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今日は、6月17日日経朝刊の韓国企業が日本で技術者採用の行うとの記事からです。
【記事要約】
・現代自動車やLGグループなど韓国企業が日本で技術者の採用活動を始めた。狙いは日本が高い競争力を持つ先端素材・部品分野の強化だ。韓国政府も日本企業の誘致を後押しし、強い部品メーカーを自国や自社だけで育成する自前主義を転換する。
・現代自動車が日本でこうした活動を手掛けるのは初めて。世界販売台数で目標とする800万台が視野に入り、「量から質」への転換を目指す同社にとって、環境対応など先端技術の獲得は最大の経営課題。電気自動車(EV)などの開発は依然として日本勢が先行している。
・韓国政府は01年に部品素材特別措置法を制定し、先端分野の部品・素材の国産化を進めてきた。しかし、同分野は日本からの輸入が輸出を上回り続け、対日赤字は01年の105億ドルから11年には228億ドルと倍増。液晶パネルや半導体製造に不可欠な一部素材では8割以上を日本からの輸入に頼っている。韓国政府は特別措置法を10年間延長する一方で、自前だけの育成方法を転換、日系企業の誘致も両にらみで急ぐ。
・自由貿易協定(FTA)の先行や、割安な電気料金、政府の手厚い支援に魅力を感じる日系メーカーも増えており、日本製造業の競争力の源泉ともいえる同分野の技術流出を懸念する声が出始めた。
韓国で勢いのある企業といえば、サムスン電子と現代自動車ですね。
日本のお家芸であったテレビ産業ではサムスン電子を代表に韓国勢に圧倒されてしまいましたが、自動車産業でも現代自動車が世界的に存在感を増しています。
実際、2011年世界新車販売数で世界5位に位置しています。
実際、現代自動車といわれても規模や業績などピンとこない方が大勢かと思いますので、 今回は現代自動車の財務状況をトヨタ自動車と比較して簡単に見てみます。
現代自動車(韓) |
トヨタ自動車(日) |
|
直近期(通期) | 2011.12 | 2012.3 |
適用会計基準 | K-IFRS | US-GAAP |
Total sales and revenue/売上高 |
77,797,895 million Won (5,445,852 百万円) |
18,583,653 百万円 |
Operating income/営業利益 |
8,075,477 million Won (565,283 百万円) |
355,627 百万円 |
売上高営業利益率 |
10.38% |
1.91% |
Net income/当期利益 ※1 |
7,655,871 million Won (535,910 百万円) |
283,559 百万円 |
Cash and cash equivalents /現金・現金同等物 |
6,231,946 million Won (436,236 百万円) |
1,679,200 百万円 |
Total assets/資産総額 |
109,479,975 million Won (7,663,598 百万円) |
30,650,965 百万円 |
Stockholders' equity/株主資本 ※1 |
37,113,033 million Won ( 2,597,912 百万円) |
10,550,261 百万円 |
世界新車販売台数(2011年) |
660万台(世界5位) |
795万台(世界3位) |
※ 日本円ベースは0.07円/ウォンで簡便的に換算している。日本円換算数値はあくまで参考値。
※1 支配株主帰属分
ウォン安の影響を受けてか売上規模こそトヨタ自動車と比較し、小さいのですが、何よりも目立つのが利益率の高さです。
売上高営業利益率ではトヨタの実に5倍以上の水準です。
さらに両者の地域別の業績を見てみます。
■ 現代自動車の地域別業績
(In millions of Korean Won)
韓国 | 北米 | 欧州 | アジア | その他 | 調整 | 合計 | |
売上高※ |
51,565,160 (3,609,561) |
26,029,355 (1,822,054) |
20,696,366 (1,448,745) |
7,387,760 (517,143) |
- | △27,880,746 |
77,797,895 (5,445,852) |
営業利益※ |
5,922,173 (414,552) |
1,407,667 (98,536) |
574,888 (40,242) |
356,798 (24,975) |
△47,121 | △138,928 |
8,075,477 (565,283) |
営業利益率 (%) |
11.48 | 5.40 | 2.77 | 4.82 | - | - | 10.38 |
売上高前期比 成長率(%) |
113 | 121 | 158 | 106 | - | - | 116 |
営業利益前期 比成長率(%) |
127 | 186 | 383 | 98 | - | - | 136 |
※ カッコ内は日本円ベースは0.07円/ウォンで簡便的に換算した数値。日本円換算数値はあくまで参考値。
■ トヨタ自動車の地域別業績
(百万円)
日本 | 北米 | 欧州 | アジア | その他 | 調整 | 合計 | |
売上高 | 11,167,319 | 4,751,886 | 1,993,946 | 3,334,274 | 1,760,175 | △4,423,947 | 18,583,653 |
営業利益 | △207,040 | 186,409 | 17,796 | 256,790 | 108,814 | △7,142 | 355,627 |
営業利益率 (%) |
- | 3.92 | 0.89 | 7.70 | 6.18 | - | 1.91 |
売上高前期比 成長率(%) |
101 | 87 | 100 | 98 | 97 | - | 97 |
営業利益前期 比成長率(%) |
- | 54 | 135 | 82 | 67 | - | 75 |
利益率の高さもさることながら、現代自動車の北米やヨーロッパなどの先進国での成長率の高さが見れとれますね。
対照的に、東日本大震災の影響もありトヨタ自動車の北米での苦戦を強いられています。
ドルに対するウォン安と円高も大きな背景の一つですが、品質面・ブランド力でも日本勢に遜色ないレベルに達してきている点が大きいようです。
ただし、以前ブログで取り上げたように2012年3月期は不振のトヨタも復活に向けて着実に戦略を練っており今後の展開に注目です。
以前新聞で読みましたが、2010年に現代自動車は日本の乗用車市場から撤退しました。しかし、千葉県に設置していた研究開発拠点(現代自動車 日本技術研究所)は、残されています。同所での主な業務のひとつは日本車の分解や分析であり、その結果をもとにした自社製品の開発が行われていとのこと(ウィキペディアより)。
高度経済成長時代に、アメリカの先端技術を取り込むことにより成長した日本ですが、技術立国となった日本では今度は逆の立場になりました。
韓国は国を挙げて、世界に通用する企業や技術の育成が盛んです。
日本も企業独自の努力のみならず、政府を巻き込んだ日本全体で取り組まなければ、世界市場では勝てない時代となっているといえますね。
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