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今日は、本日日経朝刊11面の特集記事「日本車新興国に挑む」からです。
【記事要約】
・自動車産業の主戦場が先進国から新興国へと変わろうとしている。象徴的なのが先週明らかになったトヨタ自動車や日産自動車による国内生産体制の見直しだ。
・日産は新興国向けの低価格ブランド「ダットサン」の復活を発表。インドネシア、インド、ロシアでダットサンの生産を始める。インドでは提携するバジャジ・オート、ロシアでは仏ルノーと買収したアフトワズと協力、開発速度や生産の立ち上げを早くする。活用する設備は多くが償却済み。価格は各国で50万円位前後に下げることが可能。
・矢継ぎ早の展開は欧州・韓国勢への対応のため。新興国の新車販売は2010年に初めて先進国を抜いた。しかし、新興国の恩恵を受けているのはかねて新興国に軸足を置いてきた独フォルクスワーゲン(VW)や韓国の現代自動車だ。
・現代自動車は研究開発を抑え、マーケティング投資などに力を入れる。10年先の技術より成長市場への投資を急いでいる。日本車各社は最近まで新興国向けでも先進国並みの仕様にこだわり、投資にも時間がかかり、結果的に中国やインドでは存在感が薄い。その反省から強まってきたのが少しでも速くとの投資の動き。
・トヨタは、自前で工場をつくるのではなく、現地メーカーに組み立ててもらうノックダウン(KD)式を活用し、エジプトで多目的スポーツ車の生産を始めた。年末にはロシアで2つ目の拠点となる極東ウラジオストクでKD生産する。
・トヨタと日産は雇用と部品産業を守りつつ、円高や人口減が定着した日本国内の生産能力を削減することを決めた。日本の工場は、今後、マザー工場の役割も増え、主戦場となった新興国での生産、販売を支える場面が増えていく。VWや現代に見劣りした経営スピードは徐々に上がり、海外戦略にも変化の波が寄せ始めた。
(2012年6月28日付の日本経済新聞朝刊11面より)
世界の自動車市場で近年勢いがある会社といえば、ドイツのフォルクスワーゲンと韓国の現代自動車ですね。
つい最近のビズブロでも現代自動車を取り上げ、その利益率の高さが浮き彫りになりました。
■ 2012/06/18 現代自動車など 韓国勢 日本で技術者採用
ただし、現代自動車の場合、2011年度の業績を見る限り、全体としては新興国の成長よりも先進国とくに北米や欧州の成長が大きく寄与しています。
一方、フォルクスワーゲンはどうなのかということで、今回は、フォルクスワーゲンの規模や業績などについて前回の現代自動車の財務状況をトヨタ自動車と比較表をもとに簡単に見てみます。
フォルクスワーゲン(独) |
現代自動車(韓) |
トヨタ自動車(日) |
|
直近期(通期) | 2011.12 | 2011.12 | 2012.3 |
適用会計基準 | IFRS | K-IFRS | US-GAAP |
Total sales and revenue/売上高 |
159,337 million € (15,933,700 百万円) |
77,797,895 million Won (5,445,852 百万円) |
18,583,653 百万円 |
Operating income/営業利益 |
11,271 million € (1,127,100 百万円) |
8,075,477 million Won (565,283 百万円) |
355,627 百万円 |
売上高営業利益率 |
7.07% |
10.38% |
1.91% |
Net income/当期利益 ※ |
15,409 million € (1,540,900 百万円) |
7,655,871 million Won (535,910 百万円) |
283,559 百万円 |
Cash and cash equivalents /現金・現金同等物 |
16,495 million € (1,649,500 百万円) |
6,231,946 million Won (436,236 百万円) |
1,679,200 百万円 |
Total assets/資産総額 |
253,626 million € (25,362,600 百万円) |
109,479,975 million Won (7,663,598 百万円) |
30,650,965 百万円 |
Stockholders' equity/株主資本 ※ |
57,539 million € ( 5,753,900 百万円) |
37,113,033 million Won ( 2,597,912 百万円) |
10,550,261 百万円 |
世界新車販売台数(2011年) |
816万台(世界2位) |
660万台(世界5位) |
795万台(世界3位) |
※ 日本円ベースは100円/ユーロ、0.07円/ウォンで簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。
※ 当期利益と株主資本は支配株主帰属分
フォルクスワーゲンは、世界新車販売台数は2011年は前年より順位を一つ上げて2位にまで浮上しています。ヨーロッパ経済の信用不安を背景とした歴史的なユーロ安も輸出の勢いを加速させています。
利益率も現代自動車には及ばないにしても、高水準を達成しています。
特に2011年は、売上高は前期比25.6%増の1,593億ユーロ 、営業利益は、前期比50%以上の増加となる113億ユーロを達成し、販売台数・収益・利益ともに過去最高記録を出しています。
一方、トヨタは東日本大震災の影響もあり、2010年は1位でしたが、順位を二つ落としています。営業利益も一時は1兆円を超しましたが、それが直近期は3分の1にまで落ち込んでいます。
最後に、フォルクスワーゲンの過去5年間の地域別の売上高および、その成長率の推移を見てみます。
2011年の業績の伸びが大きいですね。特にここ2年間のアジアの成長は目を見張るものがあります。
本日の記事のとおり、フォルクスワーゲンは新興国の成長をうまく取り込んだことが、好業績につながっているようです。
新興国市場での競争力確保のため、国内生産にこだわり続けた自動車メーカーも、とうとう舵をきりました。
エレクトロ産業は、自前主義・垂直統合にこだわり戦略の舵取りが遅れ、競争力を落としました。
戦略転換により国内自動車メーカーは新興国市場で巻き返しができるのか今後の展開に注目したいと思います。
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