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第2四半期も終わり、年末調整の時期に入ってきました。
今日は、いつものビジネス系のネタに変えて、年末調整について若干の解説をしていきたいと思います。年末調整について解説する機会もこの年末調整の時期ぐらいしかないですからね。
細かい年末調整の実施方法については、国税庁から届く「平成25年分 年末調整のしかた」を読んでいただくとして、当グループの税務クライアントからよく寄せられる実務的な質問についてご紹介できたらと思います。また、子会社の役員や外部委員会の委員など就任している方などからも自身の確定申告について聞かれることがありますので、それについも若干の解説を加えたいと思います。
Biz-Blogをご愛読いただいている方の中には企業にお勤めの経理マンの方も多いかと思いますので、ご参考にして頂ければと思います。
Q1.アルバイトやパートは年末調整対象者なのでしょうか。
Answer アルバイトやパートでも年末調整対象者になる場合があります。
正社員、アルバイト、パートといった契約形態によって年末調整対象者を判断するわけではありませんので、アルバイトやパートにおいても年末調整対象者になる可能性はあります。年末調整対象者かどうかの判断は「給与者の扶養控除等申告書」の提出の有無によって判断します(支払額が年間2000万円を超える高額給与者は除きますが、アルバイト・パートでそのような人はいないと思います)。
所得税法上では、給与所得者は主たる給与支払事務所に対して扶養控除等申告書を提出する義務があり、主たる給与支払事務所に選択された企業はその受け取りを拒絶することはできません。なので、アルバイトやパートであっても1カ所でしか勤務がないような場合は、その企業に対して扶養控除等申告書を提出することになるので、当該企業はそのアルバイトやパートの方に対して年末調整を実施しなければならないことになります。
扶養控除等申告書の提出の有無は、給与支給時の源泉徴収税額を「甲」で計算するか、それとも「乙」で計算するかといった判断で利用されるだけではなく、年末調整対象者に含めれるかどうかの判断材料にもなります。
ただ、多くの企業ではアルバイトやパートタイマーに対し、扶養控除等申告書の提出を積極的に指導していないように思えます。そもそも正社員でなければ副業禁止規定はないところが多いでしょうから、他企業で給与をもらっているアルバイトやパートもおり、彼らに対し、上記のような所得税法の規定を解説し(知らない人が大半だと思うので)、自社が主たる給与支給事務所かどうかを判断させることをわざわざやらない会社が多いようです。年末調整業務自体が膨大な資料をもとに計算していかなければならないものなので、経理部や人事部の業務がひっ迫するだけでなく、外部へアウトソースしている場合も実際の料金が発生するなどコストがかかることが理由だと思われます。飲食店や小売店などで大量のアルバイト、パートを抱える企業に特に見受けられます。
なお、「平成25年分 年末調整のしかた」のp8には、「注意事項」として、「1か所から給与の支払いを受ける人で、年末調整を行う時までに、その給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人については、この申告書を提出するよう指導してください」と記載されています。
Q2.私は子会社の社外監査役として、本社給与と別に役員報酬を5万円(年間合計60万円)ほどもらっています。年末調整はどうなりますか?
