大促 進税制)を創設することとされました。

【リソース】財務省 http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/
 

 平成23年度税制改正で創設された「雇用促進税制」が、「雇用すること」を念頭にした税制であるのに対し、所得拡大促進税制は1人当たりの給与所得を向上させようとする政策で目的が異なります。

 管轄する省も異なり、雇用促進税制が厚生労働省であるのに対し所得拡大促進税制は経済産業省が管轄します。

 

2.所得拡大促進税制の概要

 この制度は、所得税(個人事業主)と法人税の両方に創設されていますが、BizBlogでは法人関係者の方の読者が圧倒的に多いと思われますので、法人税に限定して解説していきます。

 所得拡大促進税制は、法人の平成25年4 月1 日から平成 28年3 月31日までの間に開始する各事業年度にお ける雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5 %以上である場合におい て、次の要件を満たすときは、その雇用者給与等支給増加額の10%相当額(中小企業等においては20%相当額)の税額控除ができるとい うものです(措法42の12の4 )。

 

(1)雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること

(2)平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること

 

 なお、適用法人は青色申告書提出法人であり、白色申告書を提出する法人は適用することができません。

 

 所得拡大促進税制の適用ポイントは上記の太字である4ポイントです。簡単な言葉で説明すれば次のとおりです。

 

【所得拡大促進税制のポイント】

① 平成25年4月1日から平成28年3月31日までの期限付き税制であること

② 基準年度の雇用者給与等支給額(給与等支給額は国内雇用者限定。役員や海外勤務者は除く。)から5%以上増加していること

③ 給与等支給額(総額)が前年の給与等支給額以上であること

④ 1人当たり給与等支給額(平均給与等支給額)が前年よりも増加していること

 

3.雇用促進税制等との併用について

 雇用促進税制との併用は認められていません。また、震災税特法第17条の3(復興産業集積区域 において被災雇用者等を雇用した場合の法人 税額の特別控除)、第17条の3の2(企業立地 促進区域において避難対象雇用者等を雇用し た場合の法人税額の特別控除)又は第17条の 3の3(避難解除区域等において避難対象雇 用者等を雇用した場合の法人税額の特別控除) の規定の適用を受ける事業年度についても、 この制度の適用を受けることができないこととされています(震災税特法17の3②四、17 の3の2②五、17の3の3②五)。

 ただ、雇用促進計画を提出しているからと言って雇用促進税制を適用しなければならないわけではありませんので、年度の最初に雇用促進税制と所得拡大促進税制のどちらを利用するか決定していない場合には、雇用促進計画を提出しておき、最終的にどちらを適用するか有利判定を行い決定することになろうと思われます。

4.基準年度の雇用者給与等支給額から5%以上増加していること

 所得拡大促進税制の適用のための前提条件が、「雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5 %以上」であることです。この項では、この要件について解説していきます。

 

(1)雇用者給与等支給額とは

 所得拡大促進税制では、「雇用者給与等支給額」という言葉がまずは基本になります。

 雇用者給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいうこととされてい ます。そして実際の負担額とするために、その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金 額がある場合には、支給額からその支払を受け る金額を控除した金額とされています(措法42 の12の4 ②三)。

 ここにあるとおり、雇用者給与等支給額は、所得計算に算入された損金額としていることから、実際のキャッシュアウト額ではなく、未払給与や前払給与といった損益ベースでの給与額になることがわかります。

 次に、「国内雇用者」に限定しているので、海外勤務者はもちろんのこと、雇用者ではない取締役といった役員報酬もここには含まれません。ただし、国内雇用者であればよいので、雇用促進税制のような雇用保険の被保険者であるかどうかは関係なく、正社員以外のアルバイト、パート、日々雇い入れられる者であっても含めることができます。

 なお、使用人兼務役員においては使用人の職務としての給与が支給されていますが、役員兼務役員の給与全体が雇用者給与等支給額に含まれませんので留意が必要です。雇用促進税制と同様、役員の特殊関係者である以下のものも含まれません(措法42の12の4②一、措令27の12の4①)。

 

【役員の特殊関係者】

イ 役員の親族

ロ 役員と事実上婚姻関係と同様の事情にあ る者

ハ 役員から生計の支援を受けている者

ニ ロ又はハと生計を一にするこれらの者の 親族

 

