株式会社インターナレッジ・パートナーズ IKP税理士法人

2012/07/25 キヤノンもミラーレス発売 最後発で参入

現在、こちらのアーカイブ情報は過去の情報となっております。取扱いにはくれぐれもご注意ください。

今日は、7月24日日経朝刊11面のキヤノンのミラーレス一眼参入の記事からです。

 

【記事要約】


キヤノンは23日、「ミラーレス」と呼ばれるレンズ交換式デジタルカメラ事業に参入すると発表した。

・ミラーレスはデジタルカメラ一眼レフよりも小型軽量な点が受けて、女性や若者の人気が拡大。レンズ交換式ではミラーレスが国内市場の4割を占める主戦場となっている。また、今後は国内ほど同製品が普及していない欧米市場の拡大も期待できる。

・新製品「EOS M」を9月中旬に投入、デジタル一眼レフ普及機「EOS Kiss X6i」より本体重量は5割軽い。

・新製品はアダプターを付ければ約60種以上を数える一眼レフ用の交換レンズが装着可能。既存の一眼レフユーザーのサブカメラとして需要掘り出しも狙う。

・スマートフォンの普及で、コンパクトデジカメの需要が頭打ちのなか、一眼レフなどのレンズ交換式の需要は伸びている。

・ただし、キヤノンにとっての主戦場はあくまでミラーレス一眼ではなく、デジタル一眼レフ、新製品は他社製品に対応するだけでなく、将来より上位のデジタル一眼レフに顧客を誘導するための足掛かりとする。

・デジカメ世界最大手のキヤノンは国内最後発となるが、デジカメのブランド力や豊富なレンズなどの経営資源を生かし、今期下期に11%のシェア獲得を目指す。


 

過去のビズブロでもキャノンがミラーレス市場へ参入するか、取り上げました。 

ミラーレスカメラについてや、レンズ一体型デジカメとレンズ交換型デジカメの市場の動向についても触れているので参考にしてみてください。

 

2011/12/05 年末商戦、デジタル一眼など品切れ拡大 タイ洪水で

 

一眼レフカメラ市場で世界シェアの9割をもつといわれるキヤノンとニコンの2者のうち、ニコンは、2011年9月に「Nikon 1」で同市場参入済みです。もう1社のキャノンがどう動くのか注目でしたが、レンズ交換式の国内市場の4割をミラーレスが占める中、無視はできかったのでしょう。

2012年3月期のXBRL情報に基づきデジカメ大手のステータスを更新しておきます。

 

キヤノン ニコン ソニー パナソニック 富士フィルム オリンパス
証券番号 7751 7731 6758 6752 4901 7733
会計基準 SEC JP SEC SEC SEC JP
直近決算期 2011.12 2012.3 2012.3 2012.3 2012.3 2012.3
直近売上高(百万円) 3,557,433 918,651 6,493,212 7,846,216 2,195,293 848,548
直近営業損益(百万円) 378,071 80,080 △67,275 43,725 112,948 35,518
直近営業損益率(%) 10.62 8.71 △1.03 0.55 5.14 4.18
直近当期純利益(百万円) 248,630 59,305 △456,660 △772,712 43,758 △48,985
自己資本(株主資本)比率(%) 64.9 50.3 15.3 29.2 62.8 4.6
自己資本(株主資本)利益率(%) 9.6 14.4 △20.0 △34.4 2.5 △62.3
デジカメ事業が属するセグメント名  コンシューマ  映像事業 コンスーマープロダクツ&サービス  AVCネットワークス  イメージングソリューション 映像事業

デジカメ事業が属する

セグメント売上高(百万円)※

1,312,044 588,477 3,136,757 1,713,475 323,456 128,645

デジカメ事業が属する

セグメント営業損益(百万円)

211,294 53,971 △229,807 △67,853 △3,981 △10,760

デジカメ事業が属する

セグメント営業損益率(%)

16.10 9.17 △7.32 △3.95 △1.23 △8.36

直近財務情報

(当社財務DBより)

キヤノン_通期.pdf

ニコン_通期.pdf

ソニー_通期.pdf

パナソニック_通期.pdf

富士フィルム_通期.pdf

オリンパス_通期.pdf

主なデジカメ機種

一眼レフ

ミラーレス一眼 

コンパクト

一眼レフ

ミラーレス一眼

コンパクト

一眼レフ

ミラーレス一眼

コンパクト

ミラーレス一眼

コンパクト

コンパクト

一眼レフ

ミラーレス一眼 

コンパクト

主力ブランド

EOSシリーズ

IXYシリーズ

PowerShotシリーズ

Dシリーズ

Nikon 1

ニコンクールピクス

αシリーズ

NEXシリーズ

サイバーショット

ルミックスGシリーズ

ルミックスシリーズ

FINEPIX

Eシリーズ

PENシリーズ

Xシリーズ

Sシリーズ

 