Answer ご自身で確定申告を行う必要があります。
年末調整は、主たる給与支払事務所が、その従業員の方が自分のところからしか給与をもらっていないことを前提に年末調整を実施します。このため、他の企業からもらっている給与は、当該企業の年末調整の中には加味されません。年末調整を行う企業からすれば、他の企業からいくらもらっているか把握する作業が難しいため、他の企業の給与収入などは加味しないように設計されています。たとえ、その他の企業が子会社などで状況を把握できるとしても、例外はありません。
給与を2か所以上からもらっている場合には、原則として、自身で確定申告を実施する必要があります。ただし、2か所以上から給与を受ける給与所得者で、年末調整を受けた主たる給与以外の従たる給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超えない場合には、確定申告は必要ないことになっています。
質問者の方の場合、従たる給与として子会社から年間合計で60万円の役員報酬(給与)をもらっていることになるので、ご自身での確定申告が必要になります。
Q3.今年になって転職しました。今の会社から前職のときの源泉徴収票を出すように言われたのですが手元にありません。
Answer 必ず前職の会社から源泉徴収票を再発行してもらい、現職の企業に提出してください。
前質問では他の企業での収入については加味しない旨の解説を行いましたが、前職での給与についての取り扱いは別になります。前職での給与については、現職の企業が行う年末調整に加味して実施します。
所得税法では、従業員が退職した場合には、企業は退職時に退職時点までに年中に支払った給与に関する源泉徴収票を渡す必要があります。これは企業側の義務ですので、源泉徴収票の提出を拒否することはできません。
前職の源泉徴収票には、給与の支給額だけでなく、社会保険料の控除額、源泉徴収税額などの情報が記載されているため、年末調整業務において必要な情報があります。たまに、源泉徴収票をなくされて、再発行を前職企業に依頼するのにためらいがある、、といった声もきかれますが、年末調整時の必要書類なので、再発行を依頼し、現職企業に提出できるように整えましょう。
なお、一般的な企業では、就職時の提出書類に前職の源泉徴収票を含めていることが多く、年末調整の作業時に資料を徴収するのではなく予め徴収しておくのも手かと思います。
Q4.役員から「私は2か所以上から給与もらっていてどうせ確定申告するから年末調整しなくていい」と言われました。年末調整しなくていいのでしょうか?
Answer 年末調整をする必要があります。
年末調整の要否の判断は、Q1で解説した通り、扶養控除等申告書の提出の有無になります。なので、他の収入があり確定申告する方の場合であっても、扶養控除等申告書の提出を受けた企業は当該役員・従業員に対して年末調整を実施する必要があります。
なお、年末調整を実施した場合、年末調整実施後の源泉徴収票が提出されることになります。そこには、生命保険料の控除金額などが記載されており、確定申告を行う上でもぐっと楽になります。生命保険料の控除証明書などの添付も不要になるので、その役員の方にとってもメリットがあると思います。是非、年末調整を実施しましょう。
なお、国税庁の「平成25年分 年末調整のしかた」p91にも同様のQ&Aが記載されています。ご参考にしてください。
Q5.妻にパート収入があり、年間120万ぐらいにはなりそうです。ただ、配偶者特別控除を受ける際の見込額ははっきりしません。どうしたらいいでしょうか。
Answer 「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」にはあくまで見込額を記載すれば問題ありません。
配偶者控除ではなく、配偶者特別控除を適用する場合には、配偶者特別控除申告書に、その配偶者の方の合計所得金額を見積もり、記載する必要があります。配偶者特別控除は、配偶者の方の収入に応じて控除額が異なるからです。
しかし、年末調整業務を行う時期(11月や12月頃)には、まだ配偶者の収入金額が確定しているわけではなく、あくまで見積もりとなってしまうのは仕方ありません。なので、見込額をそのまま記載すれば問題ありません。年末調整を実施する側としても、従業員から提出された見込額をベースに年末調整を実施することになります。
なお、配偶者が12月に実際に給与を支給されたあと、見込額と実際の金額とが乖離し、控除額が変わってしまう場合があります。この場合は、年末調整の再調整を行うことができます。この再調整は、従業員に対して源泉徴収票を提出するまでであれば行えます。この取り扱いは、配偶者特別控除だけでなく、扶養控除についても適用されますので、たとえば年末調整実施後に子供が生まれた場合などは会社に直ちに扶養控除等(異動)申告書を再提出し、年末調整のやり直しをしてもらうのがよいでしょう。
この申告を受けた企業側は、年末調整を再実施し、その調整分を1月支給に含めて行うのが一般的かと思います。
なお、国税庁の「平成25年分 年末調整のしかた」p70にも記載があります。ご参考にしてください。
Q6.子供が大学に通うため家を出ているが、扶養控除の対象になるのか。
Answer 「生計が一(いつ)」であれば扶養控除の対象者です。
一緒に住んでいなくても、「生計が一(いつ)」であれば、扶養控除の対象になります。これは配偶者控除においても同じです。
