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今日は、少し前の記事ですが、5月30日の日経朝刊9面の丸紅の買収記事からです。
【記事要約】
・丸紅は米穀物3位のガビロン(ネブラスカ州)を買収すると正式発表。
・買収額が36億ドル(約2680億円)で総合商社による非資源分野の投資案件では過去最大級。買収資金は手元資金のほか、銀行借入で賄う。
・丸紅の穀物貿易量は3300万トンと世界シェアが1割強になり、穀物メジャーと肩を並べる。
・商社各社は市況に左右されやすい資源分野への収益依存度が高く、非資源分野の強化を急いでいる。丸紅はこれまでアジアを中心に穀物の販売力を強化してきたが、世界の穀物農家から直接調達する数量は700万~800万トンにとどまり自己調達能力が課題だった。ガビロンは3800万トンの自己調達能力をもし、うち3000万トンを米カーギルなど穀物メジャーを中心に販売、残り800万トンが輸出可能。そのため、待つベにの貿易量は13年3月期見込みの2500万トンと合わせ3300万トンとなり、2億4000万トンとされる世界穀物貿易量の1割を超すシェアを握る計算となる。
・丸紅の販売力とガビロンの調達力を統合し、急成長するアジアやアフリカ、中東などの穀物需要に対応する狙い。
この投資案件により丸紅が穀物メジャーと肩を並べることになるという記事でした。
ちなみに、世界の穀物メジャー5社は以下のとおりです(同日の日経記事より)。
カーギル (米) |
ブンゲ (米) |
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド (米) |
ルイ・ドレフュス (仏) |
グレンコア (スイス) |
穀物メジャートップ。貿易量は年4000万トン規模。 | 南米に強い。伊藤忠商事とバイオエタノール事業や港湾設備を共同展開。 | バイオエタノール事業を展開、アジアや南米にも進出 | ブラジルやアルゼンチンに輸出拠点を持つ | ロシア・東欧・豪州の集荷に強い |
穀物メジャートップのカーギルの貿易量が年間4000万トンで、今回のガビロン買収で丸紅の貿易量は3300万トンにまで達します。
日本の総合商社(特に三井物産と三菱商事)といえば近年、資源ビジネスで、巨額の利益を上げています。
さらにその資源ビジネスの恩恵を取り込もうと三菱商事が自ら開発主体となる記事を年初に取り上げました。
一方で、資源ビジネスへの依拠に危機感を強め、非資源分野への投資の動きも最近では活発です。
資源ビジネスへの依拠の大きい三井物産ではその動きが特に大きいようです。
こちらも以前ブログで取り上げました。
今回の丸紅の収益構造はどうでしょうか。
2012年3月期の丸紅の当期純利益のセグメント構成を見てみます。
伊藤忠と同じく非資源である食料品に強いといわれる丸紅ですが、利益の半分以上をエネルギーや金属などの資源ビジネスがやはり稼いでいますね。
食料:国内及び海外おける、飼料穀物、大豆、小麦、砂糖、加工食品・飲料及びその原料、業務用食材、農水畜産物等、食に係る商品の製造事業や売買
ライフスタイル:国内及び海外において、衣料・フットウェア・生活用品・スポーツ用品・フィットネス機器・タイヤ等、消費者のライフスタイルに係る商品を幅広く取り扱い、商品の企画・製造・輸入・卸売販売からブランド展開・コンサルティング・事業投資まで様々な事業を展開し、多様なサービスを提供
紙パルプ:国内及び海外において、製紙原料、洋紙、板紙等の製造・販売、植林事業への参画及び住宅資材の販売を行う
化学品:国内及び海外において、石油化学品等の川上から電子材料・農薬等の川下に至るまで多種多様の製品を取り扱う。中国に加え中東・東南アジア、南米、インドを重要地域として位置付け、事業投資とトレードの両面でバランスの良いビジネス展開を図る。
エネルギー : 国内及び海外において、石油・ガス等多岐にわたるエネルギー関連の商材について、資源開発を中心とした川上からガソリンスタンドに至る川下まであらゆる段階で事業参画する
金属 : 国内及び海外において、非鉄軽金属の製造・加工・販売及び鉄鋼、非鉄軽金属の原料資源の売買、並びに鋼板、鋼管、特殊鋼等の鉄鋼製品全般の生産・加工・販売事業を行う。また、鉄鋼、非鉄軽金属の原料資源の海外における開発事業を行う。
輸送機 : 国内及び海外において、航空機、防衛関連機器、自動車、建設機械、農業機械等の輸送関連機械の輸出入・卸売・小売等のトレードを中心に、投融資・販売金融・リース事業、海外事業支援等の幅広い機能を提供。また、各種貨物船、タンカーの取引、運航事業等を行う。
電力・インフラ :国内及び海外において、各種電力・インフラ事業、特に発電事業(造水・コジェネ・風力含む)及び上下水道事業の開発・投資・運営に加え、発電・送変電設備及び上下水道関連の機器納入並びに工事請負、その他新エネルギー関連分野の投融資を行う
プラント・産業機械:国内及び海外において、石油・ガス・化学・環境・製鉄・セメント・紙パルプ等のプラント、鉄道・空港等の交通インフラ、繊維機械・新エネルギー設備・自動車生産設備等の産業機械の各分野において、関連機器の納入・工事請負並びに事業案件の開発・運営を行う。また、クリーン開発メカニズム(CDM)等の環境プロジェクトにも取り組む。
開発建設:分譲マンション「グランスイート」シリーズの開発を主力とする国内住宅事業に加え、海外における住宅・オフィスビル等の不動産開発事業、REIT・ファンド向け収益型不動産の仲介・開発事業等、不動産に関する事業を幅広く展開
最後に、国内の総合商社5社の2012年3月期のステータスを見てみます。
三菱商事 | 三井物産 | 丸紅 | 伊藤忠商事 | 住友商事 | |
証券コード | 8058 | 8031 | 8002 | 8001 | 8053 |
会計基準 | SEC | SEC | SEC | SEC | IFRS |
直近収益(百万円) | 5,565,832 | 5,251,602 | 4,390,353 | 4,271,052 | 3,260,995 |
直近売上総利益(百万円) | 1,127,860 | 878,279 | 541,454 | 1,030,447 | 918,825 |
直近営業損益(百万円)※1 | 271,122 | 348,384 | 157,315 | 272,620 | 219,857 |
直近当期純利益(百万円)※2 | 453,849 | 434,497 | 172,125 | 300,505 | 250,669 |
個社財務情報(当社財務DB) |
三菱商事_通期.pdf | 三井物産_通期.pdf | 丸紅_通期.pdf | 住友商事_通期.pdf | |
比較財務情報(当社財務DB) | 総合商社 財務情報比較.pdf |
※ :直近年度は24年3月期の決算短信の実績数値、ダンロップスポーツは23年12月期の有価証券報告書の実績数値。
※ :当社DBは有価証券報告書のみで決算短信情報は含んでいない。
※1:三菱商事、三井物産、丸紅、伊藤忠商事の「営業利益」は、連結損益計算書で表示される売上総利益、販管費及び貸倒引当金繰入額の合計として算定
※2:非支配持分控除後利益
利益規模だと丸紅は他の4社に大きく水をあけられていますね。
世界的な人口増加に将来食料不足が懸念されていますが、今回の大型案件を契機に穀物メジャーを肩を並べる規模になった丸紅が、非資源で強みを発揮できるかどうか今後の戦略に注目です。
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