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今日は、7月25日の日経朝刊1面のトヨタ、カーシェアリング参入の記事からです。
【記事要約】
・トヨタ自動車はカーシェアリング事業を全国で始める。
・「ラクモ」というブランドを作り、約1200ある系列レンタカー店にサービス導入を促す。近隣地域を短時間乗るきに使うカーシェアリングは主に欧米で普及し始めている。自動車最大手のトヨタが参入することで利用できる場所が大幅に増え、日本国内でも一気に普及する可能性がある。
・予約に必要な情報システムや料金体系、運営方法はトヨタが詳細を詰め、レンタカー会社に提案する。実際にサービスを導入するかどうかはレンタカー店が費用負担などを考えて、個別に判断する。
・カーシェアが増えると新車販売が減少するなどの影響が懸念されるが、トヨタは出張時など短時間の利用や買い物の手段、あるいは事実上の2台目の車として考える人も多く、販売面への打撃はないとみている。むしろ、カーシェアリングが広がれば消費者が車に触れる機会が増え、中長期的に新車市場を拡大する効果もあるとのこと。お金の使い道が大きく変化した若者の車離れも深刻になっており、そうした層を車に回帰してもらえるような環境づくりに一役買う可能性がある。
・カーシェアリングの市場は台数ベースで現在7,000程度とみられている。このうち、タイムズ24とオリックス自動車が8割~9割を握る。金額ベースでは2013年に、10年比で6倍の150億円規模まで成長する見通し。
・国内新車販売が人口減で伸び悩むなか、車を売るだけでなく、カーシェアリングなどに事業を広げ、サービス分野でも成長を目指そうとする自動車メーカーが今後は増えそうだ。
以前、パーク24のカーシェアリング事業について取り上げました。
【関連記事】
現在のカーシェアリング大手といえば、コインパーキングでお馴染みのパーク24の「タイムズプラス」、レンタカーを手掛けるオリックスグループの「オリックスカーシェア」、大手総合商社の三井物産グループの「カレコ」でしょうか。
3社のカーシェアリング事業の展開状況とを代表的な料金体系を一覧にすると下記のとおりです。
運営会社 | パーク24 | オリックスグループ | 三井物産グループ |
カーシェアリングブランド | タイムズプラス | オリックスカーシェア | カレコ |
ホームページ | http://timesplus.jp/ | http://www.orix-carshare.com/index.htm | http://www.careco.jp/ |
直近展開状況 |
車両台数:4,132台 ステーション数:2,997件 会員数:116,829人 |
車両台数:1,641台 ステーション数:1,025件 会員数:不明 |
車両台数:511台 ステーション数:438件 会員数:不明 |
代表的な個人向け料金プラン概要 (詳細は各社のHPをご覧下さい) |
【基本料金(月額)】 1,000円(利用料金に充当)
【ショート料金】 200円/15分(ベーシック)
【パック料金】 3,900円(6時間)、6,500円(12時間)、8,000円(24時間)など+15円/km (6時間プランは距離料金なし、その他ナイトパックもあり) |
【基本料金(月額)】 2,000円(利用料金に充当)
【ショート料金】 200円/15分(スタンダード)+ 15円/km
【パック料金】 3,500円(6時間)、4,500円(12時間)、6,000円(24時間)など+15円/km (その他夜間パックあり)
上記は個人Aプランで記載 |
【基本料金(月額)】 2,980円(利用料金に充当)
【ショート料金】 170円/10分+ 15円/km(コンパクトカー)
【パック料金】 4,400円(6時間)、5,300円(12時間)、6,800円(24時間)など+15円/km(コンパクトカー)
上記はバリュープラン |
<情報リソース>
・カーシェアリング比較サイト http://www.car-share.net/compare.html
・各社HP など
展開数では、タイムズプラスが圧倒的な数を誇っています。
また、料金体系も3社間でかなりのばらつきがあります。
タイムズプラスは基本料金が安く、また、ショートプランの場合、距離料金がかからないという特徴があります。
ただし、パックプランになると他の2社より高くなっており、利用スタイルによって、最安値の会社は異なるようです。
オリックスグループ、三井物産グループのIR情報では、カーシェアリングビジネスの業績が読み取れないので、最後に簡単にパーク24の財務情報から、カーシェアリングビジネスの動向を読み解いてみます。
タイムズプラスのカーシェアリングの業績推移は以下のとおりです。
会員数、ステーション数ともに、ここ数年で急上昇していますね。1年半で、ステーション数は3倍、会員数は4倍にまで増大しました。
市場は、急速に拡大しているのが読み取れます。
ただし、カーシェアリング事業の利益状況はどうでしょうか。
パーク24の業績を見てみます。
パーク24全体の業績は、駐車場事業が牽引して好調です。
しかし、下記のとおりカーシェアリング事業が含まれるモビリティ事業は営業赤字です。
直近の第2四半期(平成24年4月期)累積でも、モビリティ事業は、469百万円の営業赤字です。
■ パーク24の直近モビリティセグメントの業績
パーク24 | |
カーシェアリングブランド | タイムズプラス |
証券番号 | 4666 |
直近年度決算期 | 平成23年10月期 |
適用会計基準 | JP |
直近売上高(百万円) |
124,080 |
直近営業利益(百万円) |
13,292 |
直近経常利益(百万円) |
12,711 |
直近当期純利益(百万円) |
6,546 |
カーシェアリング事業の属するセグメント名 | モビリティ事業 |
カーシェアリング事業の属する 直近セグメント売上高(百万円) |
22,097 |
カーシェアリング事業の属する 直近セグメント営業損益(百万円) |
△109 |
カーシェアリング事業の属する直近セグメント営業損益率(%) | △0.49 |
※ ただし、モビリティ事業には、カーシェアリング事業の他、レンタカー事業(マツダレンタカー)なども含まれている
有価証券報告書や四半期報告書の業績の概要でも、モビリティ事業の営業赤字は、カーシェアリングサービスの拡大に伴う先行投資が響いているとこのとです。
業界1位のタイムズプラスがこの状況ですので、カーシェアリングマーケットは急速に拡大していますが、ビジネスモデルとしては、まだ先行投資段階かつ試行錯誤段階で勝ち組はできていないようですね。
今後のビジネスとしては、タイムズプラスは、駐車場事業であるタイムズ24とのシナジーを、オリックスはレンタカー事業との品―時を、トヨタは自動車事業とレンタカー事業とのシナジーをどれだけ発揮できるのかにかかっているのかもしれません。
トヨタ参入で、クルマは「保有するもの」から「利用するもの」への大きく変化するのか注目するとともに、そもそもビジネスモデルが定着するのかどうかについても注目したいと思います。
現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。