 さらに、前掲の財務省の税制改正の解説では、原価計算上の労務費の取り扱いについて以下のとおり解説しています。

 

一方、原価計算における労務費にあたる賃金等については、原則的には、期首棚卸と期末棚卸とに含ま れる賃金等を加減算することとなりますが、 煩雑さを避けるため、その賃金等の支給額 の確定を基準に計算したものを給与等の支給額とする等、一定の合理性が認められる 方法によって、法人が継続的にこの制度に おける「損金の額に算入される給与等の支 給額」を算出することも許容されるものと考えます。

 

 また、「実際の負担額」とあるように、実際に法人が負担した金額のみを雇用者給与等支給額に含めれるので、出向元法人が出向者の給与を負担している場合には出向先法人の雇用者給与等支給額には出向者の出向元法人負担部分は含まれません。それ以外にも、雇い入れ助成金などの支給を受けている場合は、雇い入れ助成金の部分を雇用者給与等支給額から差し引く必要があります。なお、雇い入れ助成金を受けていること自体で所得拡大促進税制の適用が受けられなくなるわけではありません。

 

(2)基準雇用者等支給額とは

 基準雇用者給与等支給額は、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度又は各連結事業年度のうち最も古い事業年度又は連結事業年度(以下「最も古い事業年度等」といいます。)開始の日の前日を含む事業年度又は連結事業年度(以下「基準事業年度等」といい ます。)の所得の金額又は連結所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「給与等支給額」といいます。)をいいます(措法42の12の4②四・四イ)。

 少しわかりづらい表現ですが、たとえば、3月決算法人で考えると、平成26年3月期(自平成25年4月1日至平成26年3月31日)が「最も古い事業年度」となり、その「開始の日の前日を含む事業年度」とはすなわち平成25年3月31日を含む事業年度、すなわち平成25年3月期が基準年度となります。

 なお、法人を設立したばかりで基準年度が存在しない、又は休業を再開したので基準年度が存在しない場合等は、最も古い事業年度等の給与等支給額の70%相当額とされています(措法42 の12の4 ②四ハ)。すなわち、平成25年4 月 1 日以後に新設した法人(以下「新設法人」 といいます。)の場合には、基準事業年度等 はありませんので、最も古い事業年度等であ る設立の日を含む事業年度又は連結事業年度 を基準となる事業年度又は連結事業年度とし た上で、その設立の日を含む事業年度又は連結事業年度(=最も古い事業年度等)の給与等支給額の70%相当額を基準雇用者給与等支給額とすることとされています。

 

(3)「雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5 %以上」の意味

 「雇用者給与等支給増加額」とは、適用年度の雇用者給与等支給額から基準雇用者急騰支給額を控除した金額です。

 このため、「雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5 %以上」とは、すなわち、基準年度の雇用者給与等支給額から適用年度の雇用者給与等支給額が5%以上増加していないと、所得拡大促進税制は適用できない、、ということになります。

5.給与等支給額(総額)が前年の給与等支給額以上であること

 前項「4.基準年度の雇用者給与等支給額から5%以上増加していること」の前提要件が満たせた場合、次は「給与等支給額が前年の給与等支給額以上であるかどうか」の判定を行います。条文では、「雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること」と規定されています。

 

(1)比較雇用者給与支給額とは

 比較雇用者給与等支給額とは、比較雇用者給与等支給額とは、適用年度開始の日の前日を含む事業年度又は連結事業年度の所得の金額又は連結所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます(措法42の12の4②五)。すなわち、適用年度の前事業年度の給与等支給額となります。

 例えば、平成26年3月期では基準事業年度も比較事業年度も平成25年3月期となりますが、平成27年3月期では基準年度は変わらず平成25年3月期で、比較事業年度は平成26年3月期となります。

 

(2)雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であることの意味

 「雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること」とは、基準事業年度の雇用者給与等支給額だけでなく、前事業年度の比較しても増加している必要があることを意味しています。このため、たとえば、平成26年3月期に適用できた所得拡大促進税制も、平成27年3月期の給与等支給額が平成26年3月期よりも下回った場合には、基準事業年度である平成25年3月期の給与等支給額よりも5%以上増加していても適用できません。