※ 各社のセグメント名および当該セグメントの主要製品は下記ののとおり。

キャノン:コンシューマ事業(デジタル一眼レフカメラ、コンパクトデジタルカメラ、交換レンズ、デジタルビデオカメラ、インクジェット複合機、単機能インクジェットプリンター、イメージスキャナー、放送用テレビレンズ)

ニコン:映像事業(レンズ交換式デジタルカメラ、コンパクトデジタルカメラなど)

ソニー:コンスーマープロダクツ&サービス(液晶テレビ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゲーム、パーソナルコンピューター等)

パナソニック:AVCネットワーク(映像・音響機器)

富士フィルム:イメージングソリューション(一般消費者向けカラーフィルム、デジタルカメラ、フォトフィニッシング機器、写真プリント用カラーペーパー、薬品等)

オリンパス:映像事業(デジタルカメラ、録音機)

 

デジカメだけのセグメントはないため、比較は難しいですが、やはりキヤノン、ニコンの利益率は高さが目立ちます。

ソニーやパナソニックは、デジカメというよりテレビ事業の赤字が大きく響き、赤字に転落しています。 

 

最後に、今回の日経の記事で日本のデジカメ産業にとっての重要なポイントを指摘していたのでその点を触れてみます。

 

【記事 続き】 


・キヤノンとニコンががデジタル一眼レフ市場で世界シェア5割以上をもつまでに成功したのは、両者ともフィルムカメラで培ったレンズや光学ファインダーなどの光学技術をデジタル化に生かすことに成功したため

・ただ、一眼レフでは光学技術が障壁となって開発できなかった中国や台湾などの企業が参入しやすくなるとの見方もある。デジカメは画像処理などに各社の様々な特許が絡むが、ミラーレスでは重要な特許が絡んでいないとされる。また、大半のミラーレスは開発や製造に高度なノウハウを要する光学ファインダーを持たないため、一般にデジタル一眼レフより開発期間が短く、参入障壁も低いとみられている。

・実際、デジカメでは日本勢に次ぐ世界4位の韓国サムスン電子も今春以降、ミラーレスのラインアップ拡大や自社家電品との連携を強化している。


 

日本のお家芸だったテレビ産業で韓国勢の後塵を拝することになった要因の一つが、テレビ産業の「モジュール化」にあると言われています。

 

ブラウン管テレビの製造には、高度な画像技術が必要とされ、この技術力が参入障壁となっていました。ソニーなどはこの技術力を武器にテレビ市場で世界を席巻したわけです。

 

しかし、液晶テレビなどの薄型テレビが普及してくると、規格化された部品を組み合わせさえすれば、テレビ開発が可能となり、結果、技術的な障壁は薄れました。

 

また、モジュール化の進んだ産業では、コスト優位である水平分業型モデルが必須ですが、垂直統合型にこだわり続けた日本は(これはブラウン管時代の成功の罠といえるでしょう)、結果、コスト競争力で韓国勢等に敗れ、現在に至るわけです。

 

モジュール化は、アナログからデジタルへシフトする中で特に起こりやすいと言えます。パソコンなどはモジュール化の代表例ですね。いまや家電量販店などで部品を購入して組み合わせれば、技術的な知識はあまりなくても作れてしまいますね。

ちなみに現在モジュール化は、パソコン産業、テレビ産業へ波及し、そして、自動車産業にもその波が押し寄せているといわれています。

 

上記の記事に戻りますが、まさに、テレビ産業との同じことがカメラ産業でも起きる可能性があることを指摘しているといえます。デジタル一眼レフカメラで要求されて高度な光学技術が、ミラーレス一眼カメラによって、モジュール化が進み、技術的な参入障壁が崩れる可能性があるわけです。

 

あらゆる工業製品でデジタル化の波が押し寄せ、モジュール化が進む中、製造業全体で今後のビジネスモデルの再確立が求められているといえますね。

 

デジカメの世界市場で4位につけているのはサムスン電子...テレビ産業のようにならないことを祈りつつ今後の動向に注目したいと思います。

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