所得税法だけでなく、税法では「生計が一」が適用要件となっていることが多いのです。年末調整ではそれほど深く考えることはありませんが、念のため、所得税法基本通達の規定について記載しておきます。
(生計を一にするの意義) 2-47
法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。
なお、国税庁の「平成25年分 年末調整のしかた」p12にも同様の解説が記載されています。ご参考にしてください。
Q7.公的な委員会の委員をやっており、そこから謝金をもらっている。どうしたらいいか。
Answer 確定申告が必要な場合があります。報酬金額などの条件によって対応が異なります。
公的な委員会などからもらう謝金は、原則、給与として取り扱われます。所得税基本通達で以下のように規定されています。
(委員手当等)28-7 国又は地方公共団体の各種委員会(審議会、調査会、協議会等の名称のものを含む。)の委員に対する謝金、手当等の報酬は、原則として、給与等とする。ただし、当該委員会を設置した機関から他に支払われる給与等がなく、かつ、その委員会の委員として旅費その他の費用の弁償を受けない者に対して支給される当該謝金、手当等の報酬で、その年中の支給額が1万円以下であるものについては、課税しなくて差し支えない。この場合において、その支給額が1万円以下であるかどうかは、その所属する各種委員会ごとに判定するものとする。(平2直法6-5、直所3-6改正)
上記の但し書きにあるように、その委員会に参加するための交通費などが支給されていない場合で、かつ、金額が1万円以下であるような場合には、交通費などの経費的な性格が強まるため給与として処理する必要がない旨が記載されています。
このため、謝金がどの程度であるかによって処理が異なります。金額が1万円以下のような場合は給与として取り扱う必要がないため、給与収入に含める必要すらなく、当然に確定申告する必要がありません。
また、謝金が給与として支払われるようなケースでも、Q2で解説しているとおり、その謝金から得られた収入は従たる給与に該当することになるため、従たる給与の給与収入と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超えなければ確定申告の必要はありません。なので、謝金の金額が小さければ確定申告の必要はない可能性があります。
なお、公的機関の委員の謝礼金ではないが、民間の協議会のようなものに参加した時に謝礼金をもらうことがあります。この場合の多くは、給与として取り扱われないことが多く、結果として「源泉徴収票」ではなく、「支払調書」をもらうことがあると思います。この場合は、給与所得ではなく「雑所得」として処理することになります。雑所得も上記と同様、上記の20万円判定の中に含まれます。すなわち、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」にこの雑所得が含まれます。他にこういった収入がなく、合計が20万円以内にあれば確定申告が必要ありません。
また、支払う側の処理としては、「謝礼金」という名目であっても交際費ではなく支払報酬料として損金経理できる可能性があります。もちろん、公的委員会の委員への謝礼金の処理を踏襲する形で給与処理も可能です。この場合は、源泉徴収が必要になりますので忘れないように処理しましょう。
Q8.今年に住宅を購入し、住宅ローンを組んでいます。住宅ローン控除が受けられると思って経理に話したら「今年の年末調整に関係ない」と言われた。どういうことか。
Answer 住宅ローン控除を受ける場合、その初年度は自身で確定申告をする必要があります。年末調整は翌年分からです。
住宅ローンを組んでいる方は、原則として住宅借入金等特別控除を適用することができます。なお、住宅ローン特別控除は、「合計所得金額が3000万円以下」や「居住用」「床面積が50㎡以上」といった各要件があるので適用に注意が必要です。
さて、この住宅ローン控除は年末調整の作業に組み込まれたものですが、住宅ローン控除の適用初年度だけは除外されています。住宅ローン控除を年末調整で行う場合、税務署が発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」と金融機関が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の添付が必要になります。この際、税務署から発行される控除証明書は住宅ローン控除の適用を受けた翌年から発行されるものであるため、住宅ローン控除を適用しようとする年には年末調整することができない仕組みになっています。
このため、住宅ローン控除を適用したいと思う初年度は自身で確定申告を行う必要があります。会社が行った年末調整実施済みの源泉徴収票と併せて、住民票や登記簿謄本の写しなどの添付書類が必要になります(詳しくは管轄の税務署にお問い合わせください)。基本的に還付されると思いますので、早めに申告すると優先的に処理してもらえ、早く還付してもらえます。なお、通常の確定申告は、2月16日から3月15日までですが(今年は平成26年2月17日(月)から同年3月17日(月))、還付のための申告は翌年の1月1日から行うことができます。
Q9.当社の給与支給は、月末締めの翌月10日にしている。12月締めの1月10日払いの給与は未払給与になる。この1月支払い給与は平成25年分の給与に含めるのか?