6.1人当たり給与等支給額(平均給与等支給額)が前年よりも増加していること

 最後の要件が、「1人当たり給与等支給額(平均給与等支給額)が前年よりも増加していること」になります。条文では、「平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること」と規定されちえます。

 

(1)平均給与等支給額とは

 平均給与等支給額とは、適用年度の給与等支給額を給与等支給者数で除して計算した金額をいいます(措法42の12の4②六)。

 ここでの適用年度の給与等支給額は、雇用者給与等支給額から、 そのうち日々雇い入れられる者に係る金額を控除した金額とされていますので留意が必要です(措令27の12の4⑪)。

 また、給与等支給者数とは、適用年度における給与等月別支給対象者の数を合計した数とし、給与等月別支給対象者は、その適用年度に含まれる各月ごとの給与等の支給の対象となる国内雇用者 をいいます(措令27の12の4 ⑫)。このため、適用年度中に給与等の支給の対象となった国内雇 用者の延べ人数ということになります。この支給の対象となる国内雇用者からも、適用年度の給与等支給額との平仄を合わせるため、日々雇い入れられる者を除きます。   

 ここで、日々雇い入れられる者を除くのは、以下の理由であると解説されています。

 

【平均給与等支給額において日々雇い入れられる者を除く理由】

 日々雇い入れられる者を平均給与等支給額の計算から除いているのは、1 回の支給額が低く1月に複数回の支給がある場合には、上記の算式による平均給与等支給額を引き下げることとなる上、こうした支給形態の雇用が比較的短期で流動的であることを踏まえ、その影響を極力排除した方が納税者に有利であると考えられたからです。

【リソース】財務省 http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/

 平均給与等支給額は、その算式のとおり、1人当たりの給与等支給額です。このため、短期アルバイトや日雇いなどの比較的支給額が小さい雇用者を算定式に入れると、平均給与等支給額は下がってしまうため判定基準では不利になってしまいます。比較平均給与等支給額でも日々雇い入れられる者を含められば、不利にならないのではないかとも考えられますが、短期アルバイトなどの雇用そのものが流動的な要因で行われるものであることから、そもそも判定基準から除外した方がしっくりいくのだと思われます。

 

(2)比較平均給与等支給額とは

 適用年度の平均給与等支給額と、前年度の平均給与等支給額を比較することとなりますが、この前年度の平均給与等支給額を比較平均給与等支給額といい、具体的には、適用年度に係る比較給与等支給額を比較給与等支給者数で除して計算した金額をいいます(措法42の12の4②七)。

 

(3)「平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること」の意味

 「平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること」とは、前年の1人当たり給与等支給額よりも適用年度の1人当たりの給与等支給額が多いことを意味しています。すなわち、この要件は、給与のベースアップないし賞与の増額などをしなければ達成できないことを意味しています。

 たとえば、雇用者数が増加することによって、会社全体の総額としての給与等支給額が増加した場合、上述の雇用者給与等支給増加額が基準雇用者給与等支給額より5%を超え、また比較給与者等支給額よりも増加する可能性があります。

 しかし、既存従業員の支給ベースが増加しないと、最後の要件である平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えることができず、所得拡大促進税制は適用できないことになります。

 このような人事戦略を採用する会社では恐らく雇用促進税制を採用することでタックスコストを下げることができるので、雇用促進税制の適用要件である「雇用促進計画の提出」が必要になろうかと思います。なお、一般的には、雇用促進計画の提出はしておき、最終的に雇用促進税制と所得拡大促進税制の有利判定を行って、どちらを採用するか決定するものと考えられます。

7.税額控除の限度額及び申告要件の規定

(1)税額控除の限度額

 税額控除の限度額は、雇用者給与等支給増加額の10%とします(措法42の12の4①)。ただし、法人税額から控除する金額は、中小企業者等は適用年度の所得に対 する法人税額の20%に相当する金額を、それ以外の法人(大法人)は適用年度の所得に対する法人税額の10%に相当する金額を、それぞれ限度とすることとされています。

 また、この場合の法人税額は、次の規定を適用しないで計算した場合の法人税の額とし、附帯税の額を除くこととされています(措法42の12の4①、62⑥二、62の3⑪二、63⑤、震災税特法17の2⑭、17の2の2⑩、17の2の3⑩)。 

 

イ 租税特別措置法第42条の4(試験研究を行った場合の法人税額の特別控除)

