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今日は、本日の日経朝刊2面の日本航空の上場申請の記事からです。
【記事要約】
・日本航空は20日、東京証券取引所に上場を申請した。再上場は9月19日を想定、経営破綻から約2年8か月で株式市場にスピード復帰する。
・今年最大の上場案件となる見通し。
・再建の総仕上げには3つの課題がある。
・1つ目。会社更生法の適用申請後に実施した大規模なリストラが奏功し、2012年3月期は過去最高となる2049億円の連結営業利益と計上。しかし今期は前期比27%減の1500億円の見通し。抑制していた人件費の上昇、財産評定に伴う減価償却費の減少など効果が薄れる、のが主な理由。17年3月期までに500億円の追加経費削減を進めるなどして売上高営業利益率は10%以上を目指すが、一度紙くず同然にしている株券に魅力を与える成長戦略を描くことが求められる。
・2つ目。現在、日航株の96%を保有する企業再生支援機構は来年1月までに株式を売却する方針。上場時の時価総額は6千億円~7千億円とみられており、ライバルの全日空(前日終値で5800億円程度)と超える見通し。日本の航空会社には、海外企業のなどの出資比率を3分の1未満に制限する外資規制がある。このため、国内投資家とりわけ個人投資家の取り込みが不可欠。格安航空会社(LCC)が登場し、優待券だけで個人家を引きつけるのは難しい、配当などで株式の魅力を高める必要がある。
・3つ目。日航は成長戦略の軸足を国際線に置く。その中心に据えるのがアジア便だが、飛行時間4時間以内の路線ではLCCが強みをもつ。LCCとどうむきあうのか。ライバル全日空はLCC2社を傘下に置き、両者が生み出す新規需要をグループで取り込む戦略を描く。一方、日航のLCC戦略は不透明感がある。7月に就航するジェットスタージャパンに出資するが、経営主導権は豪ジェットスターが握る。LCCとは一線を画しサービスで選ばれる航空会社になると距離をおく。海外のLCCが日本への路線拡大に意欲を見せる中、日航は今後、LCC戦略の明確化を迫られることなりそうだ。
いよいよJAL復活へ最終段階にはいってきました。
ただし、相次ぐリストラにより一時的な高収益体質へ脱皮したもの、今後、高収益モデルとできるのか、世界的に存在感を増すLCCとどう住み分けしていくのか、もしくはその成長どう取り込むのか、まだまだ課題は山積しています。
日航の破綻からの回復状況や、国内航空会社との比較、国内航空会社各社のLCC戦略については、過去のBizblogでも取り上げましたね。
今回の記事の深読みために活用してください。
最後に、今回は世界の大手航空会社と簡単に比較してみます。
旅客数世界1位のデルタ航空とLCCのモデル会社とされるサウスウェスト航空との対比です。
日本航空 |
DELTA AIR LINES デルタ航空(米) |
SOUTHWEST AIRLINES サウスウエスト航空(米) |
|
直近期(通期) |
2013.3(予想)と 2012.3(実績) |
2011.12 | 2011.12 |
Total operating revenue (営業収入) |
1,220,000 百万円(予想) |
$35,115 (2,809,200 百万円) |
$15,658 (1,252,640 百万円) |
Operating income (営業利益) |
150,000 百万円(予想) |
$1,975 (158,000 百万円) |
$693 (55,440 百万円) |
営業利益率 |
12.29%(予想) |
5.62% |
4.42% |
Net income (当期利益) |
130,000 百万円(予想) |
$854 (68,320 百万円) |
$178 (14,240 百万円) |
Cash and cash equivalents (現金および現金同等物) |
158,995 百万円(実績) |
$2,657 (212,560 百万円) |
$829 (66,320 百万円) |
Total assets (資産総額) |
1,087,627 百万円(実績) |
$43,499 (3,479,920 百万円) |
$18,068 (1,445,440 百万円) |
Stockholders' equity (株主資本) |
390,919 百万円(実績) |
△$1,396 (△111,680 百万円) |
$6,877 (550,160 百万円) |
※ 日本円ベースは80円/$で簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。
※ 支配株主帰属分
LCC大手のサウスウェスト航空の利益率が思ったより低水準ですが、2011年度は燃料高により苦しんだようです。2010年度で見てみると営業利益値率は8%超になります。
上記を見てみると、営業利益率がダントツですが、今期2013年3月期の予想数値も財産評定に伴う減価償却費の減少などの恩恵を受けたうえでの水準です。
新聞報道によると、この減価償却費の減少の効果で、2012年3月期は460億円、今期は400億円程度、営業利益と押し上げているとのことですので、この効果を除くと営業利益率は”9%”です。
売上高規模こそデルタの半分になりましたが(破綻前は2兆円規模ありました)、やはり世界の主要航空会社の中でもトップクラスであることがわかります。
この水準を長期的にどこまで維持できるのか注目ですね。
前回でのBlogでもコメントしましたが、筆者の一番の関心は、対照的ともいえる日航と全日空のLCC戦略の差が今後どう業績に影響してくるのかです。今年は、日本のLCC元年とういうべき年。
LCC戦略を含む日航の再建後の戦略が株式市場でどう評価されるのか、注目したいと思います。
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