現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。
今日は、塗料シンガポール大手の国内塗料大手の買収のニュースからです。
【記事要約】
・日本ペイントは21日、シンガポール塗料大手ウットラムグループからTOBの提案を受けたと発表。ウットラムは日本ペイントに14.5%を出資する筆頭株主。アジアを中心とする新興国での事業拡大を睨み出資比率を約45%まで高めたいとしており、事実上の買収提案となる。
・日本ペイントは、塗料分野で世界5位の企業連合づくりの是非を慎重に見極める構え。また今後、買収防衛策に照らして対応を検討する。顧客の自動車メーカーなどの意向も踏まえ、取締役会が受け入れの是非を判断する。
・ウットラムは、日本ペイント株を1株900円で8000万株を上限に買い付けを目指すとみられ、その場合の取得総額は最大720億円で、取得額は21日終値(809円)を11%上回る。
・日本ペイントはアジア事業の大半をウットラムとの合弁会社で展開。日本ペイントが技術、ウットラムがマーケティングを担う体制を続けてきた。中国やマレーシア、シンガポールなどの塗料市場ではシェアトップを誇る。 ただし、リーマン・ショック後の自動車生産台数の伸び悩みで、塗料の成長分野は日米欧の自動車用から新興国の建築用にシフト。
・建築用塗料は国内総生産(GDP)の伸びに比例して需要が増えるとされ、欧米の大手塗料会社もアジア市場に着目。販売競争が激化しつつある
・日本ペイントは競合する関西ペイントに比べて海外展開が遅れており、今後ウットラムと連携を深める可能性はある。
・ウットラムグループ…華僑系のゴー・ハップジン氏の一族が実質所有する企業グループで、塗料事業のほか不動産や株式などへの投資事業を手がける。法人登記は香港だが、シンガポールが主な拠点。塗料事業の売上高は世界12位、年1800億円程度のもよう。
(2013年1月22日付の日本経済新聞朝刊 11面より)
中国ハイアールの三洋の白物家電事業の買収、中国レノボのNECの個人パソコン事業の買収、ホンハイのシャープとの提携など、外国企業が日本企業を買収する場合は、不振事業のケースが大半でしたが、今回のニュースは少し違うようです。
技術をもっていながら、海外進出の遅れている企業に海外から統合の提案が行われた点が今回のニュースのポイントでしょうか。
塗料業界は、初めて取り上げるので、まずは塗料業界をインキ業界とまとめて俯瞰してみます。
■ 国内塗料・インキ大手3社
国内の塗料・インキ大手の業績は次のとおりです。
DIC | 日本ペイント | 関西ペイント | |
証券コード | 4631 | 4612 | 4613 |
決算期 | 2012.3期 | 2012.3期 | 2012.3期 |
直近収益(百万円) | 734,276 | 222,256 | 256,590 |
直近営業利益(百万円) | 34,960 | 16,323 | 19,315 |
直近経常利益(百万円) | 30,802 | 20,187 | 21,446 |
直近当期純利益(百万円) | 18,158 | 12,312 | 13,996 |
直近包括利益(百万円) | △1,028 | 11,217 | 7,558 |
売上高経常利益率(%) | 4.19 | 9.08 | 8.35 |
直近総資産(百万円) | 319,409 | 274,105 | 319,409 |
直近総負債(百万円) | 126,621 | 128,723 | 126,621 |
直近株主資本(百万円) | 175,201 | 149,784 | 175,201 |
直近純資産(百万円) | 192,787 | 145,382 | 192,787 |
直近営業活動CF(百万円) | 10,358 | 22,483 | 10,358 |
直近投資活動CF(百万円) | △21,949 | △3,713 | △21,949 |
直近財務活動CF(百万円) | 14,684 | △11,942 | 14,684 |
直近期末現金及び現金同等物(百万円) | 42,924 | 35,126 | 42,924 |
直前時価総額(百万円) | 146,180 | 224,796 | 282,438 |
備考 | インキ世界首位。印刷インキの他、合成樹脂、電子材料等も展開。 | 関西ペイントと並ぶ国内総合塗料大手、自動車用塗料に強い。 | 日本ペイントと並ぶ国内総合塗料大手、自動車用塗料に強い。 |
インキ業界では、DICが海外企業の買収の効果もあり世界首位です。
一方、塗料業界では、国内大手は日本ペイントと関西ペイントで2社は拮抗しています。世界市場では、オランダのアクゾ・ノーベルが首位で、日本ペイントは10位につけています。
日本ペイントを関西ペイントを比較しながらさらに深堀して見てみます。
日本ペイントと関西ペイントは、ここ数年拮抗していますね。
営業利益は、一時期関西ペイントに差をつけられていましたが、最近では回復しています。
日本ペイントは、国内かつ自動車用塗料に強いため、国内の自動車業界の回復に伴い、利益も回復していると考えられます。
2社のセグメント別業績は以下のとおりです。
|
|
|
|
|
|
|
|
日本ペイント、関西ペイントともに自動車用塗装への依存が高い点で共通していますが、日本ペイントは、国内市場へ依存度が高い一方、関西ペイントは海外とくに新興国で、実に営業利益の4割を稼ぐ体制にあります。
日本ペイントは、関西ペイントに比べ大きく海外戦略に遅れている点が読みとれますね。
同日の日経新聞では以下のようなコメントがなされています。
アジア企業が日本のドアをノックしている。
(途中省略)
日本企業の弱点はマーケティング力にある。「いいものを作れば売れる」時代が長く続いたため、「売れるものを作って大量に売る力」が衰えた。アジア企業とのパートナーシップは、成長のダイナミズムを取り戻すカンフル剤になり得る。技術を国内にとじ込めても世界では勝てない。
繰り返しになりますが、中国ハイアールの三洋の白物家電事業の買収、中国レノボのNECの個人パソコン事業の買収、ホンハイのシャープとの提携など、外国企業が日本企業を買収する場合は、不振事業のケースが大半でしたが、技術をもっていながら海外進出の遅れている企業に海外から統合の提案が行われた点が今回のニュースのポイントです。
円高を背景に日本企業は積極的に外国企業にM&Aをかけていましたが、円高はさらに日本企業の海外企業からの買収を防衛してきた側面ももあります。
アベノミクス、アメリカの財政が崖の回避などより円安が進む流れの中、技術があるけど世界に売り込めない企業を狙った企業への買収や提携の動きは今後も続くかもしれません。
海外企業の傘下にはいるのか、自身で世界市場へ売り込むか、日本企業の世界展開は待ったなしですね。
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。