ロ 租税特別措置法第42条の5第2項、第3項及び第5項(エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除)

ハ 租税特別措置法第42条の6第2項、第3項及び第5項(中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)

ニ 租税特別措置法第42条の9(沖縄の特定地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)

ホ 租税特別措置法第42条の11第2項、第3項及び第5項(国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)

ヘ 租税特別措置法第42条の12の2第2項 (国内の設備投資額が増加した場合の機械等に係る法人税額の特別控除)

ト 租税特別措置法第42条の12の3第2項、 第3項及び第5項(特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の法人税額の特別控除)

チ 租税特別措置法第42条の12の4(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)

リ 租税特別措置法第62条第1項(使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例)

ヌ 租税特別措置法第62条の3(土地の譲渡等がある場合の特別税率)

ル 租税特別措置法第63条(短期所有に係る土地の譲渡等がある場合の特別税率)

ヲ 法人税法第67条(特定同族会社の特別税 率)

ワ 法人税法第68条(所得税額の控除)

カ 法人税法第69条(外国税額の控除)

ヨ 法人税法第70条(仮装経理に基づく過大 申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)

タ 法人税法第70条の2(税額控除の順序)

レ 震災税特法第17条の2第2項及び第3項 (復興産業集積区域等において機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)

ソ 震災税特法第17条の2の2第2項及び第3項(企業立地促進区域において機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)

ツ 震災税特法第17条の2の3第2項及び第3項(避難解除区域等において機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)

 

(2)申告要件

 この税額控除の適用を受けるための申告要件は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に、その控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及びその控除を受ける金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用することとされています(措法42の12の4④)。ただし、この場合における控除される金額は、その確定申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎として計算した金額に限るものとされていますので、修正申告や減額更正において、この税額控除の適用を受ける雇用者給与等支給増加額を増加すること等はできません。

 なお、同明細は、法人税確定申告書の別表6(20)「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を利用することになります。

8.平成25年度税制改正における雇用促進税制の一部改正

 平成25年度税制改正では、所得拡大促進税制の創設に合わせて、雇用促進税制が一部改正になっています。

 

(1)控除額の引き上げ 1人当たり20万円⇒40万円

 雇用促進税制は、雇用保険法の適用事業を行っている事業主が、税制の適用要件を満たした場合、雇用者数の増加1人当たり40万円の税額控除が受けられる制度です(措法10の6①、42の12①)。ただし、控除税額は、その適用年度における法人税の額の10%(中小企業者等の場合は、20%)までとされています(措法10の6①後段、措法42の12①後段)。  

 平成25年度税制改正では、税額控除限度額を計算する場合における基準雇用者数を乗ずる金額が改正前の20万円から40万円に引き上げられました。

 

(2)離職者要件の変更

 離職者に係る要件において、会社都合による労働者の解雇の離職者に高年齢雇用者が含まられることになりました。また、雇用促進税制の適用要件における基準雇用者数、基準雇用者割合、給与等支給額及び比較給与等支給額の計算において、「高年齢雇用者」に係るものが除外されました。

 

(3)諸規定の明確化

 その他には、離職者に係る要件における離職者の判定や雇用の増加に係る要件における基準雇用者数、基準雇用者割合及び比較給与等支給額の計算に係る規定で明確化が図られました。

 具体的には、比較給与等支給額は、適用年度前1年以内事業年度における給与等の支給額に、その適用年度前1年以内事業年度における給与等の支給額に基準雇用者割合を乗じて計算した金額の30%を加算した金額とされていますが、その適用年度開始の日の前日における雇用者の数が零である場合には、この比較給与等支給額の計算における「その適用年度前1年以内事業年度における給与等の支給額に基準雇用者割合を乗じて計算した金額」は、「その適用年度前1年以内事業年度における給与等の支給額」とする規定が明確化されました。

 すなわち、適用年度開始前の前日における雇用者の数が零である場合には、基準雇用者割合は「1」とする旨の規定が設けられました。

 

 これに合わせて、組織再編関係や連結納税関係も同様の規定が整備されています。

 

(4)適用年度

 適用時期は、平成25年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用します(個人所得税については平成26年分から適用)。

 

 なお、雇用促進税制については下記【関連記事】の「雇用促進税制について」」の解説をご参照ください。

 今日は、所得拡大促進税制についての解説でした。

以  上

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