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今日は、本日の日経朝刊3面の日航の記事からです。
【記事要約】
・日本航空は14日、2012年3月期決算で連結純利益が1866億円と過去最高益を更新したと発表。
・連結売上高営業利益率は17%と、一部の格安航空会社(LCC)を除けば世界の主要航空会社の中でもトップクラスの水準。
・会社更生法を申請して2年余り。V字回復の原動力は従業員の3割にあたる1万6千人の人員削減や機体削減、不採算路線から撤退などのリストラだが、財産評定に伴う減価償却費の減少や資産評価損による繰越欠損金に伴う法人税の減免など、法的整理に伴う支援効果も大きい。
・今秋にも再建の総仕上げとなる再上場を目指している。現在、発行済株式総数の96%を保有する企業再生支援機構の支援機関は来年1月までで、それまでに保有株を全て売却する可能性がある。新たな株主が必要な日航に出資を検討しているのは英ブリティッシュ・エアウェイズぐらいで、多くは様子見。今期は高収益企業への脱皮が本物かどうかが問われる。
2010年1月に会社更生法の適用を申請してから2年、日本航空が復活に向けて最終段階にきているようですね。
まずは国内航空会社3社を簡単に俯瞰してみます。
日本航空 | 全日本空輸 | スカイマーク | |
証券番号 | 非上場 | 9202 | 9204 |
営業収益(百万円)※1 |
1,204,813 |
1,411,504 |
80,255 |
営業利益(百万円)※1 |
204,922 |
97,022 |
15,283 |
経常利益(百万円)※1 |
197,688 |
68,455 |
15,747 |
当期純利益(百万円)※1 |
186,616 |
28,178 |
7,705 |
営業利益率(%)※1 | 17.00 | 6.87 | 19.04 |
年度個社財務情報(当社DB) |
N/A |
||
四半期個社財務情報(当社DB) |
N/A |
||
使用航空機(リースを含む) | 215 | 222 | 18 |
所属航空連合※2 |
ワンワールド連合 (アメリカン航空やブリティッシュエアウェイズなどが所属) |
スターアライアンス連合 (ユナイテッド航空やルフトハンザ航空などが所得) |
N/A |
LCC(格安航空会社)戦略 | 豪カンタス、三菱商事と「ジェットスタージャパン(33.3%出資)」を設立。 | 「ピーチアビエーション(38.67%出資)」やマレーシアのLLC大手エアアジアとの合弁である「エアアジアジャパン(67%出資)」などを展開 | 日本の元祖LCC |
※1 24年3月期決算短信情報
※2 主な連合にはそのほかデルタ空港などが所属するスカイチーム連合があるが日系航空会社は所属していない
上記の比較表を見ると全日空が不調かのように思えてしまいますが、全日空は営業利益と経常利益ともに過去最高を記録しています。今期の日本航空の業績の高さがあらためてわかりますね。
また、最近ピーチエアラインなど格安航空会社(LCC)が話題になっていますが、全日空はピーチエアラインは3分の1強投資し、エアアジアジャパンには、過半数超を出資していますね(ただし、そのほかピーチアビエーションの出資比率は香港投資会社「First Eastern Aviation Holdings Limited」が33.3%、官民ファンド「産業革新機構」が28%のためピーチエアラインの経営主導権は全日本空輸が握っているのかもしれない)。
一方、日本航空は、ジェットスタージャパンに出資しているものの、経営の主導権はカンタスグループが握ります。
LCC戦略でJALとANAで温度差があるようです。
最後に日本航空の破綻前の21年3月期の財務数値と今期の財務情報を簡単に比較してみましょう。
■ 日本航空 全体比較
21年3月期 | 24年3月期 | |
営業収益(百万円) |
1,949,187 |
1,204,813 |
営業利益(百万円) |
△53,854 |
204,922 |
経常利益(百万円) |
△85,687 |
197,688 |
当期純利益(百万円) |
△65,698 |
186,616 |
営業利益率(%) | - | 17.00 |
総資産(百万円) (うち航空機) |
1,785,910 (723,823) |
1,087,627 (369,502) |
有利子負債 | 884,219 | 206,577 |
自己資本比率※ | 6.9 | 35.7 |
営業活動CF | 27,788 | 256,673 |
連結子会社(社) | 114 | 60 |
使用航空機(リースを含む) | 279 | 215 |
減価償却費 | 116,340 | 81,222 |
支払利息 | 18,691 | 10,900 |
※ 自己資本は株主資本+評価換算差額等をベースに算出
■ 日本航空 セグメント別収益比較
<国際旅客収入>
21年3月期 | 24年3月期 | |
旅客収入(百万円) |
703,522 |
385,289 |
有償旅客数(人) |
11,704,043 |
6,844,772 |
有償旅客キロ(千人・キロ) |
52,186,351 |
30,313,789 |
有償座席キロ(千席・キロ) |
79,576,012 |
43,036,984 |
有償座席利用率(%) | 65.6 | 70.4 |
<国内旅客収入>
21年3月期 | 24年3月期 | |
旅客収入(百万円) |
666,547 |
481,111 |
有償旅客数(人) |
41,154,433 |
28,965,514 |
有償旅客キロ(千人・キロ) |
31,300,401 |
22,264,394 |
有償座席キロ(千席・キロ) |
49,167,920 |
35,523,214 |
有償座席利用率(%) | 63.7 | 62.7 |
<旅客収入以外の収入>
21年3月期 | 24年3月期 | |
国際線貨物等収入(百万円) |
162,264 |
60,581 |
国内線貨物等収入(百万円) |
39,440 |
28,555 |
その他の航空運送収益(百万円) |
64,890 |
52,757 |
付帯事業収入(百万円) |
80,215 |
72,856 |
その他事業 | 630,411 | 370,767 |
調整額 | △398,105 | △247,108 |
連結合計 | 1,949,187 | 1,204,813 |
※その他事業は「航空運送関連事業」、「旅行企画販売事業」等からなる
詳細な検討は割愛しますが、規模の縮小、アセット・固定費の圧縮と、採算主義の徹底ぶりがよくわかりますね。
特に、国際旅客線の収入や客数の減少規模を見ると国際線の不採算路線の整理の規模の大きさには凄まじいものがあります。
足元では業績回復が鮮明なJALですが、燃料費の高騰やLCCの台頭など課題は山積みです。
特に日本ではLCC元年とういうべき段階ですので、今後国内航空大手2社のLCC戦略の差がどう業績に影響していくるのか未知数です。
今秋に再上場を予定しているJAL。LCC戦略も含め今後の動向に注目です。
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