Answer 含めません。支給時(1月10日)の年分の給与に含めますので、この場合は平成26年分の年末調整に含まれるものです。
会社の経理としては、発生主義に基づき未払給与を計算しますが、所得税法における給与所得の概念は発生主義ではなく、原則として現金主義的な処理を行いますので、支払い確定時(月末)ではなく、支給時(この場合翌月10日)が収入の認識日となります。
このため、年末調整でも1月10日に支給される給与については今年の年末調整に含めず翌年の給与として処理します。
なお、もし支給日が定められていない給与については、その支給を受けた日となります。ここで「支給日が定められている」とは契約だけでなく慣習によって支払われるものも含まれます。すなわち、雇用契約書がない場合でも、毎月20日支払いなどをしているのであれば、その20日が支払日とみなされることになります。
これについては、国税庁の「平成25年分 年末調整のしかた」p91にも同様の解説が記載されています。ご参考にしてください。
Q10.現在、企業の経理部で働きながら税理士試験の勉強中です。これは、給与所得者の特定支出控除の対象になるのでしょうか。
Answer 給与所得者の特定支出控除を受けるためには、支出総額の要件と企業側が必要と認める2つの要件を満たす必要があります。
給与所得者は、給与収入に応じて法定による給与所得控除額が計算され、それを給与収入から差し引くことで課税対象となる給与所得が計算される仕組みになっています。このため、業務のために必要な資格取得の勉強や接待費の支出などがあったとしても、原則として給与所得控除しか控除を受けることができませんでした。
そこで、税制改正により平成24年分より「給与所得者の特定支出控除制度」を制定し、業務に必要な多額の支出があった場合に課税所得が減額されるようにする仕組みが設けられました。この特定支出控除制度は、さらに税制改正され、平成25年分では、適用範囲の拡大と適用判定基準の見直しが行われています。税理士の資格取得支出は平成25年分から適用可能になりました。
適用範囲としては、①通勤費、②転居費、③研修費、④資格取得費、⑤帰宅旅費、⑥勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費等)の6つに限定されています。なお、その支出につき会社から補てんされている場合は、その補てん部分は含まれません。たとえば、交通費は会社から全額支給されていることが多いと思いますが、その場合は、この特定支出控除の対象には含まれません。
この控除を適用するには、2つの大きなハードルがあります。
まず1つ目が支出金額が給与所得控除額の2分の1を超えた部分にのみ適用されるという点です。たとえば、年収500万円の場合、給与所得控除額は1,543,200円なので、2分の1である771,600円を超えた部分からしか控除の適用を受けられません。質問者の方が税理士試験の勉強のために専門学校や参考図書などを購入した金額がこれを超えていれば適用することができます。実際に集計してみないとわからないと思いますが、意外と高額な支出になる必要があるため、適用されるケースは少ないのではないかと思います。
次に、この支出が業務のために必要なものでなければならない点です。税理士勉強の資格取得が会社にとって職務に直接必要でなければならず、確定申告には会社の証明書が添付書類となっています。このため、会社にとって質問者の方が税理士資格の取得が職務上必要であると判断する必要があります。
経理部であれば、確定申告業務などの通常職務において必要な知識であるとの判断から証明書を発行してくれる可能性はあろうかと思いますが、ただ純粋に自分のステップアップのために税理士試験を勉強していると判断された場合、この証明書が発行されない可能性があります。
上記のとおり、適用するためには要件を満たす必要がありますので、要件を満たせば場合には、確定申告で還付を受けるのがよいかと思います。まずは特定支出金額が給与所得控除額の2分の1を超えるか確認してみましょう!
なお、特定支出項目についての詳しい解説は、国税庁のこちらのページを参照してください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1415.htm
少しマニアックな論点もありますが、参考にして頂ければ幸いです。
以